反戦争・反ネタニヤフ政権の市民デモ・テルアビブに4万人以上 2025.3.19

Protesters demand the release of hostages held in the Gaza Strip, in Tel Aviv, Israel, Tuesday, March 18, 2025. (AP Photo/Ariel Schalit)

イスラエル国内で反戦争・反政府デモ

ガザでの戦争が再開になる中、イスラエル国内では、人質解放よりハマス打倒を優先する政府に反対するデモと、ますます強硬な右派政権になっていくネタニヤフ政権に反発するデモが大規模に発生している。

1)戦争反対のデモ

ガザへの攻撃が再開となった3月18日(火)の夜、テルアビブでは、妻子を殺された元人質のヤルダン・ビバスさんを含む、人質に関係する家族たち、元人質たちを中心に、政府にガザにいる人質を見捨てないでほしいと訴えるデモが行われた。

解放された人質たちは、先に解放されたものの、まだ背後にいる人質たちのことを思うと、耐えられない日々を送っている。

www.timesofisrael.com/not-just-posters-freed-hostages-beg-for-return-to-talks-to-save-those-left-behind/

2)反政府・反ネタニヤフ首相デモ;極右政治家ベン・グヴィル氏政権復帰に反発も

この他、反政府、反ネタニヤフ首相に重点をおいたデモも行われた。テルアビブのハビマ通りでは、4万人以上の群衆がこのデモのために集まっていた。昨年9月以来最大とみられている。

群衆は、急速に強硬右派になっていく政府に対し、「独裁を止めるときだ」などと叫んでいる。

先月、イスラエル軍のハレヴィ参謀総長が、10月7日の責任をとって自ら退陣を表明。より強硬なザミール参謀総長が就任した。

また、右派とは時に対立する、国内諜報局シンベトのロネン・バル長官は、責任を認めながらも、問題が解決するまでは役職に留まる形で責任を負うと発表している。

しかし、ネタニヤフ首相は今、バル長官も退陣させる手続きに入っている。群衆はこれに激しく反発している。

また最もスキャンダラスな動きは、ハマスとの交渉に反発して、政権を離脱していた、極右政党のベン・グヴィル氏が、政府がガザへの攻撃に方向転換したことを受けて、政権復帰したことである。

www.jpost.com/breaking-news/article-846556

特にテルアビブ市民たちは、左派的な考えの人が多いので、こうした状況に危機感を募らせているようである。

3)エルサレムでも反政府デモ

こうしたデモはエルサレムでも発生している。17日(月)、シンベトのロネン・バル長官の解任に反対するデモが発生。

最新ニュースで、本日19日(水)、イスラエルの旗を掲げる群衆が、国道1号線で、反ネタニヤフ政権のデモを行なっており、エルサレムへの入り口を塞いでいるもようである。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/thousands-march-to-protest-government-blocking-entrance-to-jerusalem/

以下はエルサレムのネタニヤフ首相府前でのデモの中継

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/thousands-march-to-protest-government-blocking-entrance-to-jerusalem/

イスラエルの今の課題について/アモス・ヤディン元IDF軍事情報局長

アモス・ヤディン氏は、元イスラエル軍の将軍で、今も国家安全保障に関わる専門家である。ヤディン氏が、3月18日、記者に対して今起こっていることの解説を行った。

国内で、大規模なデモが発生している中、ヤディン氏は、ネタニヤフ首相が内政の危機をそらすために、ガザへの攻撃を開始し、それに乗じて、政府をより右派的な政府にしようとしているという見方があることを認めていた。

ハマスとの交渉において、合意したところによると、双方は、停戦開始から16日目に、第二段階の協議を始めることになっていた。ところが、第二段階ではイスラエルが完全撤退することが含まれていたこともあり、ネタニヤフ首相は、この協議の開始を拒否したのであった。

ネタニヤフ首相には、結局、交渉による解決ではなく、ハマスを殲滅する、戦闘による解決に導こうとする思いが、その方針から見え隠れしているということである。デモに参加している人々はそれに反発しているのである。

イスラエル人の多くは、ハマス殲滅に反対派していない。しかし、とにかくまずは人質を全員解放することが先であり、それ以外はその次以降だと考えているとヤディン氏は語る。。

しかし、同時に、ヤディン氏は、「相手は、テロ組織なので、交渉中の停戦は良い考えではない。ネタニヤフ首相が言うように、交渉中も戦いを止めないことは重要だ」とも語る。

戦闘が始まった今、ヤディン氏は、これからどうなるかについては、懸念を表明する。イスラエルが抱える問題は3つ。

一つは、まずガザに人質がいるということ。もし人質がいなければ、イスラエル軍にとって、ハマスを殲滅することは問題ではない。しかし、人質がいる以上、常にフルでは戦えない。人質解放は、これからも常に最優先事項でなければならないのである。

次なる問題は、ハマスの地下トンネルは、想像を絶する要塞だということ。その長さは100キロに及び、その中で、長く生き延びるための必需品やエネルギーもかなり蓄えられているとみられている。これを全部どう破壊するのか。また、すべての破壊には、そうとう長い時間を要すると予想される。

次にガザ市民と戦闘員を区別することが不可能に近いと言うこと。これらが、イスラエル軍の手足を縛り付けるため、戦闘がどう終わるのかが見えないというのである。

そうした中で、イエメンのフーシ派とその背後にいるイラン、アメリカも関わっている今、中東は、これまで以上に危険な様相になっていると語った。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。