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新年祭初日30人死亡
18日金曜から全国のロックダウンに入ったイスラエルだが、その翌日19日(土)、24時間の死者数が、これまでで最悪の30人を記録。死者総数は1256人となった。コロナ担当ガムズ教授は、「今後、毎日20人が死亡して、一月に600人が命を奪われる可能性がある。今は緊急事態だ。」と警告した。
新規感染者については、日曜日24時間で2122人と減っているが、これは新年で検査数も少なかったからで、検査数に対する陽性率は8.9%と依然高いままである。現時点で陽性の人は5万2577人。重症者が急増しており、最新データでは、18日に報告してから60人以上増えて643人。このうち人工呼吸器依存者は170人。
イスラエルの医療施設が治療できる重症ベッドの限界は800床である。冬の風邪、インフルエンザのシーズンを前に、医療崩壊もそう遠くはないという事態になり始めている。このため、ハイファとペタフティクバの病院に設置されている、緊急用地下駐車場病棟の準備が進められているところである。
市中の様子:違反キップは2800枚
人々はおおむね家におり、新年中は、道路は空っぽだった。ロックダウンを監視する7000人の警察、軍兵士たちは、新年の間だけで、違反チケットを2802枚発行した。その大半にあたる2044枚は、有効な理由がないのに、自宅から1キロ以上離れた個人に発行された。
またマスクを着用していいなかったとしてチケットをもらった個人が629人。隔離の義務を守っていなかった人が47人。残りの30枚は、政府の指示に違反して営業していたテルアビブ・ヤッフォのカフェなど、店舗や企業などとなっている。なお、罰金は、個人は500シェケル(1万6000円)、企業では、5000シェケル(16万円)。
今回、シナゴーグで祈っている超正統派の人々については、あまり厳しくとりしまらなかったもようである。
ロックダウン中も各地でデモ活動
今週は、新年祭のため、安息日開けが日曜夜となった。このため、毎週行なわれているエルサレムでの反ネタニヤフ首相デモはじめ、テルアビブや、超正統派地域におけるデモも日曜夜に行われた。
民主主義を維持するとの観点から、デモ参加のための外出は許可となっている。*レストランは開けられないのに、デモには許可とはこれいかにと言っている人も少なくない。
1)エルサレムでの反ネタニヤフ首相デモに3000人:11人逮捕
エルサレムでのデモでは、先週、20人のクラスターが発生したため、警察は、20人以下のブロックに分かれてのデモにするよう指示していた。デモに集まった人々は、さすがにいつもの数万人ではなく3000人程度であったとのこと。
また、ロックダウンで車がほとんど走っていないこともあり、いつもよりスペースはあったようである。しかし、2時間もするといつもの群衆の騒ぎとなっていた。
このデモは、反ネタニヤフ首相デモということで集まってはいるのだが、様々な団体がそれぞれの要求を出しており、結局何を成し遂げたいのか、目標地点がないと指摘されている。今回は、ロックダウンに反対する声も聞かれた。
המחאה בבלפור | המשטרה ניסתה להוריד מגגון מפגינה לבושה בתחפושת סופרוומן@VeredPelman pic.twitter.com/6BhmWGsL2u
— כאן חדשות (@kann_news) September 20, 2020
この日は、デモの群衆に向かって車が突入しようとして、警察が阻止するという一面もあった。犯人の詳細は不明だが、エルサレム在住の22歳男性とのこと。この日、この男性と11人が逮捕された。
なお、エルサレムと同時進行で毎週、カイザリヤの首相私邸前でのデモも、数百人規模で行われたとのことであった。
www.timesofisrael.com/11-arrested-at-first-major-anti-netanyahu-protest-since-start-of-new-lockdown/
2)テルアビブ・ビーチでのデモに200人
19日土曜午後、テルアビブのビーチでは約200人が集まり、反ネタニヤフ首相に加えて、ロックダウンは論理的でないなどとして反対するデモを行った。
こちらではマスクもせず、禁止となっている海に入ったり、パーティになったりしていたとのこと。感染が多いのは、多くがアラブ人居住地や超正統派地域で、たとえば、超正統派のブネイ・ブラックの現時点での陽性者は、10万人あたり140人であるところ、テルアビブでは、27人である。
