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ロシア・ラブロフ外相大タブー発言:イスラエル首相、外相・ヤド・ヴァシェムからも非難声明
1日、イタリアのテレビが、ロシアのラブロフ外相へのインタビューを行い、その中で、ロシアがウクライナを非ナチ化すると言っていることについて、「ウクライナのゼレンスキー大統領はユダヤ人なので、その政府がナチというのはおかしいのではないか。」との質問をなげかけた。
これに対し、ラブロフ外相は、「ゼレンスキー大統領が、たとえユダヤ人であっても、政府がネオナチにならないとは限らない。実際、ヒトラーにもユダヤ人の血すじが入っていたのだから」と答えた。
Russian @mfa_Russia Minister Sergei Lavrov gave an interview to the Italian journalists and said a couple of outrageous things. The whole speech can be seen in the link below.
I have translated 30 seconds (13:08-13:38) with the most antisemitic part 👇🏼t.co/uYBmHXJzgR pic.twitter.com/IPkHbxPZ44— Michael Elgort 🇺🇦✡️ (@just_whatever) May 2, 2022
すると、ウクライナの話でありながら、まっさきにイスラエルから、反発が噴出することとなった。
まずはラピード外相が、「これは、許し難いスキャンダラスな発言だ。ひどい歴史的な間違いだ。謝罪するべきだ。」とかなり厳しいことばで、正式も反発を表明した。
ラピード外相は、「私たちはロシアとの良い関係をできる限り良好に保つ努力をしてきた。しかし、超えてはならないラインというものがある。今回、ロシアはそれを超えた。ロシア政府は、私たち(イスラエル)とユダヤ人に謝罪しなければならない。」と述べた。
イスラエルは、ロシアにシリアでのイラン攻撃を黙認してもらっているという弱みを握られていることから、こうしたロシア非難については、ラピード外相が出し、ベネット首相は、出さないようにしてきた。しかし、今回だけは、さすがに、ラピード外相に続いて、ベネット首相もコメントを出している。
ベネット首相は、「このような(ヒトラー自身ユダヤ人の血をひいている)歴史的な嘘は、史上最悪のユダヤ人迫害の責任をユダヤ人自身に被せようとするものであり、本来その責任を負う者たちが、責任のがれをしようとするものだ。」と厳しく非難した。
ベネット首相は、ホロコーストは、その他のいかなる事件とも比べてはならないと訴えている。
イスラエルのホロコースト記念館ヤド・ヴァシェムの、ダニ・ダヤン所長は、ラブロフ外相にヤド・ヴァシェムで学びたいなら喜んでお迎えすると述べ、「ラブロフ外相は超えてはならない赤線を超えた。
ウクライナに大統領はユダヤ人で、ウクライナには、多くのユダヤ人市民が平和に暮らしていた。“ウクライナの非ナチ化”というのは、錯乱した全くの嘘である。ラブロフ外相のコメントは、“血の中傷”だ。」と避難した。
*血の中傷
ユダヤ人は、自分たちが過越の祭りを祝うために、キリスト教徒の子供を殺して、その血を祭りに使っているという、根も葉もない噂のこと。この噂は、初期教会のころから、今も続いており、これを理由にユダヤ人への暴力や殺戮が発生することもある。
www.ynetnews.com/article/bjrupxthc
ウクライナの反応:ゼレンスキー大統領がイスラエルにロシアとの関係みなおしを示唆か
イスラエルが反発を出す中、ウクライナのクレバ外相は、イスラエルのテレビにビデオメッセージで、「ラブロフ外相は、その心の奥にあった反ユダヤ主義を隠せなかったようだ。ロシア人たちは、多民族を憎んでいると認めようではないか。彼らは自分達が、他より優れた民族だと思っているのだ。だから、今の政権を強力に排斥しなければならないということなのだ。」と述べた。
www.timesofisrael.com/israel-says-message-made-clear-in-rebuke-of-russian-envoy-over-lavrov-remarks/
ゼレンスキー大統領は、ビデオメッセージで、「ロシアの最高位の外交官が、ナチスの犯罪の責任がユダヤ人にあると言った。言葉もない。」と強い怒りを表明した。
また、第二次世界大戦を生き延びた人々がいなくなる中、このようなコメントが出るとは、ロシアは、先の戦争から何も学んでいなかったということだと述べた。
そうして、イスラエルが、このままロシアに普通に外交官を置いておくことができるのかと、今もロシアとの関係維持をはかっているイスラエルの方針に疑問を示唆するようなことも語った。
イスラエルはよりウクライナよりに進むか
