超大国アメリカの責任と苦悩 2013.9.7

サンクトペテルブルグでのG20が終わった。先週、シリアへの軍事攻撃を決断したオバマ大統領は、G20でロシアはじめ、国際社会の幅広い支持を得ようとしたが、首脳たちの意見はほぼ半々に分かれ、結局オバマ大統領は孤立した。

首脳たちは、「化学兵器の使用は容認できない。何かしなければならない。」という点では一致したのだが、国連安保理の支持なしにシリアを軍事攻撃するかどうかで意見が分かれるのである。

しかし安保理は、ロシアが常に拒否権を出すため、現在、無能状態。米パワー国連大使(女性)は「ロシアの方針は変わらない。したがって安保理ももう変わるみこみがない。」とダイレクトに発言するに至った。

安保理支持なしの軍事攻撃やむなしとするアメリカ支持にまわったのはイギリス、トルコ、サウジアラビア、カナダ、フランス、日本、韓国、イタリア、スペイン、オーストラリアの10カ国。

しかし、このうちアメリカとともに軍事攻撃に協力すると言ったのはフランスだけだった。

<オバマ大統領の苦悩>

オバマ大統領はアフガニスタンからの撤退方針を打ち出すなど、海外への投資よりも内需に力を入れたい大統領である。しかし、アメリカは超大国。世界の警察。自分のことだけを考えているわけにはいかない。

G20閉幕にあたり、オバマ大統領は40分に及ぶ長い、苦悩にみちたとみえる記者会見を行った。オバマ大統領は、ロシアのプーチン大統領と意見が別れたままであること、自国の議会も紛糾していることを認めた。

しかし、「安保理が動かない以上、世界は今、超大国アメリカを見ている。後になぜアメリカは動かなかったのかというだろう。子どもたち400人以上がガスで殺害されたという事実を見過ごすわけにはいかない。」と強調した。

議会の承認しない場合でも攻撃するかとの問いには、「あくまでも議会を説得する。」とだけ答えた。

オバマ大統領は、「本来なら国連安保理が支持する中、多国籍軍が、シリアへ介入するべき。それなら、テロ組織を押さえて望ましい形で政権交代といった変化も期待できる。しかし、アメリカだけで、しかも地上軍を派遣をしないので、化学兵器使用への懲罰にとどまる。」という認識も示した。

*こうしている間にもダマスカス郊外ではシリア軍と反政府勢力の激しい戦闘が展開されている。国連によると、現時点で、国外シリア難民200万人、国内難民は450万人。

<これからどうなるのか>

アメリカでは週明けに、議会でシリア攻撃に関する採択が行われる。また、オバマ大統領は国民に対して直接語りかけることになっている。

アメリカ国民のシリア攻撃への支持率は徐々に上がってきているが、まだ36%。イラク攻撃の時は56%、アフガニスタンの時は82%(9:11の後だったため)だった。

攻撃の内容だが、CNNなどアメリカのメディアによると、当初の予想よりかなり大規模で3日間ぐらいなるという情報がある。アメリカは現在、地中海に巡洋艦などを増強。そこからトマホーク・巡航ミサイルをシリアに撃ち込みむ。

また誘導ミサイルを装備し、長距離対応でアメリカから発進できる戦闘機B53などで、化学兵器などのサイトを大規模に爆撃するのではないかと報じている。

今後、アメリカ政府関係施設への報復や、テロ攻撃の可能性があるため、アメリカは、ベイルート(レバノン)の大使館、トルコとシリア国境近くのアダナから職員を退避させ最小人数にしはじめている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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