www.timesofisrael.com/around-200-gather-on-tel-aviv-beach-to-demonstrate-against-netanyahu-lockdown/
3)多数の超正統派がなんちゃってデモ参加で堂々と移動
新年祭に先立ち、超正統派から、デモへの参加許可への申請が多数提出されたとのことで、警戒する記事もあった。しかし、この申請は、たんに移動する手段として利用されただけであったことが明らかになった。
通常なら、超正統派家族は、遠方に住む家族親族も集まってともに新年祭を祝う。その後、自宅へもどるのだが、今年はロックダウンのため、3週間帰宅することができないことになる。そこで、利用したのが、「デモへの参加」という名目である。
この名目で許可された場合、1キロを超えて他の”デモが行われる”町へ移動することが可能になるのである。
19日、新年祭が終わった日曜日没後、エルサレムの超正統派地域や、ブネイブラックでは、多数の大型バスが並ぶ中、スーツケースを持って、家に帰る家族連れが乗車している様子がみられた。バスに提示された行き先には、「デモ」と書いたものもあったという。
נוהרים באוטובוסים pic.twitter.com/09DpzASSoQ
— יאיר שרקי (@yaircherki) September 20, 2020
それで実際にデモがなかったかといえばそうではない。エルサレムや、ブネイブラックなど、各地の超正統派地域では、若者たちが、ゴミ箱に火をつけるなどの行為をしていた。訴えているのは、こちらもロックダウンによる移動制限をなくすこととなっている。しかし、様子からして、それほど本気でないのは一目瞭然である。
ובינתיים בבני ברק, כמה עשרות חרדים רובם צעירים מפגינים ברחוב לנדא פינת חזון איש כנגד הסגר. חלק קוראים ״ביבי הביתה״ חלק קוראים לשוטרים ״נאצים״. כעת שורפים פה צפרדע זבל וכפי שתראו בסרטון מנסים לשרוף עוד. ״תכתבו שזה הפרחרחים של בני ברק לא כולם״ אומר פה עובר אורח. הנה כתבנו, צודק pic.twitter.com/KyDEfNABpb
— Bar Peleg (@bar_peleg) September 20, 2020
なんともたくましいというか、笑ってしまうというか・・・悲壮な様相で、コロナ対策を考えているガムズ教授には申し訳ない感じすらある。
ロックダウン脱出組も
ロックダウンに入る直前にイスラエルから出た人も少なくない。チャンネル12が伝えたとしてTimes of Israelが伝えたところによると、これまでに2万人以上が出国。今から2週間の間に、4万人が出国することになっている。目的はホリデーである。
イスラエルで感染が拡大しているので、イスラエル人を受け入れる国はまだギリシャとブルガリアなので、多くの旅行者の出国先はこの2国だという。
www.timesofisrael.com/tens-of-thousands-take-advantage-of-flights-to-flee-israels-closure/
<新年明けは大渋滞>
自宅から1キロ以上の外出は禁止となっているが、仕事の場合は許可ということなので、現在、月曜朝、テレワークでない人などが、一斉に仕事場へ向かっている。しかしロックダウンで、警察が通行を一部閉鎖して検問しているので、道路はかなりの渋滞になっているとのニュースが入っている。
イスラエル、どうにもバランスを崩し切っているようである。
www.ynetnews.com/article/r1TWunHrv#autoplay
石のひとりごと
それにしてもこの新型コロナ、いったい何者なのか、いったいどう対処すればよいのか、はかりしれないものがある。政府や医療の現場は、間違いなく逼迫しており、悲壮感であるし、経済でも多くの会社が倒産に追い込まれ、失業している人がまだ80万人はいる。
一方で、相変わらず、自分の生活を継続するためにあの手この手で、おかまいなしに動いている人もいる。人間、やはり不公平というべきか。悲しいかな、これが人間社会の本質なのだろう。コロナは人間社会の今まで見えなかった側面まで明るみにだしているようである。