欧米とアラブ諸国の連合軍 2014.10.1

アメリカ主導のイスラム国への空爆に、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヨルダンなどアラブ諸国の戦闘機も参加している。これを受けて、フランスに続いてイギリス空軍もイラク領内のみという制限付きで参加を決めた。オーストラリア軍機は今日からイラク領内への空爆を開始する。

欧米とアラブ諸国がこのように連合を組むなど、これまでにはありえなかったことである。

連合軍の空爆に助けられ、地上ではクルド軍が、イラク北部でイスラム国とにらみあっている。バグダッドでは、イスラム国が27kmにまで迫っており、危機的状態は変わっていない。

クルド軍は、最新の武器を補給してほしいと訴えているが、欧米はトルコ(クルド人とは宿敵)の手前、クルド人支援はしにくいという現状がある。

シリアでは、北部トルコとの国境コバネ付近への空爆が行われている。地上では、イスラム国が女性3人を含む10人のクルド人を斬首。ホムスの近くでは、学校の近くで発生した爆発で子供10人を含む17人が死亡したとのニュースが入っている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4576720,00.html

<ハマス化する?イスラム国> http://www.reuters.com/article/2014/09/26/us-mideast-crisis-iraq-tactics-idUSKCN0HL1N020140926

連合軍の空爆を受けて、イスラム国が、市民の家屋にも黒の旗をかかげて、どれが本物の拠点かわかりにくいようにしたり、シリアのラカでは地下にもぐったと見られ、地表でイスラム国メンバーを見ることが減ったとロイター通信は伝えている。

時間がたつにつれて、空爆だけでイスラム国を壊滅させることはできないという分析が出始めている。これは、ガザのハマスに対峙したイスラエルがたどった道と同じである。

<怒るシリアの(穏健派)反政府勢力> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4575223,00.html

アメリカは、シリア領内で、イスラム国だけでなく、アルカイダ系ホラサンやアル・ヌスラも攻撃している。これを受けて、益を受けているのがアサド政権とヒズボラで、そのとばっちりを受けているのが欧米が支援しているはずの(穏健派)反政府勢力という構図になった。

当然、アサド政権は自国内での国際社会の空爆を歓迎すると表明。一方、シリアの(穏健派)反政府勢力は「アメリカはなぜアサド政権とヒズボラを攻撃しないのか。イスラム国を倒してもアサド政権や、ヒズボラが生き残るなら意味はない。」と怒りを訴えている。

また、アサド政権とヒズボラが勢力を伸ばすということは、その背後にいるイランが伸びるということも含んでいる。実際、イランが、シリアとイラク領内で、動いているという情報は以前からあった。

仮にイスラム国をシリア・イラクから排除した場合、その後に出てくるのは、イランを中心とするシーア派勢、それを支援しているロシアになる可能性があるということである。

オバマ大統領は、これまでシリアの内戦で生み出されたイスラム国を過小評価していたこと、イラク軍を過大評価していたことを認めた。アメリカはこの戦いが短期で終わらず、年単位に及ぶと想定している。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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