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ラピード首相がバイデン大統領に電話:イラン核合意問題で
間接的ではあるが、アメリカとイランが、新たな核合意にむけて、交渉を続けている。アメリカの修正案を受け取ったイランが、2日、EUを通じて、アメリカに、それに対する意見を送ったと発表した。今後、署名に向かうかどうかが注目される。ホワイトハウスでも、ここ数週間の間に合意にいたるとの“希望的”見通しを表明している。
イスラエルは、この合意に署名しないよう、アメリカに訴える立場で、ガンツ防衛相はじめ、治安関係者を次々にワシントンに送って、そのアピールをおこなってきた。最終的には、ラピード首相が、31日にバイデン大統領に電話をかけ、45分間、話し合った。
内容の詳細は明らかにはされていないが、「イランの脅威をふくめ、世界と地域の治安について」についてであったと伝えられている。バイデン大統領との会談の後、ラピード首相は、アメリカが、イスラエルの治安維持にはコミットすることを強調したと語っている。
www.timesofisrael.com/lapid-biden-discuss-iran-deal-as-eu-says-agreement-could-be-reached-in-days/
それが何を意味するかといえば、アメリカは合意に署名する方針は、変えていないので、表向きの合意とは別に、(イランが、常に正直に全てを明らかにすることはないという“常識”に基づき)、危険な動きはすぐにでも軍事的に破壊することによる抑止もありうるということかもしれない。
特に、イスラエルは、この合意が署名されるのを待つことなく、あらゆる危険性を想定し、すでに軍事的なイラン関連施設への攻撃を行っている。核兵器開発はもちろんだが、それ以前に、イランがガザのパレスチナ・テロ組織への支援が懸念されている。
特にイスラエルが注意しているのが、レバノンにいるヒズボラへの武器の搬送である。ヒズボラへは特にシリアを経由して、武器などが、搬送されているので、イスラエルは、運搬のコンボイから保管庫、そうして今は、空港滑走路と、それらがシリアを出る前に破壊する対策を続けてきた。その動きは、昨今、かなり頻繁に、なりつつある。
背景には、ロシアの中東への介入でイランと関係が深まりつつあり(ロシアがイランからドローン購入)、シリアを実質支配するロシアがいつまで、イスラエルの攻撃を黙認し続けるかわからないという危機感が一点。
また、事項で述べるが、イランの隣国イラクで、大きな反政府運動が発生しており、イランやロシアがイラクに進出してくる可能性もなきにしもあらずの状況になりはじめていることも考えられる。
また、イスラエルとしては、イランが核保有国になることは絶対に許容できないことに変わりはない。イスラエルは、 日、アメリカから、戦闘機への燃料供給用の飛行機をさらに取り入れた。これは、イラン本国への攻撃の可能性に備え、距離的に遠く、途中で燃料補給が必要になることへの準備であるとみられている。
もし本当にイスラエルがイランを攻撃する事態になれば、これはもう、世界戦争になるだろう。イランの脅威は、ロシアの影も加わって、中東全体から、世界にも暗い影を落とし始めているということである。
イランとの世界の核合意の背後で動く?イスラエルとアメリカ
1) イスラエル:シリアのアレッポ空港攻撃
イスラエルによるとみられるシリアへの攻撃については、ラピード首相になってからは、特にイランの背後にいるロシアに遠慮しなくなっている動きもみられ、ロシア軍も駐留タルトゥースの港近くを攻撃するなどである。
最近では、8月31日に、ダマスカスに次ぐシリア第二の都市アレッポにある国際空港が、攻撃され、滑走路がダメージを受けた。シリアはイスラエルを非難したが、イスラエルはノーコメント。これは、ヒズボラへの武器移送を妨害する目的であったみられている。
www.timesofisrael.com/syria-accuses-israel-of-striking-aleppo-airport-causing-damage/
2) アメリカ:シリアのイラン関係地点攻撃でイラン関係武装組織4人死亡
先月中旬、イランが、シリア北部のアメリカ軍駐留地を攻撃した。特に被害はなかったが、アメリカは、武装組織が使っているとみられる拠点などを攻撃しかえした。また、先月25日には、シリアのロケット弾発射地など7箇所を攻撃。この攻撃でイラン関連武装兵4人が死亡した。
死亡したのは、イラン関係武装組織と考えられているが、イランはこれを否定。この時には大きな戦闘に発展することはなかった。アメリカは、イランに対する強力な意思表示だとしている。
www.timesofisrael.com/four-iran-backed-fighters-killed-in-us-strikes-on-syria-pentagon-says/
またアメリカは、1日、イスラエルに、戦闘機への燃料補給機、ボーイングB-46を4機、イスラエルに販売する契約に署名した。イスラエルからイランまでは、片道2000キロある。戦闘機は途中で燃料補給しなければならない。イラン攻撃の際には必須になる。
B-46は、2025年には、イスラエルに搬送され、古い補給機と入れ替えるという。値段は、総額約10億ドル(1400億円)だが、アメリカが約束した軍事支援、年38億ドルの中から支払われるもようである。
また、イスラエルとアメリカは、5日、弾道ミサイルの共同軍事訓練を完了したと発表した。
こうした動きからも、イスラエルとアメリカは、軍事同盟の強化をアピールしている。イスラエルとイランが戦争を始めた場合(もしくは始めないようにとの牽制)の準備は進んでいるようでもある。