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バチカンにパレスチナ式飼い葉桶登場
ローマ・カトリックのバチカンでは、12月7日(土)、クリスマスを前に、聖パウロ6世ホールに、キリストの降誕シーンを発表したが、その中の飼い葉桶に寝かされている赤ちゃんイエスが、パレスチナの民族布カフィアに寝かされていたことから、イスラエルやユダヤ人の間で物議となっていた。
この降誕シーンは、バチカン全体を代表するものではなく、「ベツレヘムの降誕2024」とする展示の一つではあった。
バチカンのパレスチナ自治政府大使館によるもので、アーティストは、ベツレヘム出身のパレスチナ人であった。また、ちょうど、パレスチナ自治政府のアッバス議長がバチカンを訪問するタイミングということでもあったとみられる。
しかし、パレスチナ人を象徴するカフィアは、反イスラエルを象徴するものとされており、それをバチカンが認めたということは、政治的なメッセージにもなってしまう。
*写真は故アラファト議長が着用しているカフィア
この設置式に出席した教皇フランシスは、車椅子姿で、「ベツレヘムと世界の戦場で苦しんでいる兄弟姉妹を思い出そう。戦争はもう十分。暴力はもう十分だ。」と世界に向けて呼びかけ、暗に、イスラエルを非難する形となった。
バチカンは、2015年に、パレスチナ自治政府を正式な国家と承認している。パレスチナ自治政府のアッバス議長は、この4日後の12月12日、バチカンを訪問。
新しいパレスチナ自治政府の大使館の建物の設置式を行った。その後、フランシス教皇と約30分会談したが、内容の詳細は不明である。
www.arabnews.com/node/2582843/middle-east
これに先立ち、フランシス教皇は、この10月、イスラエルがガザでしていることは、バランスを欠いているとして、「ジェノサイド」にあたるかどうか精査すべきだとの声明を出していた。この一連の事で、それが再炎上することとなった。
イスラエル閣僚からフランシス教皇に抗議の手紙
イスラエルの反ユダヤ主義を担当する閣僚のアミハイ・チクリ氏は、12月18日(木)、フランシス教皇に手紙を出し、イエスが、パレスチナ人であるような展示を受け入れたということは、深刻な「歴史の歪曲」であり、ユダヤ人に対する「血の中傷」だと訴えた。
新約聖書によると、イエスは、明確にユダヤ人であり、嫌味ながら、ユダヤ人の王として、十字架にかけられたのである。
また、その当時に、パレスチナ人という「民族」は存在していなかった。イエスをパレスチナ人として展示することは、明らかに歴史の歪曲である。
「血の中傷」とは、キリスト教会が広がっていく中で、世界に拡大していった、ユダヤ人は、キリスト教徒の子供を殺してその血で過越を祝っているという根も葉もない、陰謀論のことである。全く論理的でないが、今の世界にも、ときどき出てくる反ユダヤ主義の土台である。
チクリ氏は、この件の前に教皇が、イスラエルに「ジェノサイド」の疑いがあると表明した後だったから、この手紙を出すことにしたと書いていた。
チクリ氏は、ホロコーストで600万人を殺された国として、特にこの言葉には敏感だと述べ、それをその国に当てはめるということは、ホロコーストがそのレベルの軽いものであったと考えているということだと指摘。それはホロコースト否定にも等しいと厳しく非難した。
www.jpost.com/israel-news/article-834260
その後、バチカンがカフィアを取り外したとのニュースがあったが、未確認。
フランシス教皇は、バチカンとイスラエルとの関係改善に前向きであり、これまでイスラエル人のハマスの拉致被害者家族に面会し、人質を解放するように訴えてきた。
しかし、イスラエルやユダヤ人たちの間では、今、バチカンが、パレスチナ側に傾く様相にあるとの理解になりはじめている。