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2023年10月7日、イスラエルに侵入したハマスとその関係者は5000人。ただちに駆けつけたイスラエル軍はわずか767人だった。
その後も軍の派遣が遅れたことから、1200人が、残虐に虐殺され、251人が、拉致される結果となった。
なぜこんなことになったのか、イスラエル軍は、2014年にまで遡って、深く掘り下げた検証を行い、隠蔽はせず、すべてを国民に公開した。人質家族と、野党議員たちは、軍のこの姿勢を歓迎すると表明した。
しかし、この中には、責任を認めながらも、議論と追及は戦後に行うと言っているネタニヤフ首相や、政府の責任については、触れない形になっている。主な内容は以下の通りである。
10月7日の襲撃を招いた原因として考えられること:IDF
1)過去数十年の間、ハマスを脅威ではないと認識していたこと
イスラエル軍は、ハマスが、大規模な戦闘には興味はないものと認識していたことに加え、ガザ国境には、ハイテクの防護壁を設置していたことから、ハマスに脅威を認識していなかった。
またイスラエルは、ハマスの脅威は主にロケット攻撃であると認識し、まさか、5000人の大集団が、侵入してくるとは夢にも思っていなかった。
このため、防護壁はあったが、小規模な侵入は防げてもこれほどの群衆の流入に、対処できるものではなかった。
2)ハマスの不穏な情報はあったが実現不可能だと却下していたこと
イスラエル軍情報局は、2022年の段階で、ハマスが、大規模な攻撃を仕掛ける可能性があるとの詳細な情報を受け取っていた。
調査によると、2022年4月にイスラエル総攻撃の方針を決定。9月には、すでにイスラエル大規模攻撃への準備を85%完了。2023年5月から7月には攻撃を実施する可能性も出ていた。
しかし、イスラエル軍は、2021年のイスラエルとの紛争、停戦の経過から、ガザのハマスの指導者ヤヒヤ・シンワルは、現実主義者であり、イスラエルとの大規模な戦争は望んでいないと認識していた。
このため、これらのハマスに関する情報を却下していた。この傾向は、2014年にさかのぼって、始まっていたと指摘されている。
これはイスラエル軍の報告には上がっていないことだが、この時期、ネタニヤフ首相は、ガザは、パレスチナ自治政府ではなく、ハマスが管理する方が良いと考えていたので、カタールからの支援現金が、ハマスに入ることを黙認していたのであった。
3)軍参謀本部が10月7日前夜の警告を無視し、住民に警告もしなかったこと
長年のハマスに対する認識の誤りの元、10月7日前夜には、緊急の警告が5つも出ていたにもかかわらず、これを無視していた。
その内容については、機密となっているが、一つは、ガザでイスラエルのSIMカードが使われ始めたなどである。これはつまり、ハマスがすでにイスラエル国内にいるということである。
この情報は、イスラエル軍ガザ司令官ローゼンフェルド准将と、軍南部司令官のフィンケルマン少将に伝えられた。しかし、この日は、シムハット・トーラーの祭日で、フィンケルマン少将は、家族とともにイスラエル北部にいた。
情報は、10月6日午後9時30分、午後11時30分、10月7日に入り、午前2時から3時の間にも入っていた。情報がハレヴィ参謀総長の耳に入ったのは、午前3時半。ハレヴイ参謀総長は、フィンケルマン少将と連絡をとり、油断するなと調査を求めていた。
しかし、フィンケルマン少将は、南部諜報員や、シンベト将校らと4人で会談。全員が、これはハマスの通常の行動だとの判断で一致。最悪でもイスラエルに70人程度が入る程度だと判断した。
午後4時には、警戒のため、少数のエリート部隊を国境に派遣し、ガザ上空にドローン1機を飛ばして監視したが、ガザ内部の情報源を守るため、それ以上の監視には至らなかった。
ハマスが、ロケット弾4700発を発射し、同時に5000人が、イスラエルに侵入を開始したのは、10月7日朝6時29分。情報が入ってから、この時間までの数時間の間、イスラエル軍高官たちは、連絡と相談としていただけで、本格的な軍備を南部へ移動させる機会を失っていた。
ハマスが警告なしに侵入を開始したことから、住民は軍からの警告もないまま、突然の襲撃を受けたのであった。
4)予想外の総攻撃:ハマス侵入後3日もイスラエル軍は敗北状態だったこと
ハマスは10月7日午前6時29分、陸海空、全部からイスラエルを総攻撃した。ハマスは国境の114ヵ所を破壊(手でこじ開けは37ヵ所)に及び、ドローンで、見張りの塔をほぼ全て破壊し、5000人が、国境の多方面から侵入してきた。
パラグライダーや、電動ボートを使って、空や海から侵入した者もいた。
軍参謀本部が、本当の脅威を見落としていたことから、この時、国境にいて応戦できたイスラエル軍はわずか767人だった。ガザとイスラエルの国境は59キロに及んでおり、わずか、767人が全部カバーできるはずがない。
ハマスは一時、イスラエル南部の高速道路を制覇して、周辺の居住地を襲撃していた。現場にいたイスラエル兵たちは、ほとんどが死亡し、住民たちを守れなかった。
住民への残虐行為は、朝6時半の侵入から6時間の間に、イスラエル軍に妨害されることなく、実行されていた。
午前7時以降は、第2波、第3波と、ハマス1325人、イスラム聖戦580人、その他のテロ組織も入ってきて、残虐行為を行っていた。
イスラエル軍は、直ちに部隊を派遣したが、連絡ミスなどもあり、国境周辺に入り込んだハマスを全部、一掃するのに、イスラエル軍は3日を要していた。
この間に、イスラエル軍が領内にいて殺害したハマスは1600人以上で、149人を逮捕していた。
イスラエル軍からは、この責任をとって、すでに、辞任した司令官たちがおり、ハレヴィ参謀総長も3月5日に辞任が決まっている。
遺族と野党がIDFの真摯な検証発表を歓迎
詳細な実情を隠すことなく、全て公に公表したイスラエル軍に対し、人質遺族と野党議員たちは、歓迎を表明した。
ハマス侵入時に監視に当たっていて殺害された女性監視兵2人の両親は、これまで軍を批判してきたが、失策を認めたことについては、軍を称賛すると言っている。
しかし、当然ながら、不備続きであった軍に怒りを表明する家族もいる。
野党のラピード氏は、隠蔽したり、ごまかすことなく調査を行い、発表した軍の勇気とその価値観を称賛した。一方で、政府は、政府の責任に対する調査委員会を設立すべきだと述べた。
石のひとりごと
イスラエル軍は、今も大変な局面に立っている中で、このようなことが行われていることに感銘を受けた。ハレヴィ参謀総長は、辞任の前に、国民にすべて打ち明けたかったのかもしれない。
イスラエルにいて実感することは、隠蔽ということがこの国ではありえないということだった。特に公に関わることは、すべて国民に明らかにされている。
今回も、軍が赤裸々に自分の失敗を国民に公表している。いわば罪の告白である。その様子に、国民の軍に対する信頼は、崩れておらず、むしろ高まったかもしれない。失敗を認めることで、同じことはしないと思うからである。
イスラエル人には、失敗は学びにつながればよいものという価値観があることもこれを可能にしていると思われる。
これは残念ながら、隠蔽のかたまりのような日本や、世界のほとんどの国にはないことである。
ここにも、イスラエルが、すべてを見通している天地創造の神の名がつけられている国であることを思わされる。