ヒズボラと停戦協定発効:27日午前4時(日本時間11時)より2024.11.27

This picture shows a view of the Israeli port city of Haifa on November 26, 2024, amid the ongoing war between Israel and Hezbollah. (Ahmad Gharabli/AFP)

ヒズボラとの60日間停戦合意決定

ネタニヤフ首相は昨日11月26日(火)午後遅くに、テルアビブの防衛庁で緊急閣議を行い、米ホフスタイン特使が仲介する、ヒズボラとの停戦協定に応じるかどうかの採択をとった。

結果、賛成10、反対1(極右政党のベン・グビル氏)となり、停戦協定を受け入れることとなった。

停戦期間は60日、その間に、イスラエル軍は、徐々に南レバノンから撤退。ヒズボラは、リタニ川以北まで撤退し、それ以南の軍事施設はすべて破壊する。

その後、空白となる南レバノンには、レバノン軍5000人が、33ヶ所に拠点を置いて、ヒズボラが戻っていないことを監視する。

監視には、アメリカとフランスも協力する。イスラエルは、ヒズボラに約束を破る動きがあれば、攻撃を再開する権利を有するとの保証を書面で求めていたが、アメリカはこれをイスラエルに提出したとのこと。

停戦直前まで攻撃応酬:ネタニヤフ首相からイスラエル市民への説明

イスラエル軍は、レバノン南部国境でのヒズボラ拠点の排除を行なっている途上であり、まだ完成していない。この停戦は、イスラエルにとっては、アメリカに強硬に押されて、しかたなくであった。

キリアット・シモナ(Photo: Efi Sharir)

イスラエル北部住民は、この状態で安心して帰宅できるとは考えていない。

ヒズボラの激しい攻撃を受けたキリアット・シモナの市長は、今停戦に応じることは、勝利ではなく完全な降伏だと感じると述べた。

国境に広がるヒズボラの拠点を完全に破壊せずに撤退することは、10月7日を北部でも招くことになると訴えている。

www.ynetnews.com/article/skrliwz7ye#autoplay

停戦協定の受け入れを決めたネタニヤフ首相は、国民、特に北部国民に向けて、苦悩の説明を、録画のメッセージで伝えた。

ネタニヤフ首相はまず、約束した通り、勝利することを強調。ヒズボラが少しでも攻撃の様子を見せれば、必ず攻撃を再開することを約束した。また、カリスマ指導者であったナスララ党首を失い、軍事施設は相当に破壊し、かなり弱体化したとして、ヒズボラは前のヒズボラではないと説明した。

(Photo: Fadel Itani/ AFP)

この言葉を証明するかのように、イスラエル軍は、停戦が発効する前の26日、ベイルート南部へわずか2分の間に20か所を空爆するという、これまでで最大ともいえる空爆を行った。

7か所は、ヒズボラの資金に関係する銀行や金庫などがある建物で、13か所は、ヒズボラの航空部隊の司令室や武器庫など軍事インフラだった。さらに停戦が発効されるまで1時間以内にも攻撃を実施していた。

さらに、停戦が発表された直後、レバノンとシリアの国境検問所が、イスラエルによる攻撃を受け、6人が死亡していた。シリア国営通信によると、死亡したのは、民間人ボランティアを含む4人とシリア兵2人である。

イスラエルからのコメントはないが、イスラエルは、イランからヒズボラへの武器支援ルートに関連する地点への攻撃も行っており、これもその一つであったとみられる。

以下は、イスラエル軍による、シリアからレバノンのヒズボラへのイラン武器搬入経路の説明。イスラエル軍は、こうした施設だけでなく関係する戦闘員の殺害も行なっている。

停戦協定発効後にこの攻撃を行ったことで、いわば、シリアでの攻撃は続くと宣言したようなものだとも言われている。

ネタニヤフ首相が国民に言っているように、いわば最後にダメ押し、徹底的に、ヒズボラの無力化に近づけたというところである。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/syria-raises-death-toll-to-6-in-alleged-israeli-strikes-on-border-crossings/

なお、ヒズボラも停戦発効直前まで、北部国境周辺や、ハイファとナハリヤの間にロケット弾を発射していた。負傷者の報告はない。

17日午前4時停戦発効:南レバノンへ帰るレバノン人の車列

停戦は27日朝4時(日本時間11時)から発効となり、それから6時間の時点で、双方の攻撃は停止しており、静けさが戻っている。

in Ghazieh, Lebanon, Wednesday, Nov. 27, 2024. (AP/Mohammed Zaatari)

イスラエル軍は、レバノン南部住民に対し、停戦が確かになり、危険がないとの判断ができれば、通達するので、それまでは、まだ帰宅しないようにと伝えていた。

しかし、停戦発効から1時間もすると、タイヤへ向かう道路には、帰宅しようとするレバノン人たちの車で大渋滞となっている。

しかし、停戦は発効したばかりで、まだ確実に守られるかどうかもわからない。レバノン軍も、南へ帰る市民を止めるのに必死になっている。レバノン市民たちは、停戦はヒズボラの勝利だといっているとのこと。

なお、イランは、この停戦を歓迎する意向を表明している。

www.timesofisrael.com/israel-hezbollah-ceasefire-comes-into-effect-halting-nearly-14-months-of-fighting/

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/masses-head-back-to-southern-lebanon-as-beirut-joins-plea-for-civilians-to-delay-return/

石のひとりごと

停戦になり、ハイファやナハリヤの住民は、しばしサイレンのない日を迎えることになった。ロケット弾の破片が落ちてきて人が死ぬ心配もなくなる。それはいいが、これから、本当に停戦が続くのか。北部の人々の心の回復、町の復興も大変だ。

今、レバノン人は勝利を宣言し、イランも停戦を喜んでいる。この停戦が、イスラエルにとっては、良い結果とは言い切れないことを表しているかもしれない。

しかし、聖書の民数記には、イスラエルの民を呪うように依頼された預言者バラムが、どうしても呪うことが言えず、イスラエルを祝福することを神が望んでいることを察して言ったことばがある。結局のところ、この原理は存在すると思う。

「あなたを祝福する者は祝福され、あなたをのろう者はのろわれる。」民数記24:9
「アマレクは、国々の中で首位のもの。しかしその終わりは滅びにいたる。」民数記14:20
*アマレクとは、代々現れてくるイスラエルを滅ぼそうとする勢力の名称

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。