イラクでの混乱については日本でも報道されていることと思うが、相当な混乱になりつつあるので、注目ととりなしが必要になってきているため、解説する。
まとめて言えば、アルカイダ系のスンニ派イスラム過激派(ISIS)が、第一次世界大戦後、大国によって作り上げられた、中東の地図を塗り替え、新しく、シリア、イラク、イランなどをまとめあげる大イスラム主義帝国をめざしてと立ち上がったということである。
<モスルで武器と大金を入手したISIS>
アルカイダ系スンニ派らは、12日にイラク第二の都市モスルを制圧。米軍がイラク軍に支援した武器を押収しただけでなく、モスルの銀行から、42500万ドル(425億円)を入手した。これにより、ISISは今や世界一リッチなテロ組織になった。
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その後、ニネベやティクリートなどイラク北部の都市を制圧し、主都バグダッドまであと80キロにまでせまっている。
これをシーア派イスラムがだまっていみているはずがない。バグダッドでは、シーア派指導者らが、スンニ派の暴徒から主都を守るために立ち上がれと呼びかけ、男性たちが次々に戦闘準備を始めているもようである。
<非常にややこしい対抗勢力>
こうしたISISの動きに対して、イラクのマリキ政権(シーア派)はどうすることもできないでいる。
そのため、シーア派の様々なグループが援軍に向かっているのだが、通常は敵対している国や組織が、同じ敵に対する戦いを考えなければならないという図式になっている。
とはいえ、「昨日の敵は今日の友」にはなることはない。つまりは、いろいろなものが協力することなくばらばらに入って混乱、カオス状態になりつつあるということである。
まずは、戦闘地域に一番近いクルド人自治区。クルド人たちは武装してISISとの戦闘を繰り広げている。これと平行し、通常はクルド人と敵対するトルコが、ISISにトルコ人を誘拐されとして対策を講じているところである。
次にシーア派といえば、イラン、ヒズボラである。イランはすでに援軍をイラクに派遣している。イランとヒズボラに助けられているシリアのアサド大統領までが、イラク政府への支援を申し出ている。
これと平行して通常は、イランやヒズボラと敵対する国際社会が、動き始めている。現在、ISISが制圧したエリアは、重要な石油施設のあるところである。シリアに続いてイラクもまた内戦になるようなことになれば、アメリカと世界の利益を大きく損なう事態になる。
オバマ大統領は、軍事介入の可能性を示唆している。しかし今のところ、ドローン(無人戦闘機)による空爆などが限度のようでもあり、オバマ大統領が、今回どのように動くのか、世界は若干、冷たい目でオバマ大統領を見ているようである。
<現地でおこっていること>
国連難民機関によると、これまでにわかっているだけで、イラク軍兵士12人、一般市民17人が殺害されたとみられる。女性に対する集団レイプも発生しており、4人の女性が被害にあったあと自殺したと伝えられている。
先にモスルからクルド自治区へ避難した50万人に加えて、30万人(計80万人)がイラクを脱出。クルド自治区では、すでにシリア難民があふれており、まもなく難民を受け入れられない状態になるという。
難民の多くはテントに一時避難しているが、日中は気温が非常に高くなる地域でもあるため、難民の健康状態に問題が発生するのは時間の問題。難民の間で情報が混乱しており、モスルへ帰る人も出ているという。それぞれが決意しなければならない状態である。
<イスラエルとの関連>
イスラエルでは、イラクでの混乱はあまり報じられていない。万が一に備えての防衛準備は行われているが、イスラム同士で戦っている間に、イスラエルには十分準備する時間があると考えられている。