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司法制度改革法案・反対デモ7週目
イスラエルで問題になっている司法制度改革法案、いわゆるオーバーホール法案(行政が司法の上を行く)は、憲法・法・司法委員会(ロズマン委員長)を通過し、次のステップとしての国会審議が、本日20日に行われることになっている。
この改革については、もし通った場合、イスラエルの民主主義が崩れると懸念され、世論調査では、国民の6割は反対している。大規模な反対デモが、7週連続で毎週末に行われている他、イスラエルへの投資を撤回する企業が出るなどすでに、その実質的な影響も出始めている。
しかし、今日、国会での審議になってしまうと、連立与党側が国会過半数をしめているので、連立内部から離反者が出ない限り、可決になる可能性が高い。
国会での審議は、先週の月曜に予定されていたが、危機感を持った市民たちが、大規模なデモを国会前で展開したことから、ヘルツォグ大統領が、5項目からなる妥協案を提示し、両陣営に交渉するよう申し出た。このため、決議はとりあず、先週水曜に、さらに延期されて本日月曜にまで延期にされていた。
大統領の5項目からなる妥協案を評価する声はあがっていたが、それを基盤にした交渉は行われないまま、今日に至ったということである。
これに先立つ18日安息日明けには、7週目となる市民による大規模なデモが行われた。テルアビブでは10万人規模で、エルサレムやハイファ、ベエルシェバなど。全国の都市でもデモが行われた。
テルアビブのデモでは、巨大な、イスラエルの独立宣言の証書の横断幕が登場し、イスラエルの独立の原点に戻ろうという動きもあった。
一方で、アメリカの連続テレビ番組ドラマ「侍女の物語」の主人公の服装(赤のドレスと白い頭おおい)をした一団もいた。
この物語は、キリスト教原理主義の国で自由を束縛されている侍女の物語である。宗教が政治に影響を及ぼすことを批判しているといえる。
テルアビブでは、デモ隊が、一時主要高速道路アヤロンハイウェイを閉鎖しての訴えを行ったが、警察との衝突はなく、無事にデモは終了した。
*アラブ勢も200人ほどが反対デモ
これまでのところ、アラブ系市民がデモに参加したという報道はなかったが、この土曜、ハイファで200人ほどが、反政府デモに加わった。この制度が通って、真っ先に被害を被るのは我々だと訴えた。右派政権なので、アラブ系市民の代表を減らされる可能性があると言っている。
アラブ系住民の地域では、治安の悪化が著しくなっている。アラブ人同士の殺人事件が相次ぎ、昨年だけで、犯罪やDVで殺された人の数は 116人にのぼる。これについて、イスラエルがアラブ人地域での警備を十分に行っていないと指摘し、その改善を主な目標に立ち上がったのが、アッバス氏率いるラアム党だった。
前の統一政権が崩壊し、強硬右派政党になって以来、アッバス氏は、反政府デモに賛同は表明しつつもデモには参加していない。
国民闘争の日:13日国会周辺でのデモ予定
明日13日に、国会で、憲法・法・司法委員会で可決された、司法制度改革の土台となる2項目が、審議される。先週を同じく、数万人が、エルサレムの国会周辺で、反対デモ集会を行うことになっている。国会前には、美しいバラ園があるが、警察は、ものものしい壁を設営して、混乱に備えようとしている。
この他、先週のように、各地で反対ラリーが計画されており、ストを計画する企業もある。反対派の中には、本気で、これがイスラエルを潰すと考えている者もいるので、シャブタイ警察庁長官は、政府要人たちなどの暗殺など暴力に発展していくことも警告している。
www.timesofisrael.com/police-chief-warns-of-potential-for-political-assassination-lower-the-flames/
アメリカがネタニヤフ首相に警告:首相はイスラエルの民主主義は不変と自信表明
アメリカの在イスラエル大使、トム・ニデス氏は、公のインタビューの中で、アメリカ政府が、ネタニヤフ首相に司法制度改革について、幅広い民意を勘案するため、少しブレーキを“パンプ”(かけ始め)するよう伝えていることを明らかにした。
ニデス大使は、ブレーキをかけろとは言っていない。反対派が6割を超え、イスラエルの経済にも影響が出始めている中、急いで結論を出すべきではないと言っているのだと強調している。ニデス大使は、すでにアメリカのユダヤ人たちもイスラエルから離れるとの見方も警告している。
www.timesofisrael.com/us-envoy-were-telling-netanyahu-to-pump-the-breaks-on-judicial-overhaul-push/
これを受けて、ネタニヤフ首相は、19日、アメリカから訪問中のユダヤ人団体のカンファレンス(ニデス米大使も出席)において、「批判があることは承知しているが、ユダヤ人の国、イスラエルが民主主義国家であることが変わることはない。内戦になることを懸念しているなら、その心配はない。私たちは一つの国で、信仰も一つである。」と述べた。
また、「内政については、敬意をはらっていただきたい。民主主義の国々は、他国が、民主的に決めることに敬意を払うべきである。」と述べた。
アメリカはイスラエルにとって、唯一信頼できる同盟国である。しかし、この問題だけでなく、イスラエルが西岸地区の違法前哨地9ヶ所を合法化したことで、二国家二民族案(国を2つに分ける)を支持する立場であるアメリカを困らせているというのが、最近の動きである。
www.timesofisrael.com/netanyahu-swats-away-nides-criticism-says-he-expects-respect-from-democracies/
筆頭野党のラピード氏は、「私たちは今、アメリカを失おうとしている」と警告。アメリカに対して、日々内政に干渉していただきたいと述べた。