南レバノン国境のヒズボラ本格拠点摘発破壊・イスラエルはUNIFIL撤退要請:世界はイスラエル非難 2024.10.15

Spanish peacekeepers of the United Nations Interim Force in Lebanon (UNIFIL) coordinate their patrol with the Lebanese Military Police, in Marjayoun in south Lebanon on October 8, 2024. (AFP)

ヒズボラの執念・本格的なイスラエル攻撃準備の様相を摘発・破壊

イスラエル地上軍が国境を超えて南レバノンに進軍してから2週間。先週からはさらに予備役兵からなる援軍2部隊からなる第164師団がヒズボラ拠点の摘発を行なっている。

164師団の部隊は、これまでに、険しい山岳地帯に要塞化されたヒズボラ司令センター60カ所以上、それに続く地下トンネル、ロケット弾発射施設50カ所以上を破壊した。

ヒズボラ関連地説の中には、地上の建物の地下に50平方メートルもの広さのある基地(居住施設と大量の武器)とそれに通じる7メートルの竪穴があった。そこにいたヒズボラが出てきて逮捕する様子も伝えられている。

www.timesofisrael.com/four-soldiers-killed-seven-seriously-hurt-in-hezbollah-drone-strike-on-military-base/

国境から500m離れたところには、地下に120メートルに及ぶ電気と換気のシステムを兼ね備えた施設があり、武器が多数蓄積されていた。このトンネルは以前にからその存在はわかっていたもので、今それを破壊したということである。

また、ヒズボラ侵入予防のため、イスラエルが、建設していた防護壁(高さ14m)の地下では、この壁を破壊するためとみられる爆弾が多数発見され、ヒズボラがこれらの施設を何年もかけて設立し、いよいよ、イスラエルへの侵攻を開始する日が近づいていた様相である。

しかし、これらの作業においては、罠や爆弾を処理しながらになる上、ヒズボラ戦闘員との銃撃戦にもなる。

過去1週間の間に、イスラエル軍は、ヒズボラ戦闘員との直接の銃撃戦を通して、ヒズボラ戦闘員約100人以上を無力化した。イスラエル軍によると、地上戦が始まって以来のヒズボラ戦闘員の死者数は450人となっている。

www.ynetnews.com/article/sjuem9fj1g#autoplay

また激しい空爆で、ナバティアