19日、イスラエルは、ネタニヤフ首相の指示で、緊急事態にあたるとして、携帯電話を元に、対テロサイバー技術を使った、国内治安維持組織シンベトによる隔離者の行動監視を開始した。これは著しい人権侵害にあたるが、緊急事態ということで概ね認められた形であった。
ところが、その直後、エデルステイン国会議長が、コロナ危機対策のため国会を、5日間、休会すると宣言。これにより、この人権侵害にもあたる危険な対策はじめ、ネタニヤフ首相の指示を監視する機関がいっさいなくなる形となった。メディアでは、イスラエルの民主主義が崩壊したと伝えた。
これに対し、7つの右派グループが猛反発。高等法院(High Court of Justice) に対し、これほどに人権を侵害する政策を行う際は、国会の監視が不可欠だと訴え、政府に5日以内に、このシステムを監視する国会委員会を立ち上げるようにとの請求を提出した。
高等法院のエステル・ハユート裁判長ら3人の裁判官は、これを認めると発表した。言い換えれば、ネタニヤフ首相リクード党は、5日以内、23日までに国会内にこの件に監視するシステムを立ち上げなければならないということである。もしこれができなければ、この対策は中止となる。
シンベト長官は、むこう5日間はまだこのシステムが継続されることになるが、位置情報だけで、携帯での会話への諜報は行わないと改めて発表。警察の権限についての新たな決定は行わないとした。
イスラエルはコロナ危機という前代未聞の危機と同時に、政府が1年もないという、政治危機にも直面しており、この両者の問題が、複雑にからみあって、政府の政策が進んでいるということである。
<石のひとりごと>
イスラエルは常に、解決不可能なジレンマや、チャレンジを突きつけられてきた。今回も相当難しい難問だ。大勢の人数が死ぬかもしれない新型コロナの危機の中、いのちか、民主主義かのジレンマである。その中にあっても、国民の命を守るということについては、妥協がゆるされない。
専門家でもない筆者の個人的な見方ではあるが、ネタニヤフ首相は、先がほとんど見えない中で、よくやっているのではないかと思う。
今、ガンツ氏がネタニヤフ首相の下でもよいとの姿勢を出しているが、おそらく、これだけの難問を前に、ネタニヤフ首相ほどに、こなしていけるかどうか。政治・外交の経験なし、各界にコネもない、ガンツ氏には、ちょっと無理ではないかと、本人自身もひるんでいるのかもしれない・・・。