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カイロで行われている人質解放と停戦に関する交渉について、イスラエルの代表が帰国すると、ネタニヤフ首相は、ハマスが出している条件は非現実的だとして、それを変更しない限り、イスラエルの代表団は交渉の座には戻らないと発表した。
www.israelnationalnews.com/news/385208
現在、イスラエル軍は、130万人以上の避難民がいる、大密集状態にあるラファに地上軍を送り込む前の空爆をすでに開始している段階にある。
これまでにイスラエル人人質2人を奪還したが、激しい空爆で、大きなクレーターや、70人近く死んだとされる遺体の様子が報じられている。
さらに、UNRWAのハマス関与が明らかになって以来、日本を含む世界からの支援が停止したことで、ガザの民間人の食糧も絶えそうになっている。
ラファからは、「安全な場所がない」として、避難前のガザ中部などに戻って行くパレスチナ人の様子が報じられている。しかし、ガザ中北部では、危険な野犬の問題も上がっており、別の意味での危険が待っているようである。
世界の首脳たちの間では今、危機感が急速に高まっている。
ラファへの地上軍侵攻を前に:急遽停戦求める欧米諸国
アメリカのバイデン大統領は、ネタニヤフ首相に、民間人避難の効果的な方策なしに、ラファを攻撃してはならないと言っていたが、方針を変えようとしないネタニヤフ首相を前に、「おおばかものだ」というような非常に汚い英語で非難をこぼしたというニュースが出回っている。
13日、イギリスが、ガザの人道状況の悪化に懸念を表明したのに続いて、14日、ドイツとフランスが、ラファへの攻撃により、計り知れない人道的問題が発生するとして、反対する意向を表明した。
また、スペインとアイルランドが、EUに対し、経済制裁も匂わせながら、イスラエルがガザでの人権遵守義務を果たしているかどうか、緊急に調査すべきだと進言した。
www.timesofisrael.com/spain-ireland-ask-eu-to-probe-if-israel-violating-human-rights-in-gaza/
また、カナダと、オーストラリア、ニュージーランドが、ただちに人道的な停戦にしなければならないとの共同声明を出した。
www.timesofisrael.com/british-fm-israel-must-ensure-aid-reaches-gazans-will-breach-intl-law-if-not/
また、アメリカは、ヨルダンとサウジアラビアなど湾岸諸国とともに、パレスチナ国家設立を中心とした停戦プロセスを提示しようと、その準備を進めており、数週間後には発表されるとの見通しもある。
しかし、「75%までハマス戦闘員を無力化するところまで来ており、今戦闘を止めるわけにはいかない。25%残したら、ハマスは絶対に復活する」というのが、イスラエルの主張である。
ネタニヤフ首相は、国際社会の懸念に対し、ラファの難民のためには、安全な避難ルートとともに、2万5000人づつのテント村15箇所を用意すると言っているが、具体的な動きはまだ報じられていない。
西岸地区の過激入植者たちへの制裁:米英に続いてフランスも28人に制裁
イスラエルをさらに不利にする要素が、西岸地区でパレスチナ人たちにテロ行為をする極右の過激ユダヤ人入植者たちである。パレスチナ人居住地でのテロ行為で、避難を余儀なくされたパレスチナ人の村もある。
アメリカが、2月初頭、過激入植者4人に制裁を発表したのに続いて、イギリスが非難。フランスは、過激入植者28人のフランスへの入国を禁止するなどの制裁を発動すると発表した。
今後、同様の動きがEU諸国の間で拡大していくのは時間の問題とみられる。
www.timesofisrael.com/france-sanctions-28-israeli-extremist-settlers-accused-of-attacks/
国民感情は?:ネタニヤフ首相の決断
カイロでの交渉で、ハマスが今の提案を変えないかぎり、イスラエルは、交渉に応じないと言い、強硬にラファへの地上軍侵攻を進めようとするネタニヤフ首相だが、この決断がほぼ独断であった可能性が指摘されている。
この件が、戦時内閣で論議された時、元IDF参謀総長ガンツ氏や、エイセンコット氏らは、交渉を全面的に否定して武力で人質を取り返そうとするより、交渉の方が確率が高いとして、柔軟に賢く作戦を考えてもよいのではないかとの考えを持っていたようである。
ネタニヤフ首相はこれを取り上げず、拒否権状態で、今の交渉には応じないとの対応になったもようである。
これについて、人質家族たちからは、このままラファでの戦闘に入るということは、人質たちにとっては、死刑宣言に等しいとの怒りを発している。
イスラエル支持を表明する政治家も
世界がイスラエル離れをする中、イスラエル支持を強調する政治家もゼロではない。
先週6日、昨年末に就任したアルゼンチンのジャビール・ミレイ大統領が、就任後初の海外訪問として、イスラエルを訪問。嘆きの壁で祈ったほか、10月7日の被災現場も訪問した。
ミレイ大統領は、カトリック家庭の出身だが、カトリックに批判的で、ユダヤ教に改宗する予定だとして、イスラエル訪問時には、ラビを同行させていた。
福音派クリスチャンでもあるポンペオ氏は、「私はイスラエルを、ユダヤ人を支持する。この悪との戦いにおいて必ず勝利すると信じる」と語った。
www.jpost.com/israel-news/article-786832
石のひとりごと
世界諸国が、イスラエルへの非難を表明すると、それが正当化されてしまい、各国ですでにエスカレートしている反ユダヤ主義暴力に拍車をかけることが懸念される。被害に遭わないうちに、ユダヤ人たちは、イスラエルに移住すべき段階にあるかもしれない。
また、国民からの非難を受けながらも、現状から何がイスラエルにとって、進むべき道なのか、本当に難しい決断をするネタニヤフ首相を覚えてとりなしが必要である。
聖書によれば、イスラエルは完璧からほど遠く、多くの失敗を犯して、厳しい国難も経験する。しかし、最終的に主がイスラエルを見捨てることはない。
それを読み取れるのか、今見えている人間的な判断で、イスラエルを非難するだけで終わるのか。世界は、今、イスラエルを起点にふるいにかけられているようにも見える。イスラエル人もまたその対象になっていると感じる。