解放されて次に進む元人質:軍へ戻る人・結婚決めた人 2025.10.25

軍服に戻った元人質

2年間の人質生活の後、10月13日(月)に解放された20人の元人質たちは、文字通り、新しい自分の人生に立ち帰ろうとしている。

そのうちの1人、マキシム・ヘルキン大尉(36)は、ノバ・ミュージック・フェスで拉致され、2年間、ハマスの人質であった。ガザでは相当非人道的な扱いを受けたとみえ、顔色がすぐれないようである。

しかし、解放されてから、約1週間後、軍服を着て、所属していた輸送センターでの表彰式に出席。予備役時代の戦友たちと再会を果たした。

ヘルキン大尉は、民間人として家族の元に帰り、今、軍服を着て所属部隊に戻ることができたとして、支え続けてくれた人々に、深い感謝を述べた。

ヘルキン大尉は、イスラエルでは、民間人であり、兵役にも行き、両者が支え合っている。軍服を着ることに聖なる使命を感じると語るとともに、私が、こうして、軍服を着て、帰ってくることができたのは、みなさんの支えのおかげだとして、深い感謝を表明した。

解放されてから2日目に、ヘルキン大尉は、インタビューで、「ハマスの地獄の中では、イスラエルでの人質解放運動が力になった」と語っていた。いかに環境は地獄でも、我々は必ず勝利すると確信できた。

自分のことを国が忘れていない。人々は私が帰ってくるまであきらめてないと確信した。ならば帰らないという選択肢はない。私の民はそうはさせないと思った」と語っている。

ヘルキン大尉は、ロシア国籍を持つ母と娘(パートナーとの間の娘)があるため、ロシアが早期の解放を試みたが、成立しなかった。帰国後、母親に、ミュージックフェスに行って、帰るまでに2年もかかったことをあやまったという。

www.ynetnews.com/article/hynvxpl0gx

ようやく結婚にこぎつけたカップル

Former hostage proposes to partner Ziv Aboud (Photo: Or Geffen)

エリヤ・コーヘンさんは、10月7日に拉致され、今年2月、505日目に解放された元人質である。

エリヤさんは、ノバ・ミュージック・フェスに参加していて、ハマスの襲撃に遭い、キブツ・ライムのシェルターに駆け込んだが、そこに隠れたイスラエル人27人のうち、16人は、ハマスにひきずり出されて、銃撃や手榴弾などで殺害された。

エリヤさんは、アロン・オヘルさん、ハーシュ・ゴールドバーグさん、オール・レヴィさんとともに拉致された。

エリヤさんのパートナーであったアブードさんもそこにいたが、遺体の下になっていたので、そのまま難を逃れたという。アブードさんの甥は殺害されていた。エリヤさんは、ノバ・ミュージック・フェスの後で、アブードさんにプロポーズする予定で、指輪も用意していたとのこと。(アブードさんは知っていた)

その後アブードさんは救出され、エリヤさんの解放運動に、黄色のドレスで解放を訴えていたことで知られている。

エリヤさんは、今年2月に解放されたが、一緒に人質になったアロン・オヘルさん、エルカナ・ボブホットさんが解放されるまで、婚約はしないと誓っていた。エリヤさんは、解放された際、拉致されたそのシェルターに行っていた。

当時、放り込まれた手榴弾を投げ返して死亡した、アネル・シャピラさんが、「こんなふうに殺されるわけにはいかない」と叫んでいたのを思い出したと語っていた。

www.timesofisrael.com/ex-hostage-eliya-cohen-terrorists-killed-captive-who-tried-to-flee-before-we-entered-gaza/

しかし、それから2年、その2人が解放されたことにより、エリヤさんは、正式にアブードさんに結婚を申し込み、2人は結ばれることになった。

www.ynetnews.com/article/s1pjwpdcgx

石のひとりごと

イスラエルのニュースを読んでいて思うのだが、これほどの被害を受けても、ハマスへの憎しみはほとんど、全く出てこない。以前聞いたことがあるが、ユダヤ人にとって、不条理なテロはいつの世にもあるのであり、それが来たら、「自分の番が来た」と思うとのこと。

やられたことに怒りを持ち続けても、自分が潰れるだけ。そんな負けは絶対に受け入れない。パウロが言うように、すでに達しているところからのスタートである。

イスラエル人たちは、世界のだれよりも迫害され、憎まれているが、もしかしたら世界のだれよりも、祝福され、幸せな人生を歩んでいるのかなと思ったりする。

自分の国の中で、自分の価値を知っており、同胞たちからも愛されている。自分も同胞を愛している。こんな民はどこにもいないだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。