続いてレバノン各地で日本製トランシーバー爆発の波:ヒズボラ関係者20人死亡・450人負傷 2024.9.19

September 18, 2024. (Anwar Amro/AFP)

無線トランシーバー爆発で20人死亡・450人負傷

17日火曜午後、ポケベルが爆発したことで、子供2人を含むヒズボラ戦闘員12人が死亡し、約3000人が負傷した、レバノン南部各地とシリア。その翌日の18日午後、同じ地域で、今度は、ヒズボラ戦闘員が持っていたトランシーバーが各地で一斉に爆発した。

爆発は、昨日死亡した12人の一部の葬儀の中でも発生。各地の太陽発電所でも爆発が発生していた。トランシーバーがポケベルより大きいため、爆発は、昨日より大きかったもようである。

これまでにヒズボラ戦闘員20人が死亡。450人が負傷。昨日に続き、レバノンの赤十字は救急車30台が走り回るパニックになっている。

イスラエル軍は、ヒズボラの死者は報じられているよりもっと多いとみており、ヒズボラのエリート、ラドワン部隊にかなりの打撃が及んでいるとみている。

今回、各地で爆発したのは、ICOMという日本の無線機器会社が製造したトランシーバーの可能性が高い。ヒズボラは、昨日爆発したポケベルとほぼ同じ頃、このトランシーバーも導入していた。

ICOMは、爆発したのが自社製トランシーバーであることを認めた。しかし、2004年から2014年にかけて、中東を含め世界で販売した後、ここ10年、製造は停止していると発表した。

www.timesofisrael.com/hundreds-more-hurt-9-killed-in-lebanon-in-2nd-wave-of-hezbollah-device-explosions/

September 19, 2024 (Atish PATEL / AFP)

*ICOM(アイコム株式会社)https://www.icom.co.jp

1954年創業で、今年創業60周年。アマチュア無線で知られる。携帯用無線機の草分け的存在の会社。大阪に本社があり、大手銀行とも取引する大企業である。

現在、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ各国、ブラジル、中国、ベトナムにも支社がある。

ヒズボラの反撃は?今日ナスララ党首が声明発表予定

on September 18, 2024. (Jalaa MAREY / AFP)

ポケベルの爆発が続いた17日夜、ヒズボラは、イスラエル北部、キリアットシモナ周辺へ、ロケット弾を発射した。

イスラエルは迎撃し、いくつか小さい野火が発生した程度であった。

ヒズボラは、イスラエルは罪を負うことになると非難と反撃を示唆したが、イスラエルとの全面的な戦争は望んでいないことも表明している。

しかし、2日にわたる攻撃でかなりの打撃を受けたとみられ、今後どう出るのか。世界が注目する中、今日午後5時(日本時間午後11時)、ヒズボラのナスララ党首が声明を出すことになっている。

イスラエルは南部ガザから第98師団を北部へ移動へ

イスラエルは、2日間の攻撃については、まだノーコメントを続けている。しかし、この攻撃は、大規模なヒズボラ攻撃に向けた先制攻撃に使うつもりだったとも言われている。

ヒズボラに察知されそうになったので、まだ時期ではなかったが、この大計画を無駄にしないために今、決行した可能性が高いということである。

しかし、イスラエルはまだ、大規模な攻撃には踏み切っていない。ヒズボラは今、戦闘員の多くが負傷しており、明らかに弱体化している。いわば今チャンスといえる時期であるにも関わらずである。イスラエル軍自体がまだ完全に準備が整っていなかった可能性もある。

at the Defense Ministry in Tel Aviv, September 17, 2024. (Shachar Yurman/Defense Ministry)

ギャラント防衛相は、18日、IDFハレヴィ参謀総長たちと会議を開き、「戦闘のあらたな段階だ」といいながら、ガザから第98師団を北部国境に移動させることを決めた。

防衛の重心が、まだこれから北部に移行する動きである。

www.timesofisrael.com/gallant-says-idf-diverting-resources-to-northern-border-in-new-phase-of-war/

もしかしたら、イスラエル軍の方で、まだ準備が整っていないのか、まだ全面戦争にならないで沈静化する可能性も視野に入れているのではないかとの分析もある。

ヒズボラと全面戦争か・沈静化になるのか

Times of Israelのエキスパート、デービッド・ホロビッツ氏によると、ガラント防衛相は、昨年12月の時点で、イスラエルは今、7つの敵、ガザ、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸、イラク、イエメン、イラン、に取り囲まれていると警告していた。

この中で、8月末には、3つの可能性を提示していた。

①ハマスとの人質交渉で停戦に入る。これに伴い、北部も沈静化する可能性。②イランに対抗するサウジアラビアを含む地域同盟が強化する可能性。③ガザでの交渉が頓挫してますます泥沼になり、北部での緊張が高まる可能性。

明らかに今の情勢は、③に向かっているのだが、まだ①や②に向けて、特にアメリカが、最後の可能性にむけて奔走しているというのが、今の状況である。

しかし、アメリカのオースティン国防相は、ガラント防衛相に、最終的にアメリカは、イスラエルの自衛を支援すると伝えた。カービー米報道官も記者会見で、同様の結論を述べている。

www.timesofisrael.com/will-the-pager-operation-deter-hezbollah-and-iran-and-is-israel-prepared-for-war-if-not/#follow-block-wrap-99319

www.timesofisrael.com/us-additional-military-ops-not-the-best-way-to-prevent-israel-hezbollah-escalation/

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。