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ICCのカーン主席検事がネタニヤフ首相・ギャラント防衛相とシンワルらハマス3人の逮捕状申請を発表
今年4月末に、ICC(国際刑事裁判所)が、イスラエルがパレスチナ人に対してジェノサイド(絶滅を目指した虐殺)を行っているとして、ネタニヤフ首相に逮捕状にいたる準備をしているとの情報が出回り、イスラエルでも物議となっていた。
mtolive.net/国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相と防衛指/
それから約1か月になる5月20日、ICCのカリム・カーン主席検察官は、パレスチナ問題において、ネタニヤフ首相とギャラント防衛相を、戦争犯罪と人道に対する罪があるとして、裁判所に逮捕状を発行するよう要請を出したと発表した。
www.timesofisrael.com/full-text-of-icc-prosecutor-karim-khans-application-for-arrest-warrants/
カーン検察官は、まず、イスラエル人を襲撃したハマスについても戦争犯罪、殺戮、拷問、レイプ、人質として連れ去るなど人類に対する明らかな犯罪を犯したとして、ヤヒヤ・シンワル、イシュマエル・ハニエ、モハンマド・デイフの逮捕状を申請したことを明らかにした。
カーン検事は、イスラエルで調査し、犠牲者の証言などから、10月7日にハマスがいかに残虐なことをしたか、また今もなお人質になっている人々がレイプされるなど非人道的な環境に置かれているとして、直ちに人質を解放するよう、呼びかけた。
その後で、カーン検事は、10月8日以降のイスラエルが、「パレスチナ国家」への攻撃で、意図的に民間人を攻撃して殺し、負傷させ、飢餓に苦しむようにするという殺戮を行っていると指摘。サテライトからの映像、膨大な写真、目撃証言や、生き残った人々からのインタビューからの結論だと語った。
イスラエルは、ガザへの水、電気のパイプラインを止め、人道支援物資の搬入を妨害するだけでなく、その支援を行っていたボランティア7人を殺害した。
ガザの人々への飢餓を意図的に武器として使っている。イスラエルが、自己防衛する権利を持つことは認めるが、国際法を違反してよいということではない。
この状態が、国の方針として行われているとして、ネタニヤフ首相とギャラント防衛相に対する逮捕状を申請したと表明した。IDFのハレヴィ参謀総長ら軍の責任者の名前は出ていないが、軍人は、指導者2人の指示に従うものであり、意思決定はしていなかったとの理解からとのこと。
*国際刑事裁判所(ICC)とは
ICCには、2003年に、国連認可の元、戦争犯罪とみられる個人を摘発するために独立した裁判所として、立ち上げられている。最近、南アフリカの訴えを通して、イスラエルを非難しているICJ(国際司法裁判所)とは、別の機関である。ICJと違い、国際問題に関わる個人を裁く場である。
ICCには、日本を含め124カ国(パレスチナも国として加盟)が加入しているが、アメリカとイスラエルは加盟していない。
これからどうなるのか
検察官から出された要請にしたがって、裁判所が独自の調査を行い、逮捕状を出すかどうかを決める。ネタニヤフ首相やギャランと防衛相の声明などが、厳しく検証されるなどで、その期間は1か月ぐらいとみられている。
もし、ICCがネタニヤフ首相らに逮捕状を出した場合、非加盟国であるアメリカとイスラエルにいる限り、逮捕はされない。しかし、それ以外の国に行けば、それらの国には逮捕が義務付けられることになる。ネタニヤフ首相は、外交訪問ができなくなる可能性が出てくる。
一旦、逮捕状が出されてしまうと、取り消しはほぼ不可能とみられている。また、裁判に出頭することになれば、ネタニヤフ首相とギャラント外相は、弁護士を立てなければならないが、ICCが認可するレベルの弁護士はイスラエル人の中にはいないとYnetニュースは指摘している。
