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ぎりぎりの経済状況
イスラエル人たちは、政府の方針にそって1ヶ月半、家から出なかった。これはアウトドアなイスラエル人には相当厳しい試練であっただろう。しかし、そのかいあってか、今、ようやく、医療的な部分がクリアしはじめ、経済活動再開を考えるまでになった。しかし、問題はここからだ。
イスラエルのメディアでは、感染者、死者数などと並んで、失業者数(失業保険申請者)と、最も打撃の大きい都市名が表示されるようになった。22日のデータでは、失業者は、昨日から1万873人増えて111万5000人(人口920万人中!)、最も打撃の大きい町はエイラットで、失業率は43.9%となっている。
この中に、失業保険を受けられない自営業者や小規模企業経営者は含まれていないので、現実には、もっと多くの人々が収入源を失っている。
ネタニヤフ首相は19日から、第一段階の規制緩和が発動したが、東京と同様、開業再開していい企業とそうでない企業の間で混乱が生じている。
19日の規制緩和後、蓋をあけてみたら、大型家具のイケヤが開店を許可されており、多数のイスラエル人が殺到した。また、全国にある、くじ屋さんもオープンしていた。経財相によると、これらの店舗は、消毒などの条件を満たしているとのことである。
しかし、別に生きるのに不可欠でもない家具屋が開店できて、マハネイヤフダ(エルサレムの食品オープンマーケット)がオープンできないのはおかしいとか、学校が閉まっているのに家具屋が開店するとは、わけわからんとの意見も噴出している。
マハネイ・ヤフダに店舗を持つタリ・フリードマンさんは、おそらく、来週日曜には、許可があろうがなかろうが、皆店を開けるだろうと言っている。
www.timesofisrael.com/cabinet-to-meet-on-easing-further-restrictions-amid-rising-public-anger/
医療現場と経済の現場。これをよくみながら、経済活動の再開を進める政府の勝負はこれからというところであろう。
ユダヤ機関北米が無利子ローン支援を表明
世界規模でユダヤ人の自助努力を行うのがユダヤ機関である。出資者は、ユダヤ人資産家などである。ユダヤ機関と、それに関連するカレン・カヤソッドなど、北米の複数のユダヤ人組織が集まって、世界中で、コロナ危機に苦しむユダヤ人コミュニティに、無利子でローンすることを発表した。
それによると、まずは、1000万ドル(11億円)を準備し、一組織につき、最大35万ドル(4000万円)までを用立てる。対象となる組織は、教育プログラム、ユースグループ、文化関係などとなっている。これらの組織ではすでに、職員の解雇に迫られているという。
ユダヤ機関は、イタリアで、コロナが蔓延する中、ユダヤ人を助けることに奔走した。当然、ニューヨークでも働いている。
ユダヤ機関に、献金を希望する人は、以下の記事内に連絡先あり。
www.jpost.com/diaspora/zero-interest-loans-offered-to-jewish-communities-to-keep-them-afloat-625520
エルサレム基金が食料配布活動:極端に貧しい人々のために
エルサレム基金(Jerusalem foundation)は、1966年、故テディ・コーラック・エルサレム市長によって立ち上げられた。テディ市長の間にエルサレムは、文化、教育、経済などで発展し、一流の都市になっていった。その中で、エルサレム基金は、4000件ものプロジェクトを行って、エルサレムの発展に貢献してきたのであった。
そのエルサレム基金が、今、これまでになかったプロジェクト、食料配布を行うことになっている。支援先には、極端に貧しい、超正統派や、東エルサレムのアラブ人も含まれている。代表のシャイ・ドロンさんは、「まさか、この団体で、食料支援を行うとは思わなかった」と語っている。
ドロンさんが強調するのは、今回の危機があまりにも急激に来たので、これらの人々の収入が、一気に0になったということである。ドロンさんによると、これらの人々は、ヘブル語を話さず、コンピューターの使い方もわからないので、情報が伝わらず、様々な支援の申請もできないという。
これは例えば、観光客に1ドル、1ドルといって絵葉書を売っていたような人だと思ってもらったらよい。子供達も観光客にねだって絵葉書を買ってもらった。これらの人たちは、今、まさに今日、食べるものがなくなっている。しかも明日からは、イスラムのラマダンである。
エルサレム基金は、特に東エルサレムのアラブ人たち(アブトゥール、シロワンなど、通常はイスラエルに反抗的な町)で、なんの支援も受けられず、言葉もわからない人たちの支援を行っている。また超正統派も含め、コンピューターを差し入れることもしている。
貧困があまりにも逼迫しているので、もはや、ユダヤ人からはいらないとか、世俗派の支援はいらないとか、の隔たりがなくなっているという。これについては、ドロンさんも、喜びをもって受け止めているとのことであった。
このほか、エルサレム基金は、特に孤立している高齢者、虐待の子供達の施設、家庭内暴力から逃れた母子の施設、にも食料を届けているとのこと。認知症の人々には、ズームでのケアも行っている。
これまでの支援額は、100万シェケル、約3000万円分にのぼっている。
石のひとりごと
政府は、いまだかつて通ったことのない道を、抜足差し足、進んで失敗してはやりなおしながら、脱出の道を模索している。ここで、出てくるのは、指導者の国を守るという本気度だろう。
やっと合意にいたった緊急統一政権で、ネタニヤフ首相の続投が決まったが、この動きへの国民の支持は60%を超えていた。いましばらく、ネタニヤフ首相が、コロナ危機を担当することになる。長くネタニヤフ首相を見てきたが、筆者は、彼のうちには本気があると思っている。ネタニヤフ首相のために、祈ろう。
東エルサレムの困窮を思うとき、観光客に一生懸命、土産物を売りにきた人の顔を思うと涙が出る。目の見えない人もいた。彼らは今、いったいどうしているのだろう。彼らのことだから、きっとたくましくやっているかもしれないが、どうか、犯罪にだけはいかないようにと思う。
エルサレム基金には感動だ。ユダヤ人は、経済にケチとかといわれるが、同時に困った人を助けるのも早いと思う。東エルサレムのシロワンまでもが、彼らの支援を受けているとは、本当に驚きだ。コロナ後、大きく世界が変わるのではと思わされる。