地獄の経験を語るアロン・オヘルさん 2025.12.3

Surviving hostage Alon Ohel speaks with Channel 12 in an interview aired on December 1, 2025. (Screenshot/Channel 12)

解放された人質たちが、少しずつ、その恐怖の体験を明らかにしている。最後に解放された20人のうちの一人、アロン・オヘルさんが、イスラエルのテレビ(チャンネル12)で衝撃の証言をした。

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アロンさん(当時23歳)は、ノバ音楽フェスティバルでハマスの襲撃を受けていた。この時アロンさんは、ハーシュ・ゴールドバーグさん、アネル・シャピラさんらと、道端のシェルターに駆け込んだ。

アロンさんたちの隠れ場に、ハマスが投げ込んでくる手榴弾を投げ返したのは、シャピラさんだった。

シャピラさんは、手榴弾7個は投げ返したが、8個目が間に合わずに爆発で死亡したアロンさんは、この時、軍は何をしているのかと思ったと語っている。

この時一緒にいた、ハーシュ・ゴールドバーグさんも手榴弾を投げ返そうとしたが、手中にあるうちに爆発し、左腕を失った。家族には後に、その左腕がない姿の映像が送られていた。

アロンさんはこの一連の攻防の中で、破片が目や、胸部などにあたったと考えている。この時、アロンさんは、何があっても絶対に死なないと心に決めたと語っている。

その後、アロンさんは、シャラビさんらとともに拉致された。ガザに着いた時、怒り狂ったガザ市民の群衆が待ち構えていたという。「罪のない傍観者のガザ市民」という表現には、笑いしかないと語る。

その翌日、アロンさんは、麻酔なしで、傷の治療を受けた。それから最初の52日は、エル・シャラビさん、ゴールドバーグ・ポリンさんら4人とともに、地上にいたという。

その後、アロンさんとシャラビさんだけは、別のトンネルに連れて行かれた。その他3人は、2024年8月に別のトンネルの中で処刑され、遺体が発見されたのであった。

アロンさんは、シャラビさんと、あと二人とともに、地下のトンネルで2年近くを過ごした。トンネルの中では、猿のように鎖に繋がれ、監禁されていた間に大半は、意図的な飢餓状態に置かれたという。時に食料が与えられると犬のように食べさせる。もはや動物だったと語っている。

ある時、オヘルさんは、空腹に立腹し、壁を叩きつけた時に、骨が折れたかもしれない痛みに襲われた。この時しっかり抱きしめてくれたのが、エル・シャラビさん(当時53)だった。

は、待っている家族のために生きようと励ましあったという。シャラビさんは、アロンさんにとって父親のような存在になった。

しかし、エル・シャラビさんは、この時、妻も子供二人も殺されていることを知らなかったのである。救出されたあとでそのことを発見したと聞いて、解放後、頑張っていたアロンさんは、精神的に崩れたと語っている。

アロンさんは、人質の間中、イスラエル軍の攻撃を恐れていたと語っている。まるで映画のように、イスラエル軍の銃撃の中、トンネルの中を走って逃げた時もあった。

軍への信頼が薄れる中、アロンさんを支えたのは、ハマスが見せた、テルアビブでのデモに、自分の写真が掲げられていたのを見た時だった。

知らない人までが、自分の解放を願っている様子を見て、絶対に諦めないと自分に言い聞かせたという。

しかし今年1月、父親のように頼りにしていたシャラビさんが、先に解放され、アロンさんはトンネルの中で、たった一人になった。シャラビさんは、この時、アロンさんがしがみついて、離れなかったと語っている。

*以下はエリ・シャラビさんの証言

mtolive.net/人質が直面していた地獄:元人質エリ・シャラビ/

人質の最後の一人になるかもしれないという絶望に襲われたが、それ以降、食料には困らなくなったという。解放されるシャラビさんの痩せこけた様子が批判を受けたことから、ハマスが方向転換したのである。

シャワーも浴びるようになったが、このころから、管理者がアロンさんの全身を触るという性的な嫌がらせを受けたという。

さらにはその後、人間の盾として、ガザ北部へ移動させられ、家族に手紙を書かされた。それから急速に交渉は進み、解放へと進んだのであった。

www.timesofisrael.com/no-matter-what-i-choose-life-alon-ohel-shares-how-he-survived-2-years-in-gaza-captivity/

石のひとりごと

名前は思い出せないのだが、別の人質は、手錠をかけられたが、担当のハマスが鍵をなくして、外せなくなった。

そのため、とうとう、お前の手を切るしかないと言われたという。死んだ方がましだと思った瞬間、別のハマスが鍵を持ってきて、その難は逃れたという証言もあった。

2年半におよぶ人質の地獄の経験は、アロンさんも言っているように、経験したものでなければ想像もつかないだろう。このようなハマスを支持する世界の人々は、こういうハマスのリアルを知っているのだろうかと思う。解放された人質たちの今後の人生を思うと、若い人が多いので、長いバトルになりそうである。

家族全員を殺されてなお、新たな人生を歩んでいるエリ・シャラビさんの生き方が、彼らの模範になるだろうかとも期待する。

しかし、やはり最終的な解放は、古い人生から全く新しい人生に導く福音だと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。