目標は新世界秩序:ナスララ党首暗殺で変わる?中東と世界の勢力図 2024.10.1

Prime Minister Benjamin Netanyahu delivers a video message to the Iranian people, September 30, 2024. (Screenshot: GPO)

イスラエルが中東で抵抗の枢軸すべてを攻撃する目的

イスラエルは、ナスララ党首を暗殺し、ヒズボラの幹部や武器類に相当な打撃を与えている。

また同時に、イスラエルは、ハマス、フーシ派、シリア、イラクのシーア派と、イランとともに「抵抗の枢軸」全組織への攻撃も本格的に開始している。

IDF少佐(予備役)で、国際テロの専門家、ミリ・エイシン氏によると、これは昨日今日、計画したものではない。

非常に長い年月をかけて準備してきた中で、今やらなければ、本当にイスラエルの存続に関わる事態になったために、今、計画を開始したということである。

となると、イスラエルがこれを途中で、停止することはない。目標は、中東における力関係を大きく変えることで、イスラエルへの脅威を排除することにある。

そのためには、南北国境の治安が回復し、住民が帰宅できることである。そのためには、やはり、ハマスとヒズボラを少なくとも国境周辺に存続させることはありえない。

ということは、その親分であるイランと、その傀儡からなる「抵抗の枢軸」と言われるテロ組織をすべて排斥、または危険でないほどに弱体化しなければならない。

それが、もし実現した場合、中東全体の勢力図が変わることになり、それはまた、世界の勢力図の変化にもなりうる。

イスラエルが今目指しているのは、ここにいたる非常に大きな目標であるが、それ以外に、イスラエルがサバイバルする方法はないともいえる。そのために、考えうる項目は以下の通りである。

1)イスラエルの認識回復・アラブ諸国との連携前進

ハマスによるイスラエルへの侵入を許してしまっただけでなく、1年経つ今もまだ、101人もの人質を取り戻していない。世界でも最強の軍事国家イスラエルの名は地に落ちた。

こうなると、中東では、イスラエルとその背後にいるアメリカをも恐れなくなりつつある。中東においてアメリカは、その存在感を失いつつあり、その代わりに出てき始めたのがロシアと中国だった。

こうした中、イスラエルがまず、その本来の驚くべき軍事諜報能力を見せつけた。

まずポケベルをヒズボラ高官の手に入った時点で選択的に爆発させ、ヒズボラの指示系統を麻痺させ、経験ある有力幹部を戦闘不能にするという、これまでになかった大量破壊戦略と言われている。これだけの計画力と諜報力、実行力に驚かなかった国はないだろう。

イスラエル最大の敵、イランだけでなく、アブラハム合意を結ぼうとする途上のサウジアラビアなどにもイスラエルとの友好関係が有益、重要だとの意識につながったかもしれない。

2)イランをその枢軸と共に弱体化させる

次にイスラエルは、ナスララを暗殺した。ミリ・エイシン氏によると、ナスララは、イランの傀儡、抵抗の枢軸を立ち上げてきたカリスマであり、特別な位置を占めていた人物。そう簡単にこのポジションを引き継げる人材はみあたらない。ナスララなき後、抵抗の枢軸は今、統率力を失っている。

これからイランがどう出てくるかはまだ予測不能ではあるが、イランは、現時点では、まだ直接的にイスラエルと対立はしたくないと考えているといわれている。

まだ核兵器は完成していないし、アメリカもまだ中東にいる。イスラエルへの攻撃は、アメリカとの対立になり、イランにその用意があるとは思えない。

またイラン国内では、女性のヒジャブ強制問題で、政府に反発する勢力も小さくない。海外にいるイラン人は、ナスララの死亡に歓喜し、たとえばカナダでは、イラン人とイスラエル人が一緒にこれを祝う様子も伝えられていた。イラン国内から今のイスラム政権を打倒する動きが出てくる可能性もある。

実際のところ、トランプ前米大統領とネタニヤフ首相は、イラン国内での反乱を促していた時期もあった。

www.timesofisrael.com/nasrallahs-elimination-is-a-direct-blow-to-iran-and-a-revival-of-israeli-deterrence/

ネタニヤフ首相がイラン市民に訴え

ネタニヤフ首相は30日(月)、イラン市民への直接のメッセージを発した。英語だったが、イラン向けには、ペルシャ語の字幕がついていたとのこと。

ネタニヤフ首相は、イラン市民に向かって、「あなた方を服従させている現政権が、レバノンやガザでの防衛について主張しているが、それこそが、地域を戦争の暗闇に追いやっている。

もしこの政権が市民のことを考えているなら、膨大な資金を武器になど使わなかっただろう。この政権はイラン市民のことを考えていない。

イスラエルは、国民の安全を守るためには、中東のどこにでも到達する。イランの傀儡組織は今や、排斥の一途にある。今後、イランがこの政権から解放される時、それはそう遠くないが、すべてが変わる。

イスラエルとイラン、ユダヤ人とペルシャ人という古代からの民族は、平和になるだろう。

その時、今のイラン政権が5大陸で築いたテロ組織は崩壊し、イランはこれまでになかったほどに繁栄すると考える。少数のイスラム政権に可能性を奪われてはならない。

イスラエルは、皆さんと共にある。共に、繁栄を平和の未来を築いていきたいと願っている。」と語った。

www.timesofisrael.com/pm-to-iranians-israel-stands-with-you-youll-be-free-sooner-than-people-think/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。