最初の避難民がイスラエルへ到着:ウクライナ国内にまだ4000人? 2022.3.2

モルドバの国境で、活動するイスラエルの医療部隊

イスラエル人4000人国外へ脱出:1人誤射で死亡・1人拘束

戦争が勃発したとき、ウクライナにはまだ8000人のイスラエル人がいたと伝えられていた。外務省によると、2日現在、このうちの4000人が、ウクライナ国外に出ているとのこと。4000人は、ポーランド、ルーマニアからの出発し、1日、1日、ベングリオン空港に到着した。(人数は不明)

帰国した人々は、落ち着けばウクライナに戻ると語っている。

ローマン・ブロドスキーさん

しかし、うまく逃げられた人だけではない。1日、イスラエル人のローマン・ブロドスキーさん(37)が、キエフから脱出する車列に加わって、モルドバへ移動中、検問書で、チェチェンのロシア武装勢力と間違われて、ウクライナ軍に射殺された。

ブロツキーさんは13歳で家族と共にウクライナからイスラエルへ移住したユダヤ人。イスラエルで結婚して2人の子供の父となった後、2年前にウクライナに戻って、キエフでビジネスを立ち上げていた。ウクライナでの紛争で、最初のイスラエル人犠牲者となった。イスラエルにいるブロドスキーさんの両親は、プーチン大統領に怒りを訴えている。

www.timesofisrael.com/israeli-man-shot-dead-as-convoy-escaping-kyiv-comes-under-ukrainian-fire/

またチャンネル24によると、ウクライナ船籍の船に乗っていたユリ・シビツキーさん(51)が、船がロシア海軍に拿捕され、身柄をロシア軍に拘束されていることがわかった。外務省も確認しているとのこと。

www.i24news.tv/en/news/ukraine-conflict/1646070429-diplomat-confirms-israeli-killed-by-gunfire-in-ukraine

国境超えた難民67万人以上:モルドバ国境でイスラエルの支援隊活躍中

ウクライナから脱出した難民は、UNHCRによると、すでに67万人を超えたととのこと。このうち半数はポーランドにいる。そのほかでは、ハンガリーに9万人、モルドバに6万人、スロバキアに5万人、ルーマニアに4万人となっている。すぐに100万人に達するとみられている。

www3.nhk.or.jp/news/html/20220301/k10013508721000.html

イスラエルのユナイテッドハツァラは、ウクライナ危機において、世界で最初に派遣された医療救援隊で、現在、モルドバとウクライナの国境で医療活動を開始している。報告によると、男性がウクライナから出られなくなっているので、ほどんとが、子供連れの女性、高齢者だという。

寒さと食糧も不十分な中、歩いて国境を超えてくるとのこと。

www.timesofisrael.com/they-lost-everything-israeli-medics-treat-ukrainians-amid-chaos-on-moldova-border/

イスラエルは、ウクライナへの空輸による人道支援も開始している。

3月2日時点ウクライナ情勢まとめ

1)戦闘激化の見通し

ロシアのウクライナ侵攻は、24日に始まってから6日目に入った。28日には両者の停戦交渉も行われたが、予想通り、結果は出なかった。そればかりか、ゼレンスキー大統領は、その後、EU加盟申請に署名する様子を発表。ロシアの言い分にまっこうから反対する様子をみせている。

その後、ロシア軍は、ウクライナの予想外の反撃(ウクライナによると死亡したロシア軍兵士は3500人)を受けながらも、キエフ、ハリコフなどこれまで以上の攻撃を開始。情報によると、ロシアは、ウクライナを包囲していた全軍の75%が、侵攻を開始している。市街戦も激しくなり、民間人の犠牲も増えつつある。

ハリコフでは、パラシュート部隊が、カリコフに投じられたとのことで、戦闘がますます本格的になる見通しになってきた。

www.reuters.com/world/europe/ukraine-official-says-about-3500-russian-troops-killed-or-injured-2022-02-26/

キエフでもハリコフにもまだハバッド派ラビたちが、現地に滞在している。ハバッド派は、世界中でユダヤ人をケアすると知られているので、ユダヤ人たちは、困っているユダヤ人たちが集まる拠点となっている。

神戸のラビ・シュムリックさんの兄、ラビ・イエフォシュア・ヴィシェツキーさんは、キエフで、コシェル認証担当で滞在していたが、今は、できるだけ多くのユダヤ人をキエフから退避させるため、バスを手配するなどしているとのこと。しかし、退避ができない人がいる限り、ラビたちは退避しないとのこと。

キエフ、ハリコフなど、激戦下には、教会とともに、このようなシナゴーグもあることを覚えてとりなしを。

www.timesofisrael.com/after-departing-ukraine-kyiv-rabbi-says-hes-working-to-help-those-left-behind/

3)世界を巻き込む流れ:ウクライナが志願兵参戦求める

国連安保理は、ロシアが拒否権を行使して非難決議を出せなかったため、昨日から、緊急国連総会が行われており、本日3日には、ロシアの避難決議が出される見通し。世界は、一斉にプーチン大統領への非難の声を発しており、プーチン大統領は、孤立を極めているといえる。

ビジネスでは、SWIFTからの削除から、これまでに発表されているエネルギー関係以外にも、アップル、ナイキ、フォード、BMWなどが、ロシアとのビジネス停止を表明している。

気になるのは、ウクライナが、世界中からの志願兵を招集している点。ゼレンスキー大統領がこれを呼びかけたのは先月27日。テルアビブでも一瞬ネットに上がったが、すぐ削除された。ロシアに敵対したくないイスラエルとしては、好ましくない動きと思われる。日本でも70人がこれに応じ、ウクライナ大使館に問い合わせてきたという。このうち50人は元自衛隊員。無論、外務省はこれを歓迎していない。

www.jpost.com/international/article-698783

www.asahi.com/articles/ASQ31736KQ31UTIL018.html

4)ウクライナが中国に仲介を依頼

こうした中、1日、ウクライナのクレバ外相が、中国の外相に電話をかけ、ロシアとの仲介を依頼した。中国はロシアとイデオロギーが近く専制主義国で、今となっては、ロシアの唯一の味方(候補)であるかもしれないからである。

しかし、ロシアがここまで孤立してしまうと、ロシアの側に立つことは、中国にとっても不利になるので、返答に困っているとみられている。

www.reuters.com/world/ukraine-asks-china-make-russia-stop-war-foreign-ministry-2022-03-01/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。