平和・・との記事を仕上げていた8日、エルサレム南部、グッシュエチオン地域の路上で、刺し殺されたとみられるユダヤ人の遺体が発見されたとのニュースが入ってきた。
犠牲者は、ドビール・ソレックさん(19) 西岸地区入植地オフラの住民で、イスラエル軍に従軍する傍ら、ミグダル・オズのイシバ(ユダヤ神学校)で学んでいた若者であった。ソレックさんは、エルサレムにラビのための贈り物を買いに行った帰りに被害にあったとのこと。殺害された後、この道路脇に捨てられたとみられる。
ソレックさんは非番で軍服姿ではなく、武器も所有していなかった。まだ入隊したばかりで、軍事訓練も受けていなかったとTimes of Israelは伝えている。
イスラエルは、西岸地区いったいを大規模に展開し、犯人捜索を行っている。
www.timesofisrael.com/soldiers-body-found-stabbed-to-death-outside-west-bank-settlement/
<アッバス議長がイスラエルとの絶縁を宣言>
これに先立つ7月25日、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、ラマラで、指導者たちを集めての緊急会議を行い、治安問題での協力等、これまでにイスラエルと達した合意を全て破棄すると表明した。
今回、アッバス議長が絶縁を宣言するほどに怒った原因は、7月22日、イスラエルが、東エルサレム、ツール・バヘルのパレスチナ人家屋10棟を破壊したからである。
*東エルサレムのパレスチナ人ビル10棟破壊について
地域は、ワジ・アル・フムスとも呼ばれる地域で、建物が防護壁(イスラエルとパレスチナ人居住区の間にある壁)に近すぎて、治安上問題があるというのが破壊の理由である。
これについては、イスラエルの裁判所で審議されていたが、破壊許可が出たことから、イスラエル軍が破壊に踏み切ったとのこと。当然ながら、イスラエル軍は、突然破壊しにいったのではなく、話し合いが重ねられ、家から出て行くよう、6月には勧告されていた。
筆者が知る限りではあるが、イスラエルでは、治安やインフラ、都市計画を鑑みて、正式な許可が降りるまでは家を建ててはならないということが法律で定められている。このため、家やアパートを建てるとなると、何年もかかっている。
ところが、東エルサレムなどのパレスチナ人はこのルールをまもらず、どこにでも家を建ててしまうので、後に問題になり、裁判になるのである。そういうわけで、残念ながら、イスラエルが、パレスチナ人たちが違法に建てている家屋を破壊することは珍しいことではない。
しかし、今回は、破壊した建物の一部が、エリアA、パレスチナ自治政府に属する土地に建っていたことが問題であった。アッバス議長は、これを鬼の首をとったかごとくに避難している。
www.timesofisrael.com/idf-moves-to-demolish-east-jerusalem-buildings-in-pa-controlled-area-ngo/
<現代のパレスチナ人の義なる異邦人:イスラエルが永住権を提供>
イスラエルとパレスチナ自治政府の関係が悪化している中、イスラエルから永住権を与えられたパレスチナ人家族がいた。
ヘブロンのパレスチナ人男性は、2016年7月1日、西岸地区の路上で、ラビ・ミキ・マークとその家族の乗った車が銃撃テロに遭遇したところを通りかかった。この時ラビは死亡していたが、家族たちは生きていた。
このため、このパレスチナ人男性は、イスラエルの救急隊や治安部隊が到着するまで、家族たちを救出し次なる危険から保護した。
ところが、この後、この男性は、イスラエル人を助けたとして、職を失い、殺すとの脅迫を受けるようになった。このため、イスラエル政府は、男性とその家族に、イスラエルに一時住んで働く許可を出した。
この夏、この特別ビザが切れたが、男性とその家族は、ヘブロンへ帰ることもできずにいたため、イスラエル内務相は、このパレスチナ神家族に永住権を提供した。この決断をした現在のイスラエル内務相は、超正統派政党のアリエ・デリ氏であった。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5565232,00.html
イスラエルは、ホロコーストの時代に、自分の命をリスクにおき、なんの利益ももらわずにユダヤ人を助けた異邦人を、「義なる異邦人」として探し出し、感謝し、覚える活動を続けている。
ホロコーストの時代にも、ナチスに追われていたユダヤ人家族を助けたイスラム教徒がいた。このイスラム教徒たちが戦後、クロアチアで追われる身になったとき、イスラエルは、この家族にも永住権を出してイスラエルに迎えている。
<石のひとりごと>
イスラエル国内は、ごくごく平和にやっているし、多様な国であるせいか、どの国から来ても、基本的な生活には、なんの不自由もない。キリスト教でもイスラム教でも殺しにくることもない。
政府の決める政策は、国も軍隊も、最終的には、国そのもよりも、国民一人一人を大事にする政策であることを感じるものが多く、人々は、自分は国に大事にされていると感じている人が多い。まあ表面的ではあるかもしれないが、世界的にみれば、おおむね、非常によい国ではないかと思う。
それがなぜここまで憎まれるのか。存在を否定されなければならないのか。歴史的な紛争が原因ではあるのだが、あまりのこのパラドックスはやはり理解しがたいものがある。
今回、19歳の息子を失った家族や仲間たちを覚えて祈るとともに、ただただ憎しみにふりまわされているパレスチナ人たちを覚えて祈りたい。