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ニューヨークの新しいマムダニ市長は反イスラエルのイスラム教徒
ニューヨーク市では、11月4日(月)、市長選挙が行われた。11月5日、開票の結果、候補者3人のうち、民主党で極左とも評され、反イスラエルの立場を表明している、イスラム教徒の、ゾーラン・マムダニ氏(34)が、103万票(50.4%)を獲得し、当選が確実となった。
マムダニ氏は、初の南アジア系で生まれはアフリカ系、さらには、34歳と、100年ぶりの最年少市長である。
マムダニ市は、勝利演説において、「ユダヤ系ニューヨーカーと共に立って、反ユダヤ主義と戦う」と表明。同時に、「この町は、100万人以上のイスラム教徒が、自分の町だと思える場所になる。5地区のことに限らず、影響力においてもそうなる。イスラム教恐怖を煽って選挙に勝つ時代は終わった」と述べた。
このコメントからもわかるように、反ユダヤ主義と戦うとはいえ、反シオニズム、反イスラエルのイスラム教の立場なので、ダブルスタンダードだとも言われている。
マムダニ氏は、2023年5月に、ニューヨーク州議員であった時に、可決にはならなかったが、ヨルダン川西岸地区入植地への支援金を禁止する法案、「イスラエル入植者暴力へのニューヨーク資金援助法案」を出していた。
この流れで、親パレスチナのデモをする人々や、ユダヤ人でもイスラエルの存在に疑問を持つ人々は、マムダニ氏に投票する傾向にあったことから、選挙前から支持率が高くなる傾向にあった。
しかし、皮肉にもニューヨーク市は、特にユダヤ人が多い町である。そのニューヨーク市で、イスラム教徒が市長になったということである。
*ニューヨーク市のユダヤ人とイスラム教徒の人口2025(Wikipedia)

ニューヨーク市(5地区)に住むユダヤ人は96万人から100万人で、世界最大のユダヤ人コミュニティがある。その半分近くはブルックリンに住んでいる。ニューヨーク市人口(825万人)の12%はユダヤ人である。
一方イスラム教徒は75万人で9%。アメリカ在住のイスラム教徒の22.3%がニューヨーク市在住である。
マムダニ氏が市長になる可能性が高まっていたことに危機感を持ったニューヨーク市のラビ・エリオット・コスグローブは、選挙前に、会衆にマムダニ氏に投票しないよう呼びかけた他、国内のラビに、マムダニ氏が市長になることに反対する文書に署名するよう要請を出した。
10月31日(金)までに、署名は1000を超えていた。ラビたちの間で集まった署名数では史上最大を記録した。
しかし、これについては、自分のラビが署名したかどうかで、会衆の間で不安が広がったことや、政教分離の原則や、民主主義の原則を打ち出して、この動きに反対するラビのあり、混乱にもなっていた。
選挙前日、トランプ大統領は、無所属中道派で、元ニューヨーク州知事も務めた、アンドリュー・クオモ候補(67)を支持すると表明。自身のプラットフォームで、もしマムダニ氏が選出されたら、ニューヨーク州への連邦資金を停止するとの警告も出していた。
しかし、結局、マムダニ氏の得票が最多数となり、次期ニューヨーク市長になることが決定したわけである。
ニューヨークのイスラム教徒たち「今こそ私たちの時」と大歓声

NYTによると、マムダニ市の当選が決まった時、クイーンズ州のイエメン系の大型テレビがあるカフェでは、イスラム教徒たちが、何百人も集まり、英語や、バングラ語、アラビア語で、「私たちの時が来た!」と大歓声を上げていたとのこと。
市内のイスラム教指導者たちは、マムダニ氏の当選で、今後、イスラム教徒たちに政治の参画が拡大すると予想すると語っているとのこと。
www.nytimes.com/2025/11/05/us/muslim-new-yorkers-mamdani.html
ニューヨークのユダヤ人はイスラエル移住を急ぐべき:チクリ・ディアスポラ担当大臣

マムダニ氏の当選を受けて、イスラエルのディアスポラ(海外にいるユダヤ人)担当大臣のアミハイ・チクリ氏は、マムダニ氏は、ハマス支持者だと述べ、ニューヨークのユダヤ人は、イスラエルに移住を急ぐべきだと表明した。
チクリ大臣は、ニューヨーク市がマムダニ市を市長に選んだことは、市が今深刻な転換期を迎えたことになると警告する。
それは今始まったことではなく、徐々に始まっていたとチクリ氏は次のように語っている。
「ニューヨーク市は、19世紀の間、数えきれないユダヤ難民を受け入れ、成功への機会を見つけるための自由を与えた町だった。だから今、ニューヨークに、イスラエルの外では、最大のユダヤ人コミュニティが存在している。
しかし、その後、カタールの金に支配された、ニューヨークの州立大学で反シオニズムの流れが広がり、特にコロンビア大学は、アメリカのハマス支持者の強力な拠点となった。
ニューヨークが、もう前のニューヨーク、特にユダヤ人にとってのニューヨークに戻ることはない。ニューヨークは今、真っ直ぐに目を開いた状態で、「何も心配はない」と言っている、ロンドンが陥った闇(イスラム勢力に支配されつつある)に向かっている。大丈夫なことは何もない。」
チクリ大臣は、ニューヨークにいるユダヤ人は、イスラエルに自宅を持つことを真剣に考えるべきだとコメントをしめくくった。
石のひとりごと
これは本当に驚きの事態だ。ニューヨーク市は、ユダヤ人人口が多く、ユダヤ色があちこちにある町である。コシェルを守れる大きなユダヤ系の大学病院もある。
ニューヨークのユダヤ人は、主には白人系のアシュケナジーで、ユダヤ教最大の派閥ハバッド派の拠点もここにある。
そのニューヨークの市長が、なんと、全く共通点がない、アジア系アフリカ系のイスラム教徒である。これからどうなるのか。時代の大きな動きの実感と、危機感も感じる。
特にユダヤ人には、危機の始まりかもしれない。特に、イスラエルを支持するユダヤ人と支持しないユダヤ人の振り分けの時になるだろう。
しかし、こういう時だからこそ、イスラエルの背後におられる主の御手が、よりはっきり表れてくることにもなっていくはずである。
これからどうなっていくのか、ユダヤ人社会に注目しながらお伝えしていこうと思う。
