4回目の囚人釈放(29日(土)予定)、延期へ 2014.3.29

イスラエルとパレスチナの和平交渉。期限は4月29日。イスラエルはこの交渉が始まって以来、交渉の条件として約束したパレスチナ人テロリスト78人を3回に分けて釈放。最後の26人は29日(土)夜に予定されていたが、延期される見通しとなった。

イスラエルの報道では、犠牲者家族からの不服申し立て可能な48時間に安息日は含まないためと説明している。しかし、延期の後、いつになるかの発表はまだない。

パレスチナ自治政府高官によると、イスラエル政府は今回は釈放を実施しないと伝えてきたとの報道もある。

もしこのまま釈放が実施されない場合は、国際社会へのパレスチナ国家設立への要請を再開するとパレスチナ側は言っている。また、パレスチナ人の怒りと暴力が再燃するかもしれないとテロへの可能性も示唆する。

<そもそもなぜ囚人釈放か?>

昨年7月、3年にわたって頓挫していたイスラエルとパレスチナ自治政府と和平交渉(国を2つにわけるための交渉)を、アメリカが仲介して再開。

交渉再開の条件として、イスラエルは、パレスチナ人の囚人104人を釈放すると約束。対するパレスチナ側は、国家設立の国際社会への要請を中断し、まずは直接の隣国イスラエルと交渉をするという交換条件がかわされたのである。

いわば、長年絶交し、口もきかなかったお隣さんどうしが、久しぶりに会うにあたり、双方、手みやげを準備するようなものである。この両家の再会とお土産のアドバイス(強制的指示)をしたのが、両家共通の友人、ケリー米国務長官というわけである。

しかし、このお土産。内容をよく見ると、つりあいがとれていない。イスラエルのお土産は自国民を殺害した殺人犯を釈放するという、実質的で相当高価なものだが、パレスチナ側のお土産には実質的に何かを失うとか支払いをするといった痛みが伴っていない。

イスラエルがそれで引き下がるはずはない。イスラエル政府によると、交渉期間中、西岸地区でのユダヤ人家屋設立について、パレスチナ側は文句を言わないという約束だったと主張する。

そのため交渉が始まってから、イスラエル政府が、何度か入植地の建設許可を出し、物議をかもしたという経過がある。

そういうわけで、イスラエルは、悔し涙を飲みつつも、これまでに78人のパレスチナ人テロリストを釈放してきたのである。

しかし、イスラエル市民の中には、「入植地の建設をやめてもいいから殺人犯を釈放するな。」と考える人も多く、国内では毎回激しい論議となっていた。

<なぜ今回は延期なのか>

これまでの釈放は、テロ犠牲者家族の大きな痛みと怒りの叫び、右派議員らの激しい反発の中、ネタニヤフ首相も断腸の思いの中で実施してきた。国民への負担ははかりしれない。釈放を実施する価値があるのかどうかは常に考えねばならない。

イスラエルが特に躊躇するのが、イスラエル国籍アラブ人(本人はパレスチナ人と主張)の釈放だ。当然のことながら、国内に殺人犯を放つのだから、躊躇しないほうがおかしい。

今後、ネタニヤフ首相やイスラエル政府はどう判断するのか。彼らの決断が知恵のある最善の結果に導かれるよう、また世界がどういう反応するのかわからないが、囚人釈放の意味をよく理解するよう、願うところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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