苦難に負けないイスラエル人たち:ガザ国境周辺キブツ住民がカフェ・チェーン立ち上げ・他 2024.8.19

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ガザ周辺キブツが新しいカフェ・チェーン立ち上げ

10月7日のハマスの奇襲。よく考えれば大変な犯罪である。まだ自宅などで寝ている市民たち1200人を明るい朝日の中で、大虐殺したのである。青天の霹靂以上のことだっただろう。

以来、家族は殺され、拉致され、自分も避難生活である。国際社会は、このことに十分な理解を示さず、ハマスの方に同情する人々の声の方が大きい。

こうした中、Times of Israelが、ガザ周辺のキブツ・レイムの人々が協力して、テルアビブに新しい、おしゃれなカフェ・チェーン、「カフェ・オテフ」をオープンした。まだ2店だが、これから全国に展開していくという。

店で働いているのは、キブツ・レイムはじめ、ガザ周辺で被災したキブツや、モシャブに住んでいた若者たちである。

カフェ・オテフには、キブツ・レイムだけでなく、キブツ・べエリなど、虐殺を受けたキブツで育っているフルーツや野菜で作ったサンドイッチや、チーズやビールなどが売られている。クッキーやチョコレートもある。

またここで出されているチョコレートのスイーツは、イスラエルで最初ともいわれた、チョコレートのスペシャリストだったドヴィール・カープさん(46)の味を再現したものだという。

ドヴィールさんは、キブツ・レイム10月7日に、ドヴィールさんは、ハマスがなだれ込んできた時、子供を助けようとして殺されたとみられる。子供たちは無事だった。

ドヴィールさんの妻、リュートさんは、この味を夫ともに死なせるわけにはいかないと思っていた。他のチョコレートスペシャリストが、その味を再現してくれた。リュートさんは、夫を生き返らせてくれたと感謝したと言っている。

www.timesofisrael.com/tel-aviv-cafe-brews-up-resilience/

北部国境でボランティア助産師チーム発足

イスラエル人たちは、苦難の時に、協力することが上手な気がする。普段は意見が違って論議ばかりするのだが、本当に生存をかけた危機に直面すると、みごとに協力体制になるのである。

北部国境16キロ圏内の西ガリラヤ地方やゴラン地方は、きわめて国境に近いが、人々は避難せずに、住み続けている。これらの地域では、しょっちゅう、ロケット弾やドローン襲来のサイレンがなっている。

(Courtesy/Magen David Adom)

この地域に住む妊婦たちのために、大規模な戦争になった場合、また、インフラが止まったりして孤立した場合に、自宅などでも出産を助けることができるよう、4月、「ファースト・コントラクションズ(最初の陣痛)」というプロジェクトが発足した。

ボランティアの助産師を募集したところ、ユダヤ人、アラブ人、ドルーズと人種を超えて60人が集まった。それぞれの近くに住む妊婦担当になっている。これまでに登録した妊婦は280人である。

プロジェクトでは、助産師たちへの訓練が行われている他、さまざまな機材も準備できている。イスラエルではほとんどの助産師は看護師でもあるので、医療にも対応できることになる。

このプロジェクトは、MDA(イスラエルの救急隊)、北米ユダヤ人連盟の支援で立ち上がったとのこと。

www.timesofisrael.com/in-northern-israel-midwives-prepare-expectant-mothers-for-birth-during-war/

石のひとりごと

イスラエル人たちは、危機に再した時に、座り込んでしまうことがなんの役にもならないことを知っている。だから不条理に負けず、立ち上がる。相変わらずの様子に感動した。

また災害が発生する前に、その対処の準備をするというのも、イスラエル人の得意分野である。

日本では戦争の心配はイスラエルほどないが、自然災害の危機はさしせまっている。南海トラフ地震の危機を経験したばかりである。

コロナ危機の時に指摘されたが、日本では個人病院が多く、公共のために協力するシステムが、十分に構築されていないのではと懸念する。

災害時にそなえ、このイスラエルのプロジェクトは参考にならないかと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。