ガザ人質解放交渉に期待:この時に生存する人質ビデオを公開するハマスの残虐性 2024.12.2

ハマスとの人質交渉は楽観的?非楽観的?

ヒズボラとイスラエルの停戦協定に合意したことを受けて、アメリカは、ハマスとイスラエルの停戦合意にも乗り出している。Times of Israelによると、トランプ次期米大統領は、就任までに、ガザも停戦に持ち込んでおきたいとして、ネタニヤフ首相に圧力をかけているとの情報もある。

イスラエル国内でもその機運が高まっている。チャンネル12が行った世論調査によると、停戦と人質返還を望むと答えた人は、71%であった。イスラエル軍の間からは、交渉に楽観的な見通しも出ている。しかし、実際には、まだ先行きは、不透明と言えそうである。

交渉については、現在、カイロで、水面化で行われている。Ynetによると、ガザでも60日間の停戦が提案されており、その間に人質の返還と、それ対してイスラエルが何を提供するかが問題となっている。

December 1, 2024 (Eyad BABA / AFP)

今のハマスは、指導者を失い、武器も失い、ガザにおける人々からの支持もかなり失ってはいる。

しかし、まだ残党は残っていることと、海外には指導者もいる。今の残党ハマスにとって、人質は最後の武器なので、そう簡単には引き渡さないだろう。

ハマスは、今に至ってもまだ強気姿勢で、イスラエル軍の完全撤退と、人質の解放の代償として、イスラエルが絶対に容認できない、パレスチナ囚人を含む多数の解放を求めているとのこと。要するに、ガザでのハマスの復興をイスラエルが認めることが条件ということである。

しかし、ガザ内部では、ハマスに対する疑問や怒りもで始めており、それがハマスに何らかの影響になるか、また次月に、トランプ政権の再来で何らかの影響が出てくる可能性もある。ネタニヤフ首相は今、じっくりとそれを見定めているとみられる。

www.ynetnews.com/article/bjeb6tc7jl#autoplay

人質家族の心をえぐるビデオを公開する残虐ハマスの本質

Tel Aviv, November 30, 2024.(AP Photo/Ohad Zwigenberg)

11月30日(土)、テルアビブの人質広場では、今こそ人質奪回につながる交渉をする時だと訴える人質家族とその支援者たち、約2000人が集まった。

参加者の中には、ハマスの人質になったあと、交渉で解放された元人質たちも含まれていた。

キブツ・ベエリにいた、エミリー・ハンドさんは、9歳で人質となり、50日後に解放された。エミリーさんがトーマスさんに話したところによると、ガザで支給される水は腐敗していたという。

トイレを使用する時は、男性のハマスがいる前で扉を開けた状態で使用しなければならなかったという。その後、アラビア語で何かを言わされ、「お前はもうイスラムだ」と言われたとのこと。トーマスさんは、ネタニヤフ首相に、今こそ人質解放の交渉に乗り出す時だと訴えた。

www.timesofisrael.com/make-a-deal-bibi-a-year-since-nov-2023-truce-thousands-rally-for-hostages/

このデモの数時間後、ハマスが、今も生存する人質と見られるイダン・アレクサンダーさん(20)の映像を公表した。

イダンさんは、人質になってから420日といい、ネタニヤフ首相が、交渉ではなく、人質を解放した人には500万ドル出すと言ったことに落胆を表明した。明らかに今、生存しているということである。

イダンさんは、ネタニヤフ首相が、IDFに対し人質に近づいた時の新しい支持について聞いた(どんな指示かは不明)と述べ、毎日1000回死ぬ経験をしていると語っている。そうして、イスラエルの人々に人質を忘れないでほしいと頭を抱えて泣いている。

イダンさんは、父母、祖父母に向かい、「会いたい。毎日帰る日が来るよう祈っている。早く会いたい」と泣いている。しかし同時に、これも時間の問題だから、しっかりしいてほしいとも涙声で言っている。

真っ暗な暗闇の中で延々とすごしていることの地獄をあからさまにみせつけられるような映像である。

ハマスは最後に、砂時計の絵とともに、「もう時間はない。。。」と締めくくっている。*以下の記事の中で、ビデオクリップを見ることが可能

Koby Gideon (GPO)

www.timesofisrael.com/in-hamas-propaganda-video-hostage-edan-alexander-pleads-with-trump-to-push-for-deal/

この映像はイスラエルの人々のこころを引き裂いた。

ヘルツォグ大統領夫妻は、翌日、イダンさんの家族を大統領官邸に招いて、会談し、「レバノンと同様に、今人質を解放する交渉をする時だ」との声明を出した。

アメリカでも人質交渉を求めるデモ:ニューヨークで数百人

Demonstration in New York’s Central Park for release of the hostages from Gaza

イダンさんは、アメリカ国籍でもある。ハマスが公表したビデオメッセージの中では、英語でアメリカの政府にも訴えをしていた。

アメリカ人の人質も死んだといい、アメリカが強い国なのだから、その力を使って、私たちを助けてほしいと言っている。

イダンさんの父親アディ・アレキサンダーさんは、ニューヨークのセントラルパークで、他の人質家族と、支持者数百人とともに、現場バイデン政権と次期大統領のトランプ氏に対し、ガザにいる101人の人質の解放のために行動するよう訴えた。

www.ynetnews.com/article/r1ubzpcmkg

石のひとりごと

真っ暗闇の地下のトンネルに延々と1年以上も置かれたままという、まさに地獄であると思わされた。また、今この時に、こんな映像を出すとは、ハマスがどれほど、人の心を傷つけることに無関心で、非人間的で、狡猾であるかを表している。

いったいどれだけ、なぜそこまでイスラエルを憎むのか。ハマス一人一人は、イスラエルに何をされたというのか。それなのに、こんなことをするとは、普通の人間にできることではない。悪霊に支配された行為としか言いようがない。

この様子とタイミングからして、確かに、ネタニヤフ首相が言うように、イスラエル市民によるデモは、ハマスの策略の援護射撃になってしまっていることも理解できる。

人質解放にネタニヤフ首相は動くだろうか。しかし、これに負けて、今ハマスが出している強気に条件に応じたら、ハマスに敗北することになる。右派たちは、これを絶対に受け入れないだろう。

ネタニヤフ首相は今、非常に、非常に、非常に難しいところに立っている。しかし、総じて、ハマスには屈しない可能性の方が大きいと思う。となると、人質を、力で早急に奪還する奇跡が起こることを祈るしかない・・・。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。