しかし、ICCは、それぞれの国に法律があり、それを裁く力のある国については、それを認めることが原則である。イスラエルには、そのシステムがあることは、認められているので、ICCがどの程度、実質的な介入ができるのかは不明。
www.ynetnews.com/magazine/article/bjkgxqyqc#autoplay
ICCの逮捕状が意味すること
これまでに逮捕状が出たのは、最も最近では、ロシアのプーチン大統領、それ以前では、スーダンのバシール大統領、リビアのカダフィ少佐と、誰もが認めるジェノサイドの責任者ばかりである。もし今回、ネタニヤフ首相たちが逮捕状を出された場合、西側民主主義国家としては、初となる。
だいたい、残虐なテロ組織の指導者(つまりはギャング)と、これまでどれだけ世界に貢献してきたかもわからない、正式な国家であるイスラエルの指導者を同じレベルに置いていると言うこと自体、ちょっと考えにくいことである。
カーン検察官は、ハマスは戦争犯罪を犯したと言ってはいるが、その敵であるイスラエルも戦争犯罪者であるとのレッテルを、国連に関係する公式の裁判所から出されることになれば、ハマスの攻撃は半分、正義と理解されたということである。
イスラエルでは、交渉においてハマスはますます強気になり、ガザでの戦闘は難しくなる。世界的にエスカレートしている反イスラエル、反ユダヤ主義のデモや暴力はさらに拡大する可能性が高い。
また、この流れは、将来、ハマスに近いような、世界の反民主主義、過激派勢力の活動を誘発させる可能性が出てくる。
イスラエルからの反応:不条理で新しい形の反ユダヤ主義
カーン主席検事の発表の後、ネタニヤフ首相は20日、オンラインでコメントを発表。国際社会の裁判所として、民主主義国家の指導者を訴えるなどありえないことであり、永遠の恥になると強いことばで怒りを表明した。
ネタにタフ首相は、イスラエルが戦っているのは、侵略してきて、ユダヤ人たちに対し、ホロコースト以来ともまで言われるほどの最悪の犯罪行為をしていったハマスという残虐なテロ組織である。これはあり得ない不条理だ。イスラエルは、自己防衛だと語った。
また、イスラエルは、国際法を100%遵守する中で、ハマスとの戦いを完了させる。そのために、これまでになかったほどに、民間人を危険地域から遠ざけている。彼らに人道支援が届くようにもしていると主張。
「カーン検察官の訴えは、民主主義国家すべての自己防衛の権利を弱体化するものだ。彼がしていることは、世界に拡大する反ユダヤ主義をエスカレートさせることだ。カーン検察官は、その立場を利用する近代の反ユダヤ主義者だ。
ユダヤ人は80年前と違って、国を持っている。先のホロコースト記念日に言ったように、ICCが何を言おうが、イスラエルはハマスとの戦いを完了するまで続ける。Never Again は今だ。」と、ユダヤ人とその国イスラエルに対する危機とは戦うとまで、宣言している。
アメリカ:イスラエルはジェノサイドをしていない
カーン検察官の発表の後、バイデン大統領も、ありえないことだと怒りを表明。「イスラエルはジェノサイドをしていない」と主張し、アメリカは、この件について、イスラエルと同じ立場にあると発表した。ブリンケン国務長官も同様の意思表示をしている。
またイギリス、イタリアなどが、ドイツ、チェコ、オーストリアなどが、言葉遣いはさまざまながら、カーン検察官の発表に同意できないとする声明を発表している。
石のひとりごと
昨日イランのライシ大統領がヘリコプター墜落で死亡したが、国連安保理では、その死を悼んで、1分の黙想をしたとのこと。大勢を、国際法的には不条理に処刑してきた人物にためにである。
世界はなにやらおかしくなりつつあるのではないかと感じる今日このごろである。やはり、聖書という基準がないと、人間は迷い出てそのまま暴走するのかもしれない。
常にその矛先にいるのがユダヤ人であり、その国、イスラエルなのである。