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10月7日の失策を検証するイスラエル軍
イスラエルという世界最強とも言われる軍を持つ国が、弱体化しているとも見られていたテロ組織ハマスに、1200人もの市民を虐殺され、251人が拉致された。まさに大惨事である。
1年半ぐらい前から、内部からの警告が出ていたのに、軍上層部がそれを無視していたことや、ハイテクの国境防衛に甘んじて、ガザに十分な見張りの軍を配備していなかったなど、さまざまな失策がすでに指摘されている。
最終的な責任は、ネタニヤフ首相にあることも避けられないとみられている。
いったい何があったのか、何が原因で、ハマスにあれほどの攻撃を許してしまったのか。イスラエル軍は、特に被害が大きかったキブツ・べエリ(緑)について、綿密な調査を行った。
調査は、何百時間もかけての現場調査、戦闘状態、監視カメラ、航空写真、サバイバー戦闘員、住民へのインタビュー、住民のwhat’s upメッセージ、ハマスの無線通信など、あらゆる分野から徹底的な分析が行われた。
そうして11日、その全容を、生き残ったキブツ・べエリ住民に対し、避難中の死海のホテルにおいて、発表を行った。
www.idf.il/en/mini-sites/7-10-the-inquiries/
イスラエルは今、戦争の真っ只中にある中で、時間と労力を割いて、これを行ったということである。誰に責任があるかを追求することが目的ではなく、戦争中であるからこそ、国民の信頼を回復するため、これからの戦争に備えるためとしている。
軍はキブツ・べエリを守る任務を果たせていなかったと結論
1)10月7日の流れ
10月7日朝5時半、イスラエル軍は、ガザに近い、キブツ・べエリと、キブツ・ナハル・オズの間の前哨地で、夜勤と日勤の交代を行っていた。ハマスの襲撃はその1時間後に、このイスラエル軍拠点をドローンで上空から攻撃することで開始となった。
ハマスは駐屯していた戦車2台のうち1台を砲撃し、中にいたイスラエル兵全員を殺害。遺体を拉致した。
もう一台は、移動しながら応戦したが、運転手以外、全員死亡。生き残った運転手は、襲撃を受けた音楽祭方面に向かったが、午後に戻ってきて、ハマスと対峙した。その際、人質2人が囚われている家への砲撃を行って、人質も一緒に殺害するという大きな失敗を犯した。
こうした中、キブツに一番近い、駐屯地に残っていた部隊は、キブツ・べエリに向かうハマスを止めることができなかった。また、この時、住民たちに、ハマスの侵入を適切に警告しなかったことも問題とされている。
こうして、キブツ・べエリ(人口約1000人)に、ハマス300人あまりが入ったのは、朝6時半すぎ、人々がまだ眠っている時間帯であった。
キブツ・べエリに侵入した、テロリストたちは、狂気のごとくに家々を回って虐殺と暴行を開始。この朝6時半から3時間ほどの間、キブツの中にいた治安部隊は、イスラエル兵と自警団のわずか13人であった。
恐怖の中、キブツ・べエリの住民は、自力で隠れたり、逃げたりしなければならなかった。
午後11:30ごろからは、ガザの民間人が多数、キブツに入ってハマスの略奪や暴行に合流。12:15からは、音楽フェスで殺戮を終えた部隊も合流した。
2)外で待機したイスラエル軍
最初に外からイスラエル軍が入ったのは午前9時過ぎ。ヘリコプターで到着したエリートのシャダグ部隊の13人である。
そこから午後1時半ごろまでの4時間あまり、ハマスらテロリスト340人と対峙したのは、実質、この13人と、朝からキブツ内にいたイスラエル兵と自警団13人の計26人だけであった。
イスラエル軍が本格的に、反撃と救出を開始したのは、襲撃から7時間近くたってからであった。それまでの間、軍は、キブツ周辺に到着はしたものの、状況をよく把握できず、どこからどうしたらいいのか、混乱状態に陥っていた。
結果、多くが、外で待機し続けることとなった。理由は、指揮官を待っていたとか、先に入った部隊と仲間内にならないよう、外に留まったなどがあげられている。
その後、午前中に中に入っていたシャダグ部隊も1人が戦死し、1人が負傷すると、午後2時過ぎには負傷兵を連れて、任務を終えることなく、全員が撤退していた。この点も問題とされている。
3)イスラエル軍の連絡ミス・誤爆による人質死亡
その後ようやく、本格的な戦闘が始まったが、混乱は続き、午後8時ごろ、イスラエル軍が、テロリストがいるとされる家を戦車砲で攻撃。その家には、テロリストだけでなく、イスラエル人の人質13人もおり、全員がこの砲撃で死亡した可能性が高い。連絡ミスであった。
翌日9日までにイスラエル側にいたテロリストは概ね殺害するか、逮捕したが、最終的に、住民101人と、キブツの民間治安員31人(キブツ外からの応援も含め)が虐殺され、住民30人と労働者2人が拉致された。このうち、11人がまだガザに取り残されている。
ハマスは、家屋を破壊して火を放っており、キブツ・べエリでは、125軒が、全壊となった。
イスラエル軍は、キブツ住民を守るという任務を果たせなかったとの結論に至っている。
キブツ・べエリ住民の反応:まだ疑問ある
イスラエル軍がかなり詳細に失敗を認めた形だが、キブツ・べエリの住民は、イスラエル軍が、真摯に調査を行い、それを提示したことで、状況の理解につながったとして、感謝を表明した。また、救出のために戦って死亡した兵士たちにも感謝を表明した。
しかし、キブツの住民たちにとって、最大の疑問は、イスラエル軍が、外にいたのに、何時間も助けも来なかったという点である。
これについては、責任を持って、謝罪し、赦しを求めることが重要だと表明。また、軍兵士たちは、住民を助けることが最重要事項であると理解していたのかという根本的な問題も指摘した。
また、ハマスの侵入を許した諜報機関の失敗はなぜ発生したのか。なぜハマスは国境のフェンスを破ることができたのか。
なぜ軍は、その時に即時対応できなかったのか。明らかにしないといけない点はまだまだあると訴えた。
www.ynetnews.com/article/rjg00fdadr
石のひとりごと
日本では、臭いものに蓋とか、表をきれいにする文化なので、隠蔽が多く、近年、それらが続々と発覚している時代に入っている。
しかし、特に政治の世界では、隠蔽がわかっても、なにやらごまかされて、そのままになってしまうケースが多い。
これとは対照的に、イスラエルの文化は、隠すということからは程遠く、なんでもそのまま表す、直行の文化だと思う。政治的な闇は否定しないが、わからないものをわからないままで、納得しない人々である。
ごまかしがきかないという点は、さすが、全知全能の神がその文化の中心になっている国ではないかと思う。