米下院トランプ大統領弾劾訴追を可決:イスラエルをめぐる対立

出展:Erin Schaff/The New York Times

19日、アメリカの下院は、民主党ペロシ下院議長指導の元、トランプ大統領を弾劾訴追するかどうかの採択を行った。訴追されている罪とは以下の2つで、2つとも可決となった。

①職権乱用:

来年の大統領選挙を有利に運ぶため、ライバル・民主党大統領候補ジョー・バイデン氏の息子(過去にウクライナでビジネス)についての調査を行うよう、ウクライナのティモシェンコ大統領に圧力をかけた疑い。(賛成230:反対197)

②議会妨害:

トランプ大統領の汚職疑惑に関する議会の調査を妨害した疑い。(賛成229:反対198)

これにより、年明け1月にも上院で弾劾裁判が行われ、大統領が無罪か有罪かが審議される。もし有罪となった場合、トランプ大統領は罷免される。

しかし、実際に大統領の罷免が決まるためには、上院での弾劾裁判で3分の2以上の賛成票が必要となる。上院は、過半数がトランプ大統領の共和党でるため、有罪になる可能性は低いとみられている。

トランプ大統領自身は、「弾劾される気がしない。国は前より反映したし、自分は悪いことはなにもしていない。」と豪語し、ひるむ様子はまったくない。世論調査でもトランプ大統領の支持率は高いままである。イスラエルでも、トランプ大統領の今後について、特に懸念したり、問題視する様子はない。

www3.nhk.or.jp/news/html/20191219/k10012220621000.html

<民主党:トランプ政権の親イスラエル政策を非難>

今回の弾劾訴追に際し、19日にバーモント州で開かれた民主党党大会で、来年の大統領選挙でトランプ大統領の対抗馬となるバイデン副大統領は、ネタニヤフ首相が極右に走っていると非難した。

イスラエルの防衛は支持するが、2国家2民族(イスラエルとパレスチナの国に分ける)案促進への圧力をかけるべきだと述べた。前オバマ政権下で、副大統領であったバイデン氏らしい発言である。

また、バイデン氏とともに19日の民主党党大会のステージに立った、バーモント州上院議員のバーニー・サンダース氏は、ネタニヤフ首相を「人種差別」だと非難。アメリカは親イスラエルであると同時に親パレスチナでもあるべきだと述べた。

www.timesofisrael.com/sanders-netanyahu-is-racist-us-must-also-be-pro-palestinian/

<複雑な在米ユダヤ人の動き>

トランプ大統領が親イスラエルであるとはいえ、アメリカのユダヤ人がみな共和党支持とは限らない。近年、ディアスポラ、特にアメリカのユダヤ人の中に、反イスラエル的な感情を持つ人が増えている。

特にネタニヤフ政権が、ユダヤ人の定義について、超正統派ユダヤ教徒だけを認め、ディアスポラに多い改革派などは認めないといった姿勢に反発しているからである。アメリカ在住のユダヤ人で、昨年、トランプ大統領の共和党に投票したのは、17%だったとニューヨークタイムスは伝えている。

www.nytimes.com/2019/12/09/opinion/donald-trump-jews.html

出展:Erin Schaff/The New York Times

<石のひとりごと>

今回の弾劾追訴では、改めて、アメリカが、イスラエル問題の影響を受けているかというこ明らかにした。親イスラエルの方針を鮮明にする共和党トランプ大統領に対し、ライバルの民主党は、本気でそれに反発しているということである。

筆者のまったくの個人的見解だが、ペロシ下院議長の表情からは、恐ろしいほどの憎しみを感じた。

聖書には、イスラエルをかつぐものはひどい傷を受けると書いてある。これからの世界、イスラエルを憎むものは、イスラエルを擁護するものを、正義感をもって、本気で、攻撃、排斥するようになるということを垣間見るようであった。

またもう一つ、注目すべき点は、たとえユダヤ人であっても、親イスラエル側につくのか、そうでないのかに分かれて行っているという点である。不思議なことだが、世界は、イスラエルという国、特にエルサレムのことで、立場がわかれていくようである。

見よ。わたしはエルサレムを、その回りのすべての国々をよろめかす杯とする。ユダについてもそうなる。エルサレムの包囲される時に。その日、わたしは、エルサレムを、すべての国々の民にとって重い石とする。すべてそれを担ぐ者は、ひどく傷を受ける。地のすべての国々は、それに向かって集まって来よう。(聖書ゼカリヤ書12:2−3)

しかし、この後に、メシアが現れ、エルサレムにいるユダヤ人とそれを支持するものが助けられるわけである。この時、本物の神がだれなのかが世界に明確になる。水戸黄門のラストシーンである。

人間的には、まったく受け入れがたいかもしれないが、聖書にこう書いてあるので、その時がきて、もし間違った道を選んでいたとしても言い訳はできないだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。