苦しみと悲しみと希望の仮庵の祭り2024:ガザ地区にもスッカ(仮庵). 2024.10.17

Succot (Feast of Tabernacles) in Jerusalem: Jewish man in a Tallit praying while waving the Four Species, with a view towards the Temple Mount, the Old City and the Mount of Olives CBN News https://cbnisrael.org/2024/10/15/sukkot-feast-of-tabernacles-5/

仮庵の祭り2024

イスラエルと世界のユダヤ人社会では、16日、それぞれの日没から仮庵の祭りの初日を迎えた。しかし、今年は、まだ戦争中のことであり、人質も101人がまだ囚われたままの仮庵である。

各家庭のスッカには、人質を覚える黄色のシンボルが使われているところもあった。

苦しい中だが、それでも例祭を中止することはない。例年のように準備は進められ、この時期独特の4つの植物(ルラブ、ハダス、アラバとエトログ)を販売するマーケットも例年のように行われていた。(以下はエルサレム市内の様子・最後の方がマーケットの様子)

 

www.timesofisrael.com/israelis-decorate-their-first-sukkahs-since-oct-7-with-hostage-photos/

しかし、テルアビブの人質広場では、高校の卒業生16人と、家族に犠牲者がいる学生や教師たち36人の心理セラピーの一環として、モザイクが展示された。

ガザ国境周辺のキブツには、今年8月ぐらいから住民が戻り始めたが、ハマスの襲撃の日が、仮庵の祭りの最終日にあたるシムハット・トーラーが襲撃の日であったため、仮庵(スッカ)が昨年のまま放置されているのを目の当たりにしたという。

それを取り崩して、同じ場所に新しいスッカを立てることは、勝利を意味するとはいえ、大変な心の強さを必要としたことであっただろう。住民たちは、新しいスッカの中に、キブツを再建するために働いた人々やボランティアの写真を展示し、違いに助け合うことを子供に教えると言っているキブツもあった。

一方で、ガザ地区のイスラエル軍駐屯地に、今年はスッカが建てられた。2005年に、ユダヤ人がガザから完全撤退して以来、初めてのことであった。

www.timesofisrael.com/israelis-decorate-their-first-sukkahs-since-oct-7-with-hostage-photos/

神戸のユダヤ教シナゴーグでの仮庵

神戸にあるユダヤ教シナゴーグ(ハバッド派・ラビ・シュムエル・ビシェツキー)では、屋上にスッカが建てられ、約100人の在日ユダヤ人たちが、共にこの時を祝っていた。

遠く離れた日本であり、日本人と結婚して神戸周辺にいる人々だが、イスラエルには、家族たちがいる。

壁には人質の写真と黄色のシンボル、各テーブルのお皿には、ラビの娘さんたちが作った小さな黄色のリボンが置かれていた。防犯のため、いつものように、日本の警察官3人が、食事が終わるまで警備を続けてくれていた。

仮庵のメッセージ:イスラエルは無防備で神に頼るしかない民であることを実感

Sukkoth in Kfar Etzyon, Gush Etzyon, Israel. Wiki

仮庵の祭りで建てるスッカは、壁が3方向で、屋根はスカスカの植物の枝などで作られる。上を向けば、空が見え、風が吹けばあっという間に崩れ去ってしまうものである。

その中で、ユダヤ人たちは、家族友人たちと集まって、共にイスラエルを守る神を覚える。神もそこに共にいるとされる。宗教的な人は、1週間、その中で寝起きする。

これを通して、ユダヤ人たちが覚えることは、この地上にいる間、ユダヤ人たちは常に無防備で自力では防衛しきれない存在であることを覚えるとともに、その神にのみ頼ること、共にいてくださる神を覚えるのである。

しかし、今年はその最高潮ともいえるシムハット・トーラーの日にこの大虐殺が起こったわけである。神はともにいたのではないのか!?ユダヤ人はこうした厳しい現実の連続であった。

それでも、この神は神であり主権者は、人間ではなく、この神であることに変わりはない。怒りではなく、その神の主権が最終的にはよいものであることを信じるに至るのである。

今年の仮庵は、ユダヤ人たちにその原点を覚えさせる時となっているかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。