ヒズボラと停戦2日経過:停戦維持できるか繊細微妙な状況 2024.11.29

IDF forces in southern Lebanon (Photo: REUTERS/Ronen Zvulun)

停戦2日経過:イスラエル軍攻撃2回

11月27日(水)午前4時にヒズボラと停戦が発効となり、2日が経過した。ヒズボラからのロケット弾は、停戦発効以来、飛来していない。

南レバノンでは、停戦を監視するレバノン軍が、駐留をはじめている。しかし、戦闘が再発する可能性はまだ十分あるため、イスラエル軍は、レバノン南部からまだ撤退していない。

イスラエル軍は、レバノンの避難民に、十分安全性が確認されるまで、帰宅しないよう、指示したが、120万人におよぶ避難民たちは、すでに帰宅を始めている。

このため、イスラエル軍が威嚇射撃を行う場面もあった。

シリアへ避難していたシリア難民もレバノンへ戻る車列が報告されている。

シリアでは、反政府勢力がアサド政権に対する大規模な攻撃を行っているので、急ぎレバノンへ戻ってきたのかもしれない。

イスラエル軍は、まだ戻るべきではない地域を以下のように発表した。

また、合意に違反して、レバノン南部国境2キロ以内の地域でヒズボラの存在が確認されたため、イスラエル軍は、ヒズボラ関連地点や、ロケット弾発射施設に対し、空爆を2回行った。

Al Jazeera

またヒズボラ工作員の姿があった時に、威嚇射撃も何度か行ったとのこと。これにより、レバノン軍兵士2人が負傷した。レバノン軍はイスラエルが合意に違反したと言っている。

28日、ネタニヤフ首相は、もしヒズボラが少しでも合意に違反するなら、これまでになかったほどの大規模な攻撃を行うと表明した。

合意によると、今後60日の間に、ヒズボラは、リタニ川以北まで撤退し、イスラエルもレバノン南部にいる軍を徐々に撤退させることになる。

両者の間には、レバノン軍が33ヶ所の拠点で監視を行い、アメリカとフランスがそれを支援することになっている。

停戦が続くかどうかは、50:50だと言われている。

www.timesofisrael.com/pm-threatens-intensive-war-if-truce-breached-as-restrictions-end-in-much-of-israel/

なお、レバノン人は戻り始めているが、6万人のイスラエル避難民が戻る様子はない。まだ安心できる状態にないからである。

今後、今この時点で、停戦に応じたことに対し、政府に対して北部住民たちが、デモを起こす可能性がある。

www.nytimes.com/video/world/middleeast/100000009848981/israel-hezbollah-ceasefire-middle-east.html?smid=url-share

ヒズボラとイスラエル:それぞれの被害実態

1)ヒズボラの膨大な打撃

on November 12, 2024, in Haouch al-Rafqa in Lebanon’s the Bekaa valley. (Nidal SOLH / AFP)

ヒスボラはこの1年余りの戦争で、大打撃を受けている。

カリスマ指導者ハッサン・ナスララ党首とトップレベル指導者13人が死亡。師団長4人、旅団司令官24人、大隊長司令官27人、中隊長63人、小隊長22人も死亡位した。

イスラエル軍によると、確実に死亡したヒズボラ関係者は2500人だが、大きく見れば3500人は死亡したと推測している。

ヒズボラは4000人と発表した。レバノン保健省は、死者数は3820人で、このうち717人は女性、243人は子供と報告している。

イスラエル軍によると、空爆したヒズボラ関連地点は、12500か所。このうち1600か所は司令センターで、1000か所は武器保管場所だった。

これにより、1万3000個のロケット弾やその発射施設、対戦車砲、対空ミサイル(ヒズボラ所有の80%)、1万2000個の爆発物付きのドローン(ヒズボラ保有の70%)を破壊した。この他12万1000個のコンピューターシステムを押収したとのこと。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/over-12500-targets-hit-some-25000-weapons-seized-idf-publishes-data-of-conflict-with-hezbollah/

2)イスラエルへの被害:停戦続け馬予備役招集キャンセルか

この1年あまりの戦闘で、死亡したイスラエル市民は45人。イスラエル軍兵士は76人だった。停戦が続けば、今後、予備役たちがいったん帰宅できるかもしれない。

またイスラエル国内では、大きな物議と反発の中、ユダヤ教正統派も徴兵するべきだとの論議がすすみ、超正統派たち数千人への招集命令も出されたが、停戦になったことから、多くがキャンセルになるとみられている。

www.timesofisrael.com/november-29-2024/

www.timesofisrael.com/idf-strikes-hezbollah-rocket-depot-after-identifying-violations-of-fresh-ceasefire/

石のひとりごと

双方の破壊の後をみれば、ため息しかない。戦争の愚かさのあらわれである。

この停戦は続くのか。これはイスラエルにとって、何を意味するのか。またこれから、イスラエルは何に焦点当てるのか、ガザはどうなるのか。

本日のアップ時間までに間に合わなかったが、イスラエルの元国家安全保障顧問 ヤコブ・アミドロール少将の解説がわかりやすかった。後にアップするので、ぜひお読みいただきたいと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。