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イスラエルとのサイバー攻撃攻防
新型コロナ・パンデミックで世界が混乱する中、4月中、ゴラン高原やシリア領内のイラン軍関施設への攻撃が実施され、イラン軍関係者が多数死亡している。また、5月9日には、ホルムズ海峡に面する大きな港(軍港ではない)がサイバー攻撃を受け、コンピューターが機能不全となり、大混乱に陥ったと、ワシントンポストが報じた。
港は数日間、混乱したが、約1週間後、イラン当局が、アメリカのサーバーを経由したイスラエルのハッカーによるものだったと報告した。イスラエルは、ノーコメントだが、イスラエル軍のコハビ参謀総長が、これを匂わす発言をしたとの記事もある。
www.timesofisrael.com/idf-chief-hints-at-israels-role-in-cyberattack-on-iranian-port/
いずれにしても、これに先立つ4月24−25日、イスラエル全国の上下水道設備6箇所がサイバー攻撃を受けていたことから、イスラエルによる反撃とみても不思議はないだろう。
この時、上下水道が、予想外の動きをしてサイバー攻撃が察知されたため、すぐに職員らに暗証番号の変更の指示が出された。これまでのところ、大きな被害は出なかったが、イスラエルはサイバー攻撃には無敵に近いほどに防衛しているため、ハッカーが国内施設にまで及んでしまったというのは、ゆゆしき事態であったといえる。
www.timesofisrael.com/6-facilities-said-hit-in-irans-cyberattack-on-israels-water-system-in-april/
イランへのイスラエルによるものとみられるサイバー攻撃は、今に始まったことではない。
イランの核兵器については、ネタニヤフ首相が、今から25年前の1995年に、執筆した著書「テロリズムとはこう戦え」の中に、”イランは数年後に核兵器を保有する”とある。それが、いまだにイランに核兵器保有国にならないのは、イスラエルが、目に見えないサイバー攻撃や、時に軍事攻撃をも続けていることと、最近では、アメリカが厳しい経済制裁を行っているからである。
イランの攻撃目標は、イスラエルだけでなく、アメリカもである。ロイターによると、5月8日、イラン系ハッカーが、新型コロナの治療薬として期待されているレムデシビルを製造するアメリカのギリアド・サイエンス社がサイバー攻撃にあったという。イランはこれを否定し、詳細は不明。
イラン、イスラエル、アメリカ、中国も含め、世界では、目に見えず、ニュースにもでてこない中、活発なサイバー戦争が行なわれている。その傾向は、新型コロナで、世界がサイバー攻撃に脆弱なまま、オンラインに突進している中、さらに活発化していると言われている。
jp.reuters.com/article/healthcare-coronavirus-gilead-iran-idJPKBN22K2QH
厳しいイランの現状:軍事危機、コロナ危機、経済危機:地震とばった襲来
サイバー攻撃と関係するかどうかは別として、イランは、ここしばらく、踏んだり蹴ったりという表現が似合うほどに困難が続いている。
まずは、今年1月にウクライナの旅客機を誤爆して176人が死亡した。イランは、これが誤爆であったことを認め、世界は、イランに冷たい目を向ける様になった。
新型コロナのイランへの感染は、2月下旬。感染拡大が急速に進む国の一つであったが、4月初頭から減少に転じた。このため、4月26日から、感染が確認されていない地域でのモスクでの礼拝が再開された。それが原因かどうかは不明だが、5月初頭からまた増加に転じている。
20日の時点で、12万4603人、死者は7119人。感染者数に比べて死者数が少なすぎるとして、隠蔽があるのではないかと言われている。
www.worldometers.info/coronavirus/country/iran/
イランは、すでにアメリカや世界からの経済制裁で、経済危機に苦しんでいたが、コロナ危機により、経済への打撃はさらに大きくなも、トルコやアフガニスタンなど中東諸国との貿易までも70%の減少となった。
www.middleeastmonitor.com/20200519-iran-trade-with-turkey-drops-70-due-to-covid-19/
こうした中でも、イラン政権は、シリアに、イスラエルへの攻撃に備えるかのように、軍事基地を建設し続けていたわけである。このため、4月から5月にかけて、シリア領内への攻撃が5回あり、イラン・ヒズボラ関係者が9人死亡した。イランはイスラエルによるものと非難しているが、イスラエルはノーコメント。
オマーン湾では、5月11日、軍事演習を行っていたイランのフリゲート艦があやまって、友軍の駆逐艦を誤爆し、イラン兵19人が死亡した。
イランの困難はこれだけに終わらない。5月8日、イラン北部でマグニチュード5.1の地震が発生し、2人が死亡。22人が負傷した。人々は余震を恐れて外で夜を過ごしたため、政府は、ソーシャルディスタンスを守るよう、指示したりしている。イラン北部では、昨年11月にも大きなじしんがあり、6人が死亡していた。
www.aljazeera.com/news/2020/05/casualties-reported-51-earthquake-hits-iran-200507223020954.html
さらには、アフリカで発生した砂漠バッタの大群の来襲もある。今年の大群は、今世紀最大とも言われる大きさで、3月ぐらいからイランにも到達しており、今も大きな被害をもたらしている。
