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ロシアのウクライナ侵攻:25日日本時間15:30時点まとめ
1)ロシア軍の急激な侵攻拡大:ウクライナを助ける国なしとゼレンスキー大統領落胆表明
23日にウクライナ政府サイトにも影響する大規模なサイバー攻撃が見られた後24日早朝朝5時、ロシア軍がウクライナ全土へ、3方向から侵攻を開始した。
巡航ミサイルなど高度な武器が、キエフはじめ、オデッサなど、ウクライナ全国の主要都市に撃ち込まれた。黒海、クリミア半島からも、オデッサや南部都市への侵攻が伝えられている。25日(現地24日深夜)時点で、11の空港と、80のウクライナ軍拠点が破壊されたとのこと。
24日夜、ゼレンスキー大統領が国民に伝えたところによると、侵攻初日1日で、確認された死者は137人(ウクライナ軍兵士10人含む)。負傷者は316人。
ベラルーシから南下してきたロシア軍は、首都キエフに向かっている。その途上にあるチェルノブイリ原発は、今、ロシアの手の中に入った。もうまもなく、キエフが陥落するとみられる。
キエフ陥落の際には、親欧米派のゼレンスキー大統領が、拘束されるかして、ロシア傀儡政権を立ち上げる可能性があると懸念されているが、大統領とその家族はキエフに留まっているもようである。すぐそこにまで迫っているロシア軍とその攻撃を受けて、逃げられなかったキエフ住民たちの多くは今、地下鉄路線に避難している。
ロシア軍は今や19万にまで膨れ上がっている。文字通り、北から来る大軍勢である。ウクライナ軍は、これに対抗する力はない。しかし、まだNATO加盟国ではないので、他の国が、ウクライナに入って援軍することもできない。ゼレンスキー大統領は、この後に及んでも、NATOへの加入は許されず、だれもウクライナを助けにくる国がないと訴えている。
2)プーチン大統領が西側への脅迫:核兵器使用もほのめかす
プーチン大統領は、西側が、仮にも反撃してくるような場合は、これを使う可能性まで示唆している。一歩間違えば、ヨーロッパ全域に戦火が広がるだけでなく、米露の核戦争にまで発展する可能性もないとはいえない。
アメリカはじめ、日本含むG7が、ロシアへの経済制裁を次々に発動しているが、ロシアとともに中国がいるので、世界の経済制裁がどれほどロシアに影響するのかはまだまだ不明である。しかし、そのぐらいのことをプーチン大統領が計算していなかったはずがないと思われる。
プーチン大統領の狙いが何か、さまざまな論議があるが、NATOにワルシャワ条約以前(1989?)のラインまで撤退するよう、要求している点が注目される。いわば旧ソ連の復活が目的だという専門家も少なくない。西側がどう対応したらいいのか、非常に難しい流れである。
3)ロシア国内で情報統制と反戦・反プーチンデモ
プーチン大統領は、国内での情報規制を強めており、偽情報が出回っているもようである。プーチン大統領は、この戦争は、ルガンスクとドネツクの要請で、虐殺を繰り返すウクライナ軍と戦うためとし、ウクライナの“ナチ化を防ぐ”ため、に止むを得ないものだったと国内外に述べている。
ウクライナ軍にそこまでの残虐行為はないので、第二次世界大戦中のナチスの恐怖を思い出させて、侵攻の正当化を計るものである。
しかし、これにまどわされないロシア人も少なからずいる。ロシア国内40の都市では、プーチン大統領の戦争に反発するロシア市民によるデモが各地で発生している。参加者は数千人ともみられ、デモは首都モスクワのプーシキン広場でも行われていた。
しかし、厳しい警察の統制で、すでに1700人が逮捕されたもようである。
www.jpost.com/breaking-news/article-698546
4)エネルギー供給施設が危ない!?:ニューヨークタイムス
まもなくロシア軍が、首都キエフを制圧する勢いにある。しかし、今懸念されているのが、ウクライナのエネルギー供給施設が攻撃されることである。
ウクライナの電力は、ロシアとベラルーシの供給に頼っていたが、今年1月からは、国内の、ガス、石炭、原子力による発電でなんとかまかなえるかどうかのお試し期間に入っている。もし自前の発電だけで3-4日行けることが確認できれば、来年には、EUと電力供給の契約をする予定になっている。これで実質的にもロシアからの自立がかなうことになる。
しかし、ロシアはこのように、ウクライナが自立し、EUとつながることに危機感を持っている。これを妨害するため、ロシアは、テスト期間後に一旦戻すことになっているロシアとのコネクションを拒否するか、またはウクライナの発電所へのサイバー攻撃で、都市をブラックアウトに陥れる可能性があるという。
こうなると、いよいよウクライナの国が、崩壊したと人々がパニックにもなる。また、ヨーロッパもロシアのエネルギー供給に頼ってきたので、今後、どこまでヨーロッパが、持ち堪えられるのかも不透明である。軍事攻撃意外にも危機は多数あるということである。
イスラエルは微妙:ラピード外相がロシア避難:ベネット首相は名指しせず
イスラエルは、ロシアに(移住可能と目される)ユダヤ人80万人、ウクライナに20万人を抱えている。また、シリアで展開するイラン武装勢力をイスラエルが攻撃するのをロシアに黙認してもらっているという弱点を抱えている。
このため、ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ人であり、国としてもイスラエルに助けを求めたが、少なくとも表向きは、支援をしない道を選んだもようである。ウクライナ政府は落胆を表明していた。
ロシアからの侵攻が始まって直後の声明で、イスラエルは、ロシアを名指しせずに非難。24日午後になって、ラピード外相が、ロシアのウクライナへの侵攻を、国際社会の秩序を見出す行為だと明確に非難した。
しかし、同時に、イスラエルが、ロシアとウクライナと両方の国とよい関係を気づいてきたことや、双方にイスラエル人とユダヤ人が、大勢いるとも述べ、その人々の安全確保が、懸念事項だと述べた。
そのわずか数時間後、ベネット首相が、ウクライナ市民への同情とともに、「ウクライナへの人道支援の用意をしている」とした声明を出したが、この時も、ロシアを名指しすることはしなかった。
Times of Israel が伝えたところによると、ベネット首相と、ラピード外相の協力関係は非常によいとのことで、このコメントの出し方も、二人の間で話し合いの上であったとのこと。アメリカに機嫌をとるとともに、ロシアの機嫌も損なわないようにする。ここでも多様な政府の利点が発揮されたようである。
石のひとりごと
今回のウクライナ侵攻について、プーチン大統領は、ウクライナをナチスのように見立てて攻撃するしかなかったというようなことを言っている。無論、直接関連はないのだが、当時のことを考えると、プーチン大統領の言い分に納得するロシア人もいるかもしれない。
第二次世界大戦中の1941年6月22日、ナチス(いわば西側勢力)は、バルバロッサ作戦として、当時はソ連領土であったウクライナ地方から、本国のモスクワにまで攻め込んだのだった。最終的には、ソ連が巻き返すのではあるが、今はちょうどその逆、ロシアからウクライナに攻め込む図式である。
ユダヤ人はウクライナだけでなく、ロシアにもいる。ロシア軍の中にもいるかもしれない。ホロコーストの時代の空気が漂う中、イスラエルが、ウクライナを公には支援しないということである。ウクライナで、またユダヤ人迫害にならないか。それもまた懸念される点である。