エルサレムのダビデの町では、南端にあるシロアムの池から、第二神殿(今の嘆きの壁付近)に向かってのぼっていく通路の発掘が続けられている。
約600メートルのその通路は、かつて、イエスや弟子たちも歩いたとみられる階段式の通路で、下には、排水溝が存在している。排水溝はすでに西壁南部まで掘り終わっているが、その上の通路ももうすぐ、全体が掘り終わるところまで近づいている。
イスラエルでは、この発掘で出てくる大量の土を、ふるいにかけ、重要なものがないかを確認する作業が、ボランティアたちによって行われている。
今回、その作業の中で、紫水晶のような美しい宝石が出てきた。大きさは、10mm×5mmで、元は指輪であったが、なんらかの理由で、宝石だけがはずれ落ち、2000年後の今にいたるまで土の中で眠っていたということである。
持っていた人は、おそらく裕福なユダヤ人で、巡礼に来た人であったかもしれない。これが出てきた土は、神殿を出てすぐ、神殿基礎石近くの地下通路であった。
その宝石には、明確に鳥と5つの実をつけた植物が彫られていた。考古学者のエリ・シュクラン博士によると、鳥は鳩の可能性が高い。植物は、聖書時代、特に第二神殿時代(2000年前)には存在していた、聖書時代パルセモンであるとみられている。
この木でとれる実から、聖書では、神殿でも使われた香油、ギルアデの乳香、バルサム油が作られたとみられる。
考古学者のアモライ・スターク教授によると、2000年前のこの時代は、小さな石に彫り物をして、スタンプとして使われることが行われていたが、これまでに見つかっていたのは、ぶどうやなつめやし、オリーブといったいわゆる聖書の7つの植物であった。
今回のパルセモンの木、しかも実をつけている彫り物が発見されるのは、世界でも初めてとのこと。
ギルアデの乳香は、1世紀の歴史家フラビアス・ヨセフスによると、マーク・アントニーが、ヘロデ大王から送られたパルセモンの畑をクレオパトラに送ったとされる。
*ギルアデの乳香が聖書に出てくる箇所
創世記37:25 ヨセフの兄たちがヨセフを売った商人が、運搬していた商品
創世記43:11 ユダがベニヤミンをエジプトに連れて行く時、父イスラエルが、エジプトに持たせた土産の一つ
エレミヤ8:22 乳香がギルアデにないのかと嘆く
エゼキエル27:17 ユダとイスラエルの取引の一つ
イスラエル考古学庁の学者の中には、この香油が、シェバの女王が、ソロモンに送ったバルサム油であると考えている人もいる。(第一列王記10:2)
www.timesofisrael.com/plant-for-cleopatras-scent-and-temple-rite-found-on-ancient-jerusalem-seal/