イランの農業省によると、これまでに、イラン東南部、パキスタン、イラクとの国境付近の7県(31県中)、20万ヘクタールの畑を食い尽くしており、被害は74億ドルに達すると懸念されている。これを受けて、FAO(国連食料農業機関)は、イランに20万ドルの支援を実施したとのこと。
この砂漠ばったの被害は、そうとう甚大で、地球全体に、食料危機をもたらす可能性があると言われている。
対米路線の中国の側にいるイラン:親米に傾く湾岸諸国と対立
現在、米中の対立が明白になっているが、イランは、中国との関係が深い。世界が、アメリカの要請に応じて、イランとの貿易から撤退する中で、中国だけは、イランとの貿易を継続した。しかし、さすがにコロナ危機で、両国の貿易は30%減とのことである。
中国とイランが接近する一方で、シーア派のイランと敵対するスンニ派の湾岸諸国は、コロナ危機でいっそう、イスラエル、アメリカに接近を続けている。
20日、イスラエルとは国交がない、アラブ首長国連邦の飛行機が、コロナ危機に苦しむパレスチナ人への支援物資16トンをのせて、イスラエルのベングリオン空港へ着陸した。パレスチナ人への支援ではあるが、背後にアラブ首長国連邦とイスラエルの協力があったということである。
www.ynetnews.com/article/BkPa009boI
イランのハメネイ・イスラム最高指導者は、これは、パレスチナ人への大きな背信行為だとの声明を出した。
www.timesofisrael.com/iran-leader-accuses-uae-of-treachery-after-first-direct-flight-to-israel/
イスラエルにアプローチするイラン人増加:イスラエル外務省
こうした中、イスラエル外務省のデジタル外交を担当するユバル・キュリエル氏によると、イスラエルに助けを求めるイラン人が、劇的に増えているという。
キュリエル氏によると、コロナ危機以降、何千人ものイラン人が、イスラエルに健康上の相談をしている。しかし、実はそれ以前からも、イスラエルの政府系のソーシャルメディアへの相談を受けていたとキュリエル氏は語る。
相談の内容は、医療から移住にまでも及ぶという。移住については、イラン在住のユダヤ人だけでなく、一般のイラン人からも問い合わせがあるとのこと。イラン人で他国に移動して難民申請をする人は、毎年数千人にのぼっているが、国籍を隠している例も多いとみられ、その数はもっと多いとみられている。
最近の有名な例では、イランのオリンピック柔道選手サイド・モラエイ選手が、イランからドイツへ亡命した例がある。モラエイ選手は、前オリンピックで、イラン政府からイスラエル選手とは対戦しないよう命令されたが、亡命後、そのイスラエルのサギ・ムキ柔道選手と面会し、友好関係を築くに至っている。
www.timesofisrael.com/judo-champion-who-fled-iran-over-israel-fight-gets-new-olympic-nationality/
イスラエル外務省は、ソーシャルメディア(ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、テレグラム、ユーチューブ)を6言語で運営している。英語、ヘブル語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ペルシャ語(イラン人用)ペルシャ語チャンネルへの登録は22万人にのぼっているとのこと。
www.timesofisrael.com/israel-sees-dramatic-increase-in-iranians-asking-for-help-emigrating/
この後、イラン政府は、「たとえオンラインでもイスラエルとともに動くことは、神に逆らうことだ。」との法案を全会一致で可決した。また今週、22日(金)に予定されているアル・クッズデー(イスラエルのエルサレム支配に反発を表明する日)は、感染拡大が低い地域においては、モスクでの礼拝を許可し、反イスラエルデモに参加するよう、呼びかけている。
www.timesofisrael.com/iran-to-hold-limited-quds-day-events-against-israel-amid-pandemic/
石のひとりごと
イスラエルを長年みているが、この国に関わる人々は、とにかくなんらかの特殊な影響を受けるようになるような気がする。特にイスラエルを憎み、攻撃すると、そのツケは何倍にもなって戻って来るように見える。
一方で、イスラエルを、ある一線を越えて擁護すると、これもまた、大きな被害を受けることもあるように見える。聖書には、エルサレムを担ぐものはひどく傷を受ける(ゼカリヤ書12:3)と書いてあるがそれを思い出してしまう状況のことである。
トランプ大統領は、イスラエルの首都をエルサレムを宣言し、大使館をエルサレムへ移動させたが、その後、アメリカはコロナで非常に大きな傷を受けた。ブラジルも大使館を、エルサレムへ移動させると大統領が言いだしてから、国はどんどんおかしくなった。今コロナ危機の被害が世界3位になっている。
これはあくまでも石のひとりごとであり、個人的な直感だけだで、定説を述べているのではないが、イスラエルという国の背後には、やはり聖書の神がおられ、その計画が進められる中で、これに反発する勢力もまた、リアルに存在するということではないかと思う。
こうした状況の中で、イランの人々が、実はイスラエルに興味を持つのは理解に苦しくない。イランの人々は、歴史的にみても、頭脳明晰で文化的にも非常にすぐれた人々である。
確実として提示できる資料はないが、イランでは、聖書やキリスト教に転じる人も少なくないと聞いている。イランにいるクリスチャンたちを覚えて祈りたい。