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ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、使われる武器が徐々に進化して、終わる気配はまだ見えていない。影響が広く世界にも拡大する中、ニューヨークでは19日(火)から29日(金)までの国連総会が始まった。20日(水)には安全保障理事会も開催される。
変化する世界秩序の中で
1)機能不全の国連:欧米中心の民主主義主導から中露グルーバルサウス台頭
世界は今、ロシアのウクライナ侵攻を発端に、ウクライナ側の民主主義勢力の欧米がリードする世界秩序に対し、ロシア、中国など専制主義勢力と、これらの国の世話になる傾向にあるイランやグローバルサウスと呼ばれる新興諸国が加わって、新しい世界秩序を形成する動きにある。
その象徴とも言えるのが、アジアと中東、ヨーロッパをつなぐ輸送経路の開発である。先にこの構想を打ち出したのは中国で、いわゆる「一帯一路」構想である。これに対し、つい先月のG20が出したのが、インドから中東、ヨーロッパをつなぐIMEC(India-Middle East-Europe Economic Corridorインド・中東・欧州経済回廊)構想である。
こうした動きの中で、ややこしいのが、インドとトルコである。インドは、ロシアや中国との関係を継続しながらも、今回、IMECを打ち出し、欧米側につく動きを見せた。
トルコも、ロシアと欧米の間を行き来する動きにある他、イスラエルとパレスチナの間も行き来する。トルコは最近、アメリカに、イスラエルとパレスチナの仲介をすると申し出ている。インドとトルコ、両国は、いわば、どっちにでもつく可能性がある国といえる。
こうした中での国連総会である。総会初日からアメリカのバイデン大統領が演説。ヨーロッパ各国首脳と、日本からは岸田首相が出席する。注目のウクライナからはゼレンスキー大統領、ロシアからは、ラブロフ外相、中国からは、韓正 国家副主席、イランからはライシ大統領、サウジアラビアからは、ビン・ファルファン王子兼外相が出席する。
近年、国連は、機能不全が指摘されることも出始めている。139カ国の加盟国が、それぞれの事情の計算で賛成不賛成を出すので、多数決が必ずしも、合理的な結果を出さないようになっているのである。これは世界的な傾向だが、民主主義に限界が見え始めているということである。
世界の平和を監視する国連安全保障理事会でも、ロシアと中国が、常任理事国であるため、決議の多くに拒否権を発動して、安保理は、ほとんど合意・決定できなくなっている。
今の国連は全体的にみれば、民主主義国が減って、中露やグローバルサウス諸国にまわる国が増えているというのが現状である。このため、特に、ウクライナが必ずしも支持されるとは限らない状態にある。ウクライナで戦争が長引いているのは、ウクライナが攻撃を続けているからだと非難される可能性もあり、ゼレンスキー大統領が、対面で国連総会に出席することにリスクがあると分析する記事もある。
2)注目がパレスチナ問題にも
今年は、1993年に、イスラエルのラビン首相、パレスチナのアラファト議長が、アメリカの仲介で締結した「オスロ合意」から30年という記念すべき年である。このオスロ合意が元になり、パレスチナ国家設立を目指すということになったのだが、30年経った今、イスラエルとパレスチナの関係は、これまでになく悪化している。
こうした中だが、アブラハム合意で、イスラエルと国交を開始したUAEは、経済や開発などにおいてもよい結果を享受している。これでサウジアラビアが、合意に参加すれば、中東の治安と経済も大きく発展する可能性がある。
特に、IMECを進める欧米としては、湾岸アラブ諸国が、これまでのようなアラブの大義を捨て去らないまでも、それと並行しながら、実質をみてイスラエルとも手を結ぶという時代に入っているのではないかとは、IMECを推進するバイデン大統領の呼びかけである。
しかし、さすがにサウジアラビアは、イスラエルとの国交開始の条件として、パレスチナ国家の設立を上げており、それを曲げようとはしていない。
しかし、サウジアラビアは、IMEC構想では、イスラエルともつながる鉄道が横断する国である。いわば、今後の欧米勢力としては鍵になる国である。
パレスチナ問題をどうするのか。サウジアラビアは態度を変えることはあるのか。今また、国連の中での課題として、脚光を浴びる形になっている。
バイデン大統領:世界の変化の時にやるべきことをともにやっていこう
バイデン大統領は、30分に及ぶスピーチの中で、ウクライナやイランの問題、食糧危機や気候変動など、世界が直面する数々の問題をあげ、「今世界が変化の時にある時、私たちは、次世代の人々にとって最も大事な、するべきことをしたかどうかは、後の世が裁くことになる。」と述べた。
地球を守り、人権を守り、世界中の人にあらゆる人々が、安全であり、機会のも恵まれるという国連の信条を守るための行動をおこすことができるのかどうか。前にある道はけわしい。でもできることをやっていかなければならない。ともに働いていこう。進歩はみなで分かち合っていこう。世界の歴史の変化を世界の益にしていこう。私たちにはそれができるのだから。