瓦礫しかないガザ北部へ65万人帰還:エジプト・ヨルダンはトランプ案・難民受け入れを拒否 2025.1.30

Displaced Palestinians walk on a road to return to their homes in the northern Gaza Strip, January 28, 2025. (AP Photo/Abdel Kareem Hana)

ガザ北部へ65万人行進

イスラエルがネツァリム回廊を解放したことを受けて、南部へ避難していたガザ北部住民が、1月27日(月)から、北部へと移動していった。

海岸ぞいにそって、20キロを歩いての行進である。ハマス当局によると、その数は避難していた65万人の大半だという。*赤のエリアはIDF駐留で立ち入り禁止エリア

www.bbc.com/news/articles/c79dv3ppw7yo

人々は車、ロバ車、徒歩など様々である。合意に基づき、エジプトとアメリカの担当者が、検問所で、車両を差し止め、武器がないかどうかのチェックを行っている。

喜んで戻ったものの、避難民が発見したのは、がれきになっている自宅である。電気も水もない状態で、配給の水をもらう列になっている。あまりにも厳しい状況で、南部へ戻った人もいるとのこと。残っている人たちは、がれきの中にテントを立てている状態である。

ハマスはこの人々のために、テント13万5000要求しているが、実際に届いたのは2000程度だと訴えている。また停戦合意に基づき、イスラエルは、燃料や調理用ガスを供給することになっていたようで、ハマスは約束通り配給されていいないと訴えている。

イスラエルはこれを否定。テントも燃料も運んでいると主張している。

www.timesofisrael.com/elation-turns-to-despair-as-gazans-return-to-uninhabitable-homes-in-strips-north/

アルジャジーラによると、ガザ北部には不発弾があり、全部撤去するには10年はかかると言っている。また破壊で危険な物質が発生している可能性もあるという。

トランプ大統領は、こうした現実を見る中で、エジプトとヨルダンがいったん、避難民を受け入れて、ガザをクリアにする必要があると言ったと思われる。

トランプ大統領のガザ避難民国外移動案:ハマス・エジプト・ヨルダン全員拒否を表明

on Air Force One en route Joint Base Andrews, on January 27, 2025. (Mandel Ngan/AFP)

トランプ大統領は、壮絶な状況にあるガザを復興させるにあたり、エジプトとヨルダン、アラブ諸国が避難民を一時的にでも引き受けたらどうかとの考えを明らかにしている。

すでにヨルダンの国王、エジプトのシシ大統領とも話したとのこと。

イスラエルの強硬右派たちはこれを大いに喜んでいる。ユダヤ人がまたガザに入る可能性にもつながるからである。

しかし、ハマスは言うまでもなく、ヨルダンもエジプトも明確に、これを拒否すると表明した。

ヨルダンのアブドラ二世国王は、イスラエルとパレスチナの二国家解決案に基づき、パレスチナ人は自らの土地に止まるべきだと述べた。

エジプトのシシ大統領も、パレスチナ国家の樹立をめざすとし、それに向かって働くトランプ大統領と協力する用意はあると語っている。

トランプ大統領は、来週、2月4日(土)に、ネタニヤフ首相を招いており、ホワイトハウスで会談することになっている。この件についても話し合われるとみられている。

www.timesofisrael.com/sissi-pushes-back-against-trump-says-egypt-cant-take-part-in-displacement-of-gazans/

石のひとりごと

ガザ北部の破壊は、イスラエルがもたらしたのではあるが、そうなるように仕向けたのはハマスである。ハマスが、ガザ市民の安全を守らなかったことの証であるといえる。

もし自分がガザの住民であったら、どう考えるだろうかとも思うが、今はそれどころではないかもしれない。ただもう、明日どう生きるかだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。