11月17日(月)、国連安保理では、トランプ大統領の20項目からなるガザ和平案を承認するかどうかで、採択をとった。結果、理事国15か国中、ロシアと中国は棄権し、残り13か国すべてが賛成票を投じたことから、可決となった。
これにより、まずは、ISF(国際安定化軍)が、2年間の予定でガザに派遣されることになる。安保理で決定されたことなので、実行する義務が発生する。
しかし、ISFが、国連による部隊ではなく、アメリカが主体になるので、イスラム諸国が果たしてそれにどこまで応じるのかなど、いざ、実現しようとする今、混乱が湧き出はじめている。
特に、ISFには、ハマスの武装解除も使命の一つに含まれてはいるが、ISFには、ハマスの支援者であるトルコやカタールも含まれる予定で、はたして、それ実行するのかどうかは、きわめて不透明である。
安保理の決定が出ると、イスラエルのダノン国連大使は、「私たちが人質を取り戻すことにコミットしているように、ハマスの武装解除は、必ず成し遂げる。ハマスがイスラエルにとって危機にならなくなるまでやめない」との声明を出した。
イスラエル国内からは、野党イスラエル我が家党のリーバーマン氏が、安保理でトランプ案が可決されたことにより、パレスチナ国家への道を開くことになったと指摘した。
またサウジアラビアにこの案に同意してもらうために、トランプ大統領が、民間レベルの原子力関連協力に合意することや、F35戦闘機を販売することになるみこみになってうることを指摘。F35については、トルコにも販売される見込みで、イスラエルの治安を大きく脅かすことになったと警鐘を鳴らした。
また、「中東が、大きく変わったと言えるが、それは、イスラエルにとってよいものだはない。結果的に、政府は最悪の事態をもたらしたのだ」と非難した。
パレスチナ人たちの間でも、自治政府とハマスが、全く違う考えを表明した。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は。国連安保理の決定を賞賛し、「これから、アメリカ、EU、イスラム諸国とも協力して、ガザ、西岸地区、東エルサレムのパレスチナ人の苦しみを終わらせる。国際法に基づいて、2国家共存を元に、パレスチナ人とイスラエル人の治安と平和への政治的道のりを構築する」と表明した。
また、「パレスチナ人たちの、正当で包括的な方法で、パレスチナ人の占領を終わらせ、自由と独立を獲得する努力」を支えてくれたすべての国に感謝するとも述べた。すでに、パレスチナ国家が立ち上がるかのような言い方である。
一方、ハマスは、これとは正反対に、「国際社会は、ガザのパレスチナ人が反対しているにも関わらず、そこに国際安定化軍を駐留させて、組織を非武装化し、占領者(イスラエル)に有利な組織にガザを管理させようとしている。この決議は、パレスチナ人の権利と要求が満たすものではない」と反発。絶対に非武装化はしないと断言した。
また、「権利を取り戻すために、あらゆる方法で、占領に抵抗する権利はあるはずだ」と述べ、イスラエルとは、戦い続けると表明した。
どうにも解決とは程遠いように見えるが、トランプ大統領は、「ガザにとどまらず、世界平和にも通じることになる」と、この結果を賞賛する声明を出した。
ネタニヤフ首相は、18日午後になってから、この決定を賞賛する声明を出した。
石のひとりごと
この問題について、イスラエル治安研究所、MIND Israelのオハッド・メルリン氏は、ブリーフィングにおいて、トランプ大統領の20項目について、あまりにも大雑把であり、実現できるのかどうかだと苦笑していた。
確かに、たとえば、パレスチナ自治政府が、ガザ管理に加わる条件として、汚職にまみれて混乱する自治政府の改革をするとなっているが、具体的にどうなったら改革と認めるのかといったつきつめた定義が欠落しているのである。
リーバーマン氏が指摘しているように、このゴチャゴチャの中で、いつのまにか、イスラエルがより危機的な状況になっていく可能性は否定できない。主のイスラエルへの特別な守りだけが、頼りである。
