政府混乱: ハマスと交渉に反対する右派議員・野党でも政府の交渉継続を支持する左派議員 2024.7.13

(AMIR COHEN/REUTERS)

政府与党・野党の意見混乱

イスラエル政府の内部では混乱が続いている。先月、有力野党のガンツらイスラエル軍関係者が、戦時内閣を離脱し、今、与党政府にいるのは、ネタニヤフ首相のリクードと、極右を含む右派政党、ユダヤ教政党と、なんともどっちつかずのギャラント防衛相である。

1)与党の極右・右派勢力

Photo credit: REUTERS/Amir Cohen/Pool

極右のベングビル氏や、宗教シオニストのスモトリッチ氏らは、与党ながら、ネタニヤフ首相が継続しているハマスとの交渉に反対しており、さっさと交渉はやめて、戦闘を続けることを要求している。

このためにも、ネタニヤフ首相は、ある程度、ハマスに対して強気姿勢を見せなければならないのである。

一方、ガンツ氏や、野党ラピード氏たちは、政府からすれば野党だが、ハマスとの交渉を続けようとするネタニヤフ首相を支持すると表明した。

2)野党・軍・左派勢力

(photo credit: ELAD MALKA/DEFENSE MINISTRY)

ガンツ氏、また、イスラエル軍のハガリ報道官も、ハマスは概念であり、完全

な殲滅は無理であること、またとりあえずガザからハマスを追放することについても、少なくとも5年はかかるといった見方を表明している。

釈放された人質や、まだガザにいるとみられる人質の家族やその支援者は、ほぼ毎週、テルアビブ、エルサレムはじめ全国で、戦闘ではなく、交渉でとりあえずは、人質を取り返すことを求めるデモを行ってきた。

強硬姿勢を崩さず、人質奪回を事実上、後回しにするネタニヤフ首相への反発を強めている。

この人々の要求は、最近では、人質解放だけでなく、ネタニヤフ首相の辞任も求めるようになっている。

ハマスとの交渉が、今回も危機的状況にある中、現在、テルアビブからエルサレムに向けたマーチングのデモが行われており、本日土曜、エルサレムに到着して、安息日明けに大規模なデモがエルサレムで行われることになっている。

www.timesofisrael.com/major-rallies-expected-saturday-evening-demanding-gaza-hostage-deal/

ネタニヤフ首相退陣求める世論72%:10月7日の責任

ネタニヤフ首相とハレヴィ参謀総長
Amos Ben-Gershom (GPO)

現時点では、強気姿勢を崩さない、ネタニヤフ首相の支持率は低下を続けており、チャンネル12によると、国民の72%が、ネタニヤフ首相は、10月7日の失策の責任をとって辞職すべきだと答えていた。

このうち、44%は、今すぐに辞任すべきと答え、28%は戦争が終わってからと答えていた。

ネタニヤフ政権を支持している人の間でも、50%は戦後には辞任すべきだと答えており、ネタニヤフ首相が任期終了まで首相を続けるべきと答えた人は42%と半数を割っていた。

10月7日の失策について、国民の間で最も責任が大きいのは、ネタニヤフ首相だと答えた人は39%、次に、元イスラエル軍情報局主任ハリバ氏、次がハレヴィIDF参謀総長、シンベトのバル長官、最後にギャラント防衛相となっている。

ネタニヤフ首相以外は、全員責任を認める声明を出しているが、ネタニヤフ首相だけは、まだ、はっきりと責任を認める声明を出していない。しかし、戦争が落ち着いた時、最も苦しい立場に立つのはネタニヤフ首相であることは、明らかである。

ネタニヤフ首相が、ハマスやヒズボラに対して、強気姿勢を崩さないのは、戦争をできるだけ長引かせて、その後の糾弾を、できるだけ避けるためではないかと、国内外で言われるようになっている。

石のひとりごと

イスラエル人の知人友人の話を聞くと、右派左派にかかわらず、皆政府にうんざりしていると言っていた。だからといって、どうなればいいのかもわからず、市民たちは、戦争とその影響の中で、日々を生きているという感じである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。