勃発から9年になるシリア内戦。アサド政権側が、ロシアの支援を受けて勢いを盛り返したことから、反政府勢力は次々に領域を失い、ついに、シリア北西部で、トルコとの国境イドリブ地方のみに追い詰められている。
この地方には、シリア全国から反政府勢力系の難民が流れ込み、平常時の倍近い子供100万を含む300万人が難民生活を強いられている。
シリアと国境を接するトルコは、すでにシリア難民360万人以上を受け入れているため、さらに難民が流れ込んでこないよう、昨年10月、シリア難民のための安全地帯にすると主張して、シリア北部を軍事的に侵攻し、その地域を事実上占領し、そのすぐ西に位置するイドリブ地方を攻撃するシリア軍、ロシア軍との間に緊張が高まっていた。
シリア軍とロシア軍は、トルコがシリア北部を占領後も、イドリブ地方で、病院などにも容赦ない攻撃を行った。このため、多数のシリア市民に犠牲が出て、昨年12月以降、100万人が、また逃亡を余儀なくされ、難民中の難民となっていた。
トルコは基本的に反政府勢力を支援してきた立場である。イドリブ地方の反政府勢力への攻撃を行っているシリアとロシアとの緊張が高まっていたが、先週、とうとうトルコとシリアの軍事衝突が始まった。
先週、イドリブ地方の反政府勢力が、シリア軍からサラケブの町を奪回すると、シリア軍によるトルコ軍への空爆が行われ、トルコ軍兵士少なくとも33人が死亡。これを受けて、トルコが、ドローンによる反撃を行い、シリア兵19人が死亡した。
ロシアはこの件への介入を否定しているが、トルコとの間に、これまでになく、緊張が高まっている。トルコのエルドアン大統領は、ロシアとの対立は望まないと言っており、今週末、プーチン大統領と会談の予定だが、緊張は高いままである。
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<トルコがシリア難民の欧州への移動を許可>
このトルコとロシアの高まる緊張を受けて、イドリブ地方の100万人のシリア難民は完全に行き場をなくしたシリア難民が、いよいよトルコへ流入するしかなくなった。
トルコのエルドアン大統領は、2016年に、シリア難民がトルコからヨーロッパへ入る経路を遮断する約束をしていたが、その約束はもはやまもれなくなったと発表。これを受けて、シリア難民が、トルコとEUとの国境に向かって歩いて移動しはじめた。
ギリシャによると、すでに1000人がエーゲ海の島々へ移動しているとのことである。
この極寒の中、子どもと高齢の両親たちをつれて行き場を失っているシリア難民の悲惨は、想像を絶する。