底知れない痛みを共有するイスラエルの人々:ネタニヤフ首相が詩篇94を引用 2025.2.21

The IDF holds a ceremony in the Gaza Strip honoring the four slain Israeli hostages whose bodies are apparently in coffins returned by Hamas, February 20, 2025. The coffins are seen draped in Israeli flags. (IDF)

テルアビブ・人質広場で痛みと苦悩を共有する人々

テルアビブの人質広場では、4人の遺体が運ばれてくる時には、人々はすでに集まっていたが、その中継は。スクリーンに映されていなかった。代わりにビバスさん親子や、オデッドさんの生前の様子が映されていたという。

ビバスさん一家は、イスラエル人たちにとって人質のシンボルのような存在だったので、その影響は非常に大きいようである。

夜になってからは、約1500人が、集まり、追悼イベントが行われた。

人質に赦しを乞うとヘルツォグ大統領:右派議員からはアマレクは消し去れとの声も

4人が遺体となって戻ってくる様子にヘルツォグ大統領は、「苦悩。痛み。言葉がない。私たち国民の心はボロボロになっている。

あの日にあなたを守らなかったこと、無事に家に連れてかえらなかったことを許してほしい。イスラエルの国を代表して、頭を下げて赦しを乞う」とXを通して表明した。*この声明は、4人の中にシリさんがいないことが明らかになる前に出されたもの

www.timesofisrael.com/herzog-asks-forgiveness-coalition-mks-invoke-amalek-as-slain-hostages-handed-over/

右派議員たちからは、「殺人と死の文化を育む社会は存在する権利はない」「天の下からアマレクの記憶を消し去るべきだ」などとの表明が出た。

*アマレク:イスラエルを滅ぼす敵として代々聖書に登場するグループの名前

ネタニヤフ首相が国民に団結呼びかけ:詩篇94編引用で復讐を宣言

ハマスに、人質の死はお前のせいだと指さされたネタニヤフ首相。4人の遺体(4人目がシリさんではないことの確認前)が返還された後、国民に対する声明を発表した。

ネタニヤフ首相は、「今日、イスラエルにいる私たちは、深い喪失の痛みと怒りに打ちのめされている。10月7日に起こったことは二度と起こってはならないと誓う。」と語った。

また、詩篇94:1、2「復讐の神、主よ。復讐の神よ。光を放ってください。」(原語ヘブライ語では“現れてください”)を引用し、

「私たちの心は打ちのめされているが、霊はそうではない。その霊で、人質全員を取り戻し、ハマスを殲滅する。神の助けのもとに一致して、未来を築き上げる。」と締めくくった。

www.timesofisrael.com/remains-idd-of-oded-lifshitz-ariel-and-kfir-bibas-but-other-body-isnt-the-boys-mom-shiri/

以下は聖書の詩篇94編全体。まさに今の状況を表すような内容である。

復讐の神、主よ。復讐の神よ。光を放ってください。地をさばく方よ。立ち上がってください。高ぶる者に報復してください。

主よ。悪者どもはいつまで、いつまで、悪者どもは、勝ち誇るのでしょう。彼らは放言し、横柄に語り、不法を行う者はみな自慢します。

主よ。彼らはあなたの民を打ち砕き、あなたのものである民を悩まします。彼らは、やもめや在留異国人を殺し、みなしごたちを打ち殺します。こうして彼らは言っています。「主は見ることはない。ヤコブの神は気づかない。」

気づけ。民のうちのまぬけ者ども。愚か者ども。おまえらは、いつになったら、わかるのか。耳を植えつけられた方が、お聞きにならないだろうか。目を造られた方が、ご覧にならないだろうか。

国々を戒める方が、お責めにならないだろうか。人に知識を教えるその方が。主は、人の思い計ることがいかにむなしいかを、知っておられる。主よ。なんと幸いなことでしょう。あなたに、戒められ、あなたのみ教えを教えられる、その人は。

わざわいの日に、あなたがその人に平安を賜るからです。その間に、悪者のためには穴が掘られます。まことに、主は、ご自分の民を見放さず、ご自分のものである民を、お見捨てになりません。さばきは再び義に戻り、心の直ぐな人はみな、これに従うでしょう。

だれが、私のために、悪を行う者に向かって立ち上がるのでしょうか。だれが、私のために、不法を行う者に向かって堅く立つのでしょうか。もしも主が私の助けでなかったなら、私のたましいはただちに沈黙のうちに住んだことでしょう。

もしも私が、「私の足はよろけています」と言ったとすれば、主よ、あなたの恵みが私をささえてくださいますように。私のうちで、思い煩いが増すときに、あなたの慰めが、私のたましいを喜ばしてくださいますように。

おきてにしたがって悪をたくらむ破滅の法廷が、あなたを仲間に加えるでしょうか。彼らは、正しい者のいのちを求めて共に集まり、罪に定めて、罪を犯さない人の血を流します。

しかし主は、わがとりでとなり、わが神は、わが避け所の岩となられました。主は彼らの不義をその身に返し、彼らの悪のゆえに、彼らを滅ぼされます。われらの神、主が、彼らを滅ぼされます。

石のひとりごと

この日、イスラエルの友人と話したが、テレビではこの話題ばかりが流れていると言っていた。もう疲れた、の一言だった。

明日22日(土)には、生きている人質6人が解放されることになっている。深すぎる悲しみから喜びへと、甚だしいジェットコースターである。友人は、もう人質は一気に返してほしいと言っていた。

また、最も疲れを覚えるのは、イスラエルが直面することに、世界があまりにも理解がないことだとも言っていた。

遠くにいながらも、彼らと日々向かい合う石もまた、驚きと涙と疲れでいっぱいだ。読者もそうだろうと思う。

ネタニヤフ首相が言うように、主の約束に従い、イスラエルの神、主が、出てきてくださることをお願いするばかりである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。