神殿の丘問題:解決見えず 2017.7.24

*神殿の丘問題

14日、神殿の丘から出てきたパレスチナ人2人が、持込めるはずのない銃で、イスラエル人警察官2人をを殺害。イスラエルは、今後、武器が神殿の丘へ持ち込まれるのを防ぐため、神殿の丘への入り口に金属探知ゲートを設置した。

ところが、これを侮辱とだとして、多くのパレスチナ人イスラム教徒が、神殿の丘に入らず、外で、イスラエルの治安部隊との暴力的な衝突が始まった。金曜には、旧市街周辺、オリーブ山とその麓などで激しい衝突となり、パレスチナ人計3人が死亡した。

さらに21日金曜の夜、西岸地区ハラミシュで、ユダヤ人一家が侵入テロに襲われ、3人がナイフで刺されて死亡。テロリストが残したフェイスブックへの書き込みで、犯行が、神殿の丘問題に由来していることが明らかになった。

<問題への解決見えず>

1)強気のパレスチナ自治政府

ライオン門でのパレスチナ人とイスラエル治安部隊との衝突は、その後も毎晩発生している。西岸地区各地でも衝突が発生しており、新たにパレスチナ人1人が死亡。治安部隊2人が負傷した。

金属探知ゲートだけでそこまで深刻な状況に発展するとは思っていなかったイスラエルは、日曜、治安委員会を開き、金属探知ゲートの除去も含めて話し合いが行われた。

一つの手段として、ゲートの代わりに、ハイテクのCCTVカメラを設置する案も検討された。(*別の報道ではすでに設置している。)しかし、パレスチナ側は、これを拒否。いかなる機器の設置もなかった以前とまったく同じ”現状維持”体制に戻すよう、主張している。

このため、金属探知ゲートは今もそのまま残されている。昼間は、ゲートを通って神殿の丘へ入るわずかな女性たちの姿がテレビでも伝えられている。

しかし、パレスチナ自治政府のアッバス議長は日曜、以前の状態に戻すまではとして、これまで続けてきたイスラエルとの治安協力体制を保留にすると申し入れてきた。治安の協力とは、テロを防ぐために、自治政府が、イスラエルに一定の情報を提供し、イスラエルが事前にテロリストらを逮捕するなどである。

アッバス議長は、「イスラエルが一番困ることだ。」と言ったが、リーバーマン防衛相は「イスラエルは、パレスチナ側の協力は不要だった。この協力は自治政府のためにやっていただけだ。」と反論している。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4993311,00.html

2)怒るイスラエル:テロへの厳しい対処

パレスチナ側が強気となり、イスラエルも引っ込みがつかなくなっているというような状況にある中、安息日を祝っている真っ最中のユダヤ人一家が襲われ、3人が惨殺された。

ここで、厳しい対処に出ることで、また暴力がエスカレートするかもしれないが、このような残虐事件に、イスラエルとしても、何もしないというわけにはいかない。

イスラエルはただちにテロリストが在住していた村や、西岸地区全体を捜索。関連していたとみられるパレスチナ人25人を逮捕した。また、ネタニヤフ首相は、必ずテロリストの家を破壊するといっている。また、事件の関係者、一家、親族まで全員、イスラエルへの入国労働許可はすでに剥奪した。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Israel-cracks-down-on-Hamas-in-West-Bank-after-deadly-attack-500507 

テロリストは、イスラエルの病院で手当てを受けているが、イスラエルの右派政治家たちからは、「テロリストは死刑にすべきだ」などの発言が出ている。

また、残虐なテロが、ティーンエイジャーによるもので、明らかに扇動と、ユダヤ人を殺したテロリストには、高額な支給金が家族に与えられることが、大きな引き金になっているとして、これらを停止するように強く訴えている。

しかし、イスラエル国内では、左派系のハアレツなどでは、右派政権が、神殿の丘関連問題は、地雷を踏むようなものと知っていながら、なぜ軽率にも金属探知ゲートをなどを設置したのか。大量に血が流されてから、あわてて対処を検討していると、からくちの批判も出てきている。

3)一般市民の反応

市民たちが懸念するのは、かつて自爆テロが相次いだインティファーダの再来である。しかし、今の所、西エルサレムのユダヤ人居住区には、影響が出ていないため、エルサレム市内の様子には全く変わりはない。

パレスチナ市民は、夜が明けて、通りに治安部隊と衝突した後の散乱した石を履いている老人の様子が伝えられてた。暴動を起こすのは一部の若者で、一般大衆、特に世俗に近いイスラムの場合は、平和の方を望んでいるのではないかと思われる。

そういうわけで、一般イスラエル社会は、今の所、ただ見守るしかなく、市内は安全であるために、一般民衆が恐れおののくまでは行っていないようである。観光客も今の所は、まだ普通に来ているようである。

4)国際社会の反イスラエル運動

この問題については、ヨルダンだけでなく、トルコ、またイギリスのロンドンでも、イスラエルは神殿の丘から手をひくべきとの数千人から1万人規模の大きな反イスラエルデモが発生している。

www.timesofisrael.com/over-10000-march-against-israel-in-london-paris/

国連安保理もこの問題を審議しているようだが、まだ情報はない。

時間がたつにつれて、「イスラエルが、現状維持の合意を破って、アル・アクサ(神殿の丘)を支配しようとしている。」「アル・アクサを救い出せ。」といった誤った考えが大義になり、イスラエルには不利な状況になっていくようである。

イスラエルの同盟国アメリカからは、トランプ政権の中東担当のクシュナー大統領上級顧問と中東特使グリーンブラット氏が、月曜、イスラエル入りの予定。 なお、この2人と、在イスラエルアメリカ大使のフリードマン氏は、事態を鎮めるべく、すでにイスラエル政府と緊密に協議していたとのこと。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4993559,00.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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