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閣議でガザ占領5原則を可決:ザミール参謀総長の警告を却下
8月7日(木)午後6時、イスラエルでは戦時内閣が招集され、残る25%への攻撃を進めて、ガザ全域を占領するべきかどうかを最終的に決める論議を行った。
会議には、内閣閣僚と、ガザ占領に反対を表明しているイスラエル軍のザミール参謀総長、またバハラブ司法長官も出席していた。
バハラブ司法長官は、ネタニヤフ首相の解任を不可能にする司法制度改革案を認めない、いわば政府にとっては敵対者である。先週、政府はバハラブ長官を解雇することで可決していた。
しかし、最高裁はこれを一蹴。バハラブ長官を留任させると発表し、国の一大事を決める重要なこの会議にも出席させたという人である。
Ynetによると、政府は、「ガザ占領の5原則」①ハマスの武装解除、②人質全員の確保、③ガザ非武装化、④イスラエルによるガザの治安管理の維持、⑤文民政権の樹立(ハマスでもパレスチナ自治政府でもない)を提示。
ネタニヤフ首相は、ガザ占領の目的は、ハマスの壊滅と人質の解放であり、イスラエルは戦後のガザに居座るのではなく、ハマスに無関係なアラブの統治勢力に委ねると強調した。

これに対し、イスラエル軍のザミール参謀総長は、この計画ではガザ市民100万人が避難しなければならず、人道問題になるだけでなく、作戦上の問題にもなると警告。その間に、人質が殺されるリスクを訴えて、強力に反対した。
人質へのリスクがあまりにも高いことから、ザミール参謀総長は、5原則から②は取り除くべきではないのかとまで発言したという。
しかし、閣僚たちは、ザミール参謀総長が出している代案、ガザの残りの部分を包囲するだけでは、ハマスを殲滅できず、人質も確保できないと反論した。
論議が行われていた間、エルサレムの首相府の外では、ガザ占領政策に反対する人質家族たち数百人が、デモを行っていた。
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議論は夜中続けられ、8日(金)早朝5時前になって、政府は、最終的に、ネタニヤフ首相が出しているガザ全域を支配下に置く方向で合意したと発表した。
今後のイスラエル軍の作戦を承認する全権は、ネタニヤフ首相とカッツ国防相にあるとされた。カッツ国防相は、軍は政府の決めたことに従うものだと言っていた人物である。
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ネタニヤフ首相のビジョン:IDF5師団・4―5ヶ月で終了するガザ占領作戦
前日に報じられていたところによると、第一段階として、ガザ市全域にいる推定約100万人の市民に避難警告を出して移動してもらう。避難の期限は、2ヶ月後の10月7日とする。
ガザ市民がいなくなったところで、第二段階として、イスラエル軍が戦闘を開始し、地域のハマスを殲滅して、ガザ市をイスラエル軍の支配下に置く。その後、ガザ市にGHF食料配布センターを、現在の4箇所から12箇所へと増やし、ガザ市民が、ハマスを経由せずに物資を受け取れるようになるとしている。
ハッカビー米大使によると、このプロセスが実現すれば、支援物資搬入量が今の4倍になる。このためには、10億ドルが必要になるが、アメリカとその他の国が支援すると言っている。
このプロセスを含め、ガザ全体からハマスを殲滅し、イスラエルが全域を管理下におく、言い換えれば占領を完了するために必要なイスラエル軍は5師団で、4-5ヶ月で終わらせるとしている。
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*ガザの長さは42キロ:東京から八王子、大阪から京都ぐらいの地域
以下は、8日の治安閣議直前に行われた、アメリカのFOXニュースによるネタニヤフ首相へのインタビューの様子 30分以上ある。
ネタニヤフ首相は、ハマスは、イスラエル人に対して大虐殺を行っただけでなく、ガザ市民も苦しめている。モンスターのような存在だと強調した。ネタニヤフ首相によると、ハマスは、イスラエルの警告で逃げようとするガザ市民を銃殺していたという。飢餓に陥れているのもハマスだと言っている。
イスラエルは今、次の3つのこと、①ハマス殲滅、②人質解放、③ガザがイスラエルにとって脅威でなくなること、を達成しなければならない。このためにガザ全域を占領すると語る。
しかし、同時にイスラエルは、ガザ居座る気はないとも強調している。ハマス殲滅が終わったあとは、イスラエルにとって脅威にならないアラブ人組織に、ガザ復興をすすめてもらうと語っている。
インタビューアーから、ガザへの戦闘を進めれば、生きている人質の命があぶなくなるが、それについてはどう考えているのかと聞かれると、優れた軍事作戦と国際社会の圧力があれば、回避できると語っている。軍事的圧力がないと、何も動かないと答えた。
野党議員がガザ占領政策を非難:世代を超える大惨事になる
ガザ占領の方針に可決したのは、内閣の治安閣議、つまり連立内閣の政治家だけである。野党政治家は入っていない。
閣議での上記可決の後、ラピード氏、ガンツ氏、リーバーマン氏など野党議員たちは、「ガザ占領は、人質とイスラエル兵の死亡につながる。さらなる大惨事につながっていく」と強い反対を表明した。
石のひとりごと
戦争を拡大することになったということだが、そもそもそれを実行に移す、現場の軍の総長はそれに反対しているということである。どう考えても、成功するとは考えにくい。
これから、この状況はどうころんでいくのか。本当に先はまったく見えてこない。多くの命がかかっている非常に重要な会議だったと歴史的にも覚えられる会議だろう。
しかし、やるからには勝たねばならない。成功させなければならない。これからを担っていくザミール参謀総長を覚えて、とりなされたし。
