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イランで連続する攻撃
先月26日、イランの長距離ミサイルの開発地でもあり、核兵器に必要なガスの倉庫があるパルチンのへの攻撃、続いて、9日、テヘラン南にあるナタンツ核施設が謎の火災に見舞われたことはお伝えした通り。
さらにその後も2回、最後はテヘラン近郊アフバズの発電所でかなり大きな爆発が発生した。これまでのところ、イランは、ナタンツでの火災については、イスラエルが仕掛けた爆発物が原因であったと認めている。これら一連の攻撃について、イランは、大したことはないとか、事故であったとの言い訳を出している。
www.jpost.com/middle-east/2-killed-in-explosion-at-factory-south-of-tehran-report-634114
しかし、これら一連の攻撃、またナタンツへの攻撃により、イランの核開発、ミサイル開発は少なくとも2年は遅れたとみられている。
www.nytimes.com/2020/07/05/world/middleeast/iran-Natanz-nuclear-damage.html
イランがイスラエルに反撃することはない?:国家治安顧問ヤコブ・アミドロール氏
イランの反撃が懸念される中、国家治安顧問の元イスラエル軍高官ヤアコブ・アミドロール氏は、イランの反撃について、わからないとはいいながらも、今のところ、イランの反撃はないだろうとの見通しを語った。
イランは、今、厳しいコロナ情勢にあり、経済も疲弊している。また今回の一連の攻撃で、2015年にイランが、JCOPA(アメリカとヨーロッパ諸国、中国 ロシア、EU)と結んだ合意に反していることがごましきれない状態となり、世界から孤立していることを理由としてあげている。
すなわち、核開発については、ナタンツで、約束に反して、合意の時よりかなり進んだ遠心分離機を開発していること、パルチンで、長距離ミサイルの開発を行っているなど、明らかにJCOPAとの合意に反している。
IAEA(国際原子力機関)は、イランに対し、説明を求めており、結果次第では、国連安保理に報告することになるという。
3日、イランは、フランス、ドイツ、イギリスとこの件について紛糾し、もしイランが、30日以内に、この問題を解決しないならば、JCOPAとの合意は破棄されるということになった。
実際のところ、JOCPAは、アメリカが離脱した時点で、効力はかなり落ちているし、世界は今、コロナ禍などで、イランどころではないのだが、イランが世界からこれまでになく、孤立しているということは否定できないだろう。
www.jpost.com/middle-east/iran-leaders-under-pressure-to-react-to-natanz-explosion-634059
そういうわけで、もし今、イランがイスラエルへの反撃を実施しても、イランを支援する国は期待できない。イラン自身が、今は、イスラエルと戦争をする時ではないということをわかっているはずだとアミドロール氏は考えている。
イラン指導者に圧力か:ベギン・サダトセンター・ヤアコブ・ラピン研究員/INSS・ラズ・ジミット氏
イランをここまで危機的な状況に導いた現政権に反発の声が上がっている様子をエルサレムポストが伝えた。ザリフ外相が、今年1月にアメリカに暗殺されたイラン革命軍スレイマニ総司令官と、綿密に連絡をとっていたことをザリフ外相が国会で述べると、「嘘つき!」という声が飛んでいた。
Listen to Iran's Foreign Minister, @JZarif defending himself in parliament today while being berated by lawmakers.
Zarif: I coordinated everything with Soleimani/the Supreme Leader knew about my lies/"We are all on the same boat".– And this boat is going to sink very soon. pic.twitter.com/CXICdzw3qu
— Iran News Wire (@IranNW) July 5, 2020
ベギン・サダトセンターの研究員ヤアコブ・ラピン氏は、イランの経済悪化は1979年のイラン革命以来のレベルだという。JCOPAとの合意が破棄された場合、イランの貿易はさらに悪化することは避けられず、イラン市民の生活はこれまで以上に悪化する。
今後、経済の回復を主張していたロウハニ大統領たちへの反発で、市民による反体制デモが再発する可能性もある。
しかし、ハメネイ・イスラム最高指導者の、イラン人たちに対するアメリカを信用するなという教えは、長年人々の生活にすりこまれているので、ハメネイ氏を転覆させるまでには至らないだろうと、INSS(国家治安研究所)のラズ・ジミット氏は語っている。
イラン政権としては、今から11月のアメリカの大統領政権までなんとかもちこたえて、もしトランプ大統領以外の大統領になった場合に、あらためて交渉のし直しをもちかけるというところだろうか。
そういうわけで、こちらの研究員2人も、今は、イランからイスラエルへの反撃はないだろうとの見通しを立てているようである。
www.jpost.com/middle-east/iran-leaders-under-pressure-to-react-to-natanz-explosion-634059