神殿崩壊記念日の混乱2:過激右派が保守派エリアに乱入 2021.7.19

男女ともに礼拝する人々が、嘆きの壁南に設置されたセクションの階段で礼拝している様子

神殿崩壊記念日の騒動は、もう一つあった。ユダヤ教正統派の過激右派たちが、嘆きの壁のユダヤ教保守派や改革派の人たちが男女一緒に、祈りを捧げているエリアにのりこみ、男女のセクションを分けるついたてを、むりやりに置いていったのである。

*ユダヤ教正統派と保守派・改革派

西壁南の男女が一緒に祈れるエリア、見えている壁は、嘆きの壁の続き

イスラエルの正式なユダヤ教は、超正統派と正統派ということになっている。しかし、ユダヤ教にはさまざまな宗派があり、特にアメリカ在住のディアスポラ(海外在住)のユダヤ人に多いのは、保守派、改革派などとなっている。

これらのグループは、律法をある程度近代的な生活に即したものにしており、たとえば、安息日に車を運転してシナゴーグに行くなどを許可しているなどである。また、家族、男女がシナゴーグでともに座って祈ったり、女性のラビがいたりする。

近年、この保守派、改革派を、正統派を国教とするイスラエルでユダヤ人として認めてよいのかという点が議論が出て、イスラエルとディアスポラのユダヤ人との間に、大きな溝ができ始めていたところであった。

イスラエルの嘆きの壁は、国が指定した正統派が管理しているので、男女はセクションで区切られ、男女がともに祈ることはできない。しかし、イスラエルには欧米諸国から移住した保守派、改革派の人々もいる。

このため、政府は、イスラエルでは、近年、嘆きの壁の南側、ロビンソン・アーチがある考古学公園側に別のセクションを設け、保守派や改革派も、西壁に向かって祈れるようにしたのであった。

この週末、嘆きの壁のこちらのエリアでも、保守派の人々が、17日日没から、断食して座り込み、哀歌を朗読していたのであった。するとそこへ、正統派の過激右派のティーンエイジャーたちが、数百人で乗り込んできて、男女を分けるプラスチックの壁を置いていった。

www.timesofisrael.com/orthodox-activists-disrupt-tisha-bav-prayer-at-western-wall-egalitarian-plaza/

<新政権の保守派エリア拡大計画を妨害か>

ハアレツ紙によると、この妨害行為をしたのは、過激右派で知られる「リーバ」とよばれる団体である。この団体は、LGBTのイベントでも現れるほか、メシアニック・ジューの摘発にも現れるグループである。

ベネット・ラピード新政権は、この保守派エリアを拡大することを計画している。それを妨害しようとした可能性があるとのこと。この計画は、正統派政党の指示を得ていたネタニヤフ前政権時代には凍結されていた案件であった。

www.timesofisrael.com/unity-government-to-approve-egalitarian-plaza-at-kotel-frozen-by-netanyahu/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。