イスラエルは、イラン対策のため、ロシアにシリアでの攻撃を黙認してもらっていることから、ロシアとの外交関係を継続している。ベネット首相が公にロシアを避難せず、経済制裁にも参加していない。
しかし、イスラエルは今、立場を少しづつ西寄りに移動しているようにもみえる。ロシアの残虐な殺戮はあまりにもひどく、これを黙認することは、道徳的にも許されることではないとイスラエル国内でも論議になてっているところである。
ベネット首相も、侵攻が始まった当初は、ロシアとウクライナの仲介や、エルサレムでの首脳会談の可能性まで検討していたが、今は、もうそういう段階ではないと言っていた。その微妙な中で、発生したのが、今回のラブロフ外相の大タブー発言だった。
1)イスラエルがロシア大使を召喚:内容は公開せず
イスラエル政府は、ラブロフ外相発言の後、ロシアのアナトリー・ビクトロヴ大使を召喚し、説明を求めた。会談の内容について、ラピード外相は、相当に厳しいものであったと報告している。双方ともに公開しないことで合意したとのこと。
www.timesofisrael.com/israel-says-message-made-clear-in-rebuke-of-russian-envoy-over-lavrov-remarks/
また、この会談が、「明確な説明」を求めたとの位置づけであり、一方的に非難や苦情を申し伝えたのではなかったという点から、イスラエルが今もなお、ロシアとの関係に配慮しているとの見方をするメディアもある。
確かに、イスラエルは、世界がウクライナに注目している間も、シリア領内のイラン軍関係地点への空爆を継続している。これはロシアの黙認が今も働いていることを意味する。
今回のラブロフ外相の発言は、世界各地で炎上する可能性があるほどにタブーな発言である。しかし、現実問題として、今、ロシアがウクライナと戦争している中で、ロシアが、この件に関する正式に謝罪を出すとは考えられない。実際、ロシアはまだ、謝罪どころか、コメントすら発していないのである。
ならば、このまま炎上させ、問題を長引かせることは、ユダヤ人たちにとっても得策ではないとの判断で、会談内容が付されたも考えられる。しかし一方で、イスラエルとロシアの関係は、もう以前と同じではなくなったとの見方もある。
2)イスラエル独自のウクライナ人道支援から国際社会軍事支援への協力へ
イスラエルは、独自の支援として、イスラエルはウクライナに100トンもの人道支援物資を送った他、ウクライナ領内、リビウ郊外に野戦病院を設立。病院は6週間後に、予定していた任務を完了し、すでに撤収を終えている。
また、イスラエルは、先に、ロシアが戦犯にあたるかどうかの国連総会での採択で賛成票と綴じた他、先月には、より強いロシアへの軍事支援を、40カ国で話し合う国際会議がドイツで行われたが、イスラエルはこの会議に代表団を派遣。防弾チョッキなど、出来うる範囲でウクライナ軍を支援することになった。
3)キーフのロシア語通り名を義なる異邦人の名前に変更
さらに、ウクライナでは、4月28日、ホロコースト記念日に合わせて、イスラエルのブロどつきー在ウクライナ大使(今はポーランドで執務中)が、キーフの通りをウクライナ人の義なる異邦人(ホロコースト時代に、自分の命にかまわずユダヤ人を助けた人)の名前に変更すると発表した。
変更前の通りの名前がロシア語であったことから、ロシア外務省は、キーフは「非ロシア化を進めている」と非難する手紙をウクライナに送り付けていた。
ロシアも、イスラエルが、少しづつウクライナよりになっているとの認識を強めているようである。それは、ロシアが、ハマスやパレスチナ自治政府にも接近する動きを見せているところからも、察せられるところである。
石のひとりごと
かつてナチスは、国家統一のために、ヨーロッパに長く根付いている反ユダヤ主義を利用したと言われている。ロシアは、ウクライナ侵攻で、世界中から嫌われ、窮地に追い込まれつつある。
こうなると、ロシアが、イスラエルとユダヤ人の陰謀説を持ち出したり、世界一致の手段として、界に長く存在しているだけでなく、近年悪化をたどっている世界的な反ユダヤ主義を使うこともありえるかもしれない。
今はそんなことは測っていなくても、みずからを正当化させるしか道がなくなってくれば、プーチン大統領ならそれを使うことに何の問題もないだろう。クレバ外相が言うように、根本的にロシアの指導者の心の奥には反ユダヤ主義があるということだからである。
世界ではいつか、終わりの時を迎えると聖書には書いてあるが、その時の一つのサインが、「エゼキエル戦争」である。
そこに出てくる北の大国が、諸国を率いて、イスラエルに攻め上ると書いてある。その北の国が、今のロシアだと言うつもりはないが、その下備えがもう始まっているようにも見えるということである。
あなたは北の果てのあなたの国から、多くの国々の民を率いてくる。彼らはみな馬に乗る者で、大集団、大軍勢だ。あなたは、わたしの民イスラエルを攻めに上り、終わりの日に、あなたは地をおおう雲のようになる。(エゼキエル38:15-16)