目次
ポンペオ米国務長官最後の7カ国訪問外交
トランプ大統領退陣の色が、いよいよ濃厚になる中、残された2ヶ月をできるだけ有効利用するかのごとくに、ポンペオ米国務長官が、最後のかけこみの外交を展開している。最後とあってか、遠慮ない外交になっている。
ポンペオ国務長官は、14日に最初の訪問地、フランスに到着。週末をフランスで過ごし、イスラム主義テロリストによるテロ現場を訪問。トルコがアグレッシブに軍事行動を展開していることへの牽制をフランスと確認した。
続いて、トルコの首都イスタンブールでは、政府関係者をすっとばして、ギリシャ正教会を訪ね、イスラム主義に傾くトルコを牽制した。アメリカの国務長官であるのに、短時間の訪問で、政府関係者には会わなかったため、トルコ政府の反感を買った。
続いて、旧ソ連の国、黒海とカスピ海の間にあるジョージアを訪問。ジョージアでは、10月にロシアとの関係も維持しようとする与党の大統領が選挙で勝利していた。ここでは、首都トビリシで、大統領など政府関係者に会い、ジョージアへの支援を継続し、西側との関係強化することを確認した。
この後、18日夕刻、イスラエルに到着。20日まで2泊した。
イスラエル・バーレーン・アメリカ:3者共同記者会見:イラン牽制を演出か
18日、9月にイスラエルとの国交開始を宣言したバーレーンのアブドラ・ビン・ラシッド・アル・ザヤニ外相が、湾岸航空直行便で、初めてイスラエルに到着。イスラエルのアシュケナジ外相がベングリオン空港で出迎え、リブリン大統領、ネタニヤフ首相と会談した。
バーレーンとイスラエルは、互いに大使館を開設し、この12月からは、オンラインで入国ビザを取得するシステムを導入する計画を明らかにした。直行便は、来年から週14便が就航予定とのこと。
jp.reuters.com/article/israel-bahrain-embassy-idJPKBN27Z0HL
この同じ日、アメリカのポンペオ国務長官が、グルジアからイスラエルに到着。アル・ザヤニ外相、ネタニヤフ首相と3者共同記者会見を行った。
バーレーンとイスラエルの国交正常化は、トランプ政権の勲章の一つで、この3人が並ぶ中で、ポンペオ国務長官は、「イスラエルと湾岸諸国の国交は、経済面だけでなく、イランのような悪意ある国が孤立していることをわからせることにもつながる。」と述べた。
この3者会談のわずか数時間前、イスラエル軍が、イスラエルとシリア国境にイランが地雷を設置していたとして、シリアのイラン軍関係施設を攻撃し、シリア、イラン軍関係者10人が死亡したところであった。イランを強力に牽制する演出にもみえる。
www.nytimes.com/2020/11/18/world/middleeast/airstrikes-israel-syria-iran.html
ハメネイ師ターゲット:新たなイランへの経済制裁強化を発表
上記、3者会見の前日、これにあわせるかのように、トランプ政権は、イランへの新たな経済制裁を発表した。制裁の対象は、イランのハメネイ最高指導者に関係する基金。昨年、イラン政府が、反政府勢力デモを禁止するという人権無視政策をとったことへの対処だとしている。
経済制裁は、イランの諜報部門閣僚も対象となっており、イランへの「最大級」の経済制裁にするとしている。
では、実際のところ、イランは、どのぐらい危険なのだろうか。IAEA(国際原子力機関)は、イランはすでに、合意から逸脱して、合意で認められているウランの量の12倍以上を保有していると報告。
加えて、ナタンツの核関連施設では、高性能の遠心分離機が、すでに稼動している。IAEAは、イランに合意に基づくレベルに下げるよう警告を発している。
www3.nhk.or.jp/news/html/20201120/k10012721831000.html
こうした中、時期バイデン大統領候補は、トランプ大統領が、イランとの核合意から離脱したことについて、これを覆して合意に戻る可能性のほか、イランへの経済制裁を緩和する可能性も示唆している。いずれの政策も、非常に危険なことになりうる。
あと2ヶ月。バイデン氏がどういうイラン政策をとるかは不明だが、トランプ政権は、ぎりぎりまで、できるだけ、イランの力を弱体化させておこうとしているようである。
イランの方では、あと2ヶ月の辛抱とみているのか、今の所、沈黙を保って、反発する動きには出ていない。