国際人権団体アムネステイ・インターナショナルが先週、イスラエルのサイバー企業NSOグループが開発した犯罪監視用ソフト「ペガサス」が、世界の政府や様々な団体に販売されたことで、世界の要人や、活動家、弁護士、ジャーナリストなどの情報が漏洩していた可能性があると発表した。
ペガサスは、個人の動きを監視するソフトで、オーナーがしらないうちにスマホをハックし、その位置だけでなく、メッセージや写真を読み取ることができるという。
アムネスティが入手し、公表したのは、このソフトの標的になったかもしれない、5万人の名簿である。その中に、サウジアラビアで暗殺された反政府ジャーナリスト、カショギ氏の名前が含まれていたことから、世界の物議となった。政治的な活動家の動きが監視されていたとなると、その人々の生死にもかかわる重大な問題である。
ペガサスは、アイフォン11と12への侵入に成功していたという。感染したアイフォンを持っていた人は、行動を監視されていた可能性がある。アップルは、高度なセキュリティを誇っていたが、ペガサスはそれを突破していたということである。のちにはアンドロイドにも侵入していたとの発表が出た。
BBCによると、この5万人のリストには、CNNやニューヨークタイムス、アルジャジーラなど世界20カ国の主要メディアの記者180人以上の名前が含まれいた。総じて、50カ国1000人以上のジャーナリストがペガサスの標的になっていた可能性があるという。
また17のニュースの調査によると、14カ国の首脳の電話番号が、リストの5万人の中に含まれていたと報じられた。
www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/post-96739_2.php
24日、フランスのマクロン大統領が、大統領自身と、フランス政府の高官たちがペガサスの監視を受けていた可能性があるとして、イスラエルのベネット首相に電話した。政府レベルでこの問題を深刻にとらえ、NSOを調査するようにとの要請を行っている。イスラエルの外務省は、この問題に関する委員会を設けて、調査を開始している。
www.timesofisrael.com/frances-macron-called-bennett-to-ensure-israel-dealing-with-nso-claims-report/
NSOはこれを完全に否定しているだけでなく、名誉毀損だとまで反発している。マクロン大統領の訴えについても否定。大統領は複数の携帯を使い回しているので、今回の件で、重大なことにはならないともみられている。
しかし、NSOのCEOは、悪用された可能性があるとして、調査を進めると言っているとのこと。今後、大きな外交上の問題に発展する可能性もあり、動向を注目する必要がありそうである。