17日、アメリカと中国の関係が急速に悪化している今、在イスラエル中国大使のディウ・ウェイ氏(58)が、ヘルツェリアの自宅、自分のベッドの上で死亡しているのがみつかった。
ウェイ氏が朝食に来ないので、家の使用人が、部屋に様子伺いにいったところ、死んでいるのが発見された。暴力の様子はなかったという。イスラエルの警察と監察官は、中国大使館の依頼により、遺体を法医学研究所へ搬送。中国大使館は、後に、ウェイ大使が急な心疾患で死亡したと発表した。
中国政府は、イスラエルに調査隊を派遣し、家族とともに、独自の調査を行い、遺体を中国へ搬送する予定。調査隊は、入国後2週間の自主隔離の義務からは免除されるとのこと。遺族は。妻と、息子1人。
www.ynetnews.com/article/HJm7llkjU
<微妙なタイミング:米中関係悪化>
アメリカと中国は、これまでからも、貿易戦争のような形になっていたが、トランプ大統領は、新型コロナ感染拡大が、初期に中国政府とWHOが、協力して隠蔽したことが原因だと主張していることから、米中関係は急速に悪化している。
アメリカを、最大の友好国とするイスラエルだが、最近は、貿易だけでなく、技術開発においても中国との関係が急速に深まっている。このため、先週、ポンペオ国務長官が、わざわざイスラエルに来て、中国との関係を見直すよう、指示したのであった。
ウェイ大使は、コロナ危機の真っ最中であった2月15に着任。上海生まれで、イスラエルに着任する前は、ウクライナで中国大使を務めていたとのこと。イスラエルに着任してからは、2週間の隔離を守り、イスラエルの対策を評価するコメントを、中国大使館のフェイイスブックに投稿していた。
しかし、ポンペオ米国務長官がイスラエルを訪問した際には、アメリカが、中国がコロナの感染初期に隠蔽したと訴えていることなどについて、証拠がないとして抗議する投稿もしていた。
また、疫病が発生すると、だれかをスケープゴートにする傾向にあることは、イスラエルはよくわかっているはずだとも述べた。(中世のペストの際は、ユダヤ人が、疫病の原因として差別され迫害されるようになった)
www.timesofisrael.com/china-said-set-to-send-team-to-probe-death-of-its-ambassador-to-israel/
<WHOをめぐる疑惑>
国連では、じわじわと中国が影響力を拡大している。そうした状況を受けて、アメリカが、国連への出資を停止すると、その分、中国が出資して、さらに影響力を増すという悪循環が続く。WHOへの支出金を、中国との癒着を非難して、アメリカが停止すると、新型コロナ対策費として、先に2000万ドル出資した上に、3000万ドルをWHOに出資したとのこと。
アメリカの支配をよく思わなかったり、中国から経済的な恩恵をうけているアフリカ諸国などは、中国の進出を歓迎する国々もあるので、こうした傾向は進む一方であった。WHOのテドロス事務局長は、そうした国々の一つ、エチオピア出身である。
しかし、最近は中国のこうした露骨な進出に世界も気づき始めている。テドロス事務局長が中国よりの姿勢を示し、緊急事態宣言を出すのが遅れたことへの責任うを追求し、辞任を求める署名が、アメリカから始まったが、すでに102万人の署名が集まっていた。しかし、テドロス氏は、これを認めず、辞任しなかった。
www.nikkei.com/article/DGXMZO58756910S0A500C2000000/
しかし、WHOの中国よりは、台湾をWHOの今年の総会に出席させるかどうかの論議で明らかとなった。台湾は、非常にすぐれた初期対応で、新型コロナの感染拡大が台湾に及ぶことを防いだ国である。
その台湾をWHOの総会に加えることは、これからおこりうる第二波、第3波に備える世界にとって大きな益になるることは必須である。しかし、WHOは、出席の条件として、「一つの中国」、つまり台湾が中国の一部であることを認めることを求めているという。台湾は、これを拒否したため、出席は見送られた。
www.cnn.co.jp/world/35153877.html
こうした中で、アメリカの友好国、イスラエルにおいて、しかも、先週のポンペオ米国務長官の来訪のわずか2日後に、中国の大使が不審な死を遂げたので、イスラエルの立場は微妙である。
国連については、こうした政治的な悪影響や、多数決で決めるというところにも限界が見え始めている。たとえば、明らかに事実でないことも、多数の票を得るだけで、まるで正当な事実とされてしまうことがあることがわかっている。
将来、国連を解散し、新しい形での世界の協力システムのようなもの、言い換えれば新世界秩序に変わっていく一序章かもしれない。