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イラク人がアブラハム合意への参加を政府によびかけ
先週金曜24日、イラクの族長など有力な300人以上のクルド人が、クルド人地区の首都アルビールで会議を開き、イラク政府は、イスラエルとの国交正常化をすすめ、アブラハム合意に参加するべきであるとの意見を発表した。
イラクの総人口は3965万人。このうち、アラブ人(シーア派60%、スンニ派20%)、クルド人20%(ほとんどはスンニ派)、トルクメニ人、アッシリア人となっている。(外務省)
www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/data.html
今回立ち上がったのは、スンニ派、シーア派双方の首長たちや、社会運動家、軍で戦った司令官などである。またバーチャルに参加した人たちの中には、イスラエルの故シモン・ペレス大統領の息子、ヘミ・ペレス氏も含まれていた。
イラクでは、市民がイスラエルとコンタクトを取ることを禁じている。ペナルティには死刑や終身刑の可能性もある。しかし、著名人がここまで多数出席したとなると、国際社会からの批判もあるので、政府もそう簡単には手出しができないかもしれない。
この会議は、イスラエルとアラブ諸国の関係強化にむけた働きをしているNGOの平和コミュニケーションセンター(ニューヨーク基盤)により実施されていた。
会議では、スンニ派部族長のアル・ハルダン氏が、アブラハム合意に参加している国としていない国を比べ、合意に参加している国に合法的な平和と発展がみられると述べた。
また、イラク政府の文化担当のシャハル・アル・タイ氏は、イラクとユダヤ人の関係は歴史的にも深く、イラクで生まれ育ったユダヤ人は、海外にいるイラク人(ディアスポラ)にあたるとし、その人々との関係を考える委員会を立ち上げると述べた。
イラク政府は、正式にはパレスチナ問題が解決するまでは、イスラエルとの国交正常化はないとしている。これについて、アル・タイ氏は、イラクとイスラエルが国交を正常化することと、パレスチナ人の利益を守ることは矛盾するものではないと語っている。
*イラクとユダヤ人の関係
イラクとユダヤ人の関係は深い。イラクでは、バビロン捕囚以降、約束の地に帰らなかったイスラエル人たちが代々住んでおり、特にバグダッドで豊かな文化を形成していたのであった。
しかし、ナチスの時代に、イラクでも親ナチ政権が立ち上がり、ユダヤ人を虐殺するポグロムも発生するようになった。
その後、イギリスが撤退して、1948年にイスラエルが建国すると、1950年代に、エズラ・ネヘミヤ作戦で、急ぎ10万人のユダヤ人たちがイスラエルへ移住した。その後はごく僅かなユダヤ人がイラクに残るだけとなった。
1981年には、サダムフセイン核兵器開発を進めたことから、イスラエルが、イラクの核施設を破壊。イラクとイスラエルの関係は最悪となる。1990年代には、湾岸戦争が勃発し、テルアビブやエルサレムにもイラクからミサイルが撃ち込まれ、イラクとイスラエルは直接対戦状態となった。
しかし、文化的には、クルド人たちとユダヤ人との関係は切っても切れないものがあり、両者は国レベルでは正式な国交がない中、互いの交流は続けていたのであった。クルド人たちは、アメリカとの関係も、比較的良好に保っていたが、最近、アメリカ軍が撤退すると、見捨てられたような形になり、関係は微妙になっていた。
イラク政府の反応:参加者へ逮捕状
イラクのバルハム・サリア大統領は、会議は、違法であり、参加者は、国に混乱をもたらそうとしていると述べた。
26日、イラク政府は、会議のメインスピーカーであった上記2人、アル・ハルダン氏と、シャハル・アル・タイ氏の逮捕状を出した。また、300人の出席者の名前が明らかになりしだい、全員の逮捕状を出すと言っている。
この会議が開催されたアルビールがあるクルド地区知事は、これとは距離を保ち、イラクの様々な社会にむけて、「これらは、クルド人地区の考えではないと主張している。
www.timesofisrael.com/iraqi-authorities-order-arrest-of-notables-who-called-for-israel-ties/
ベネット首相:イスラエルはイラクに平和の手を差し伸べる
イスラエルのベネット首相は、イラクでのこの動きを受け、Twitterで次のように述べた。
「これは、上からではなく、下から上への呼びかけだ。政府からではなく人々から、イラクのユダヤ人が受けてきた不条理を認識してくれたのだ。イスラエルは、これに対し、平和の手を差し伸べる。」
www.timesofisrael.com/bennett-on-iraqis-call-for-normalization-israel-extends-its-hand-in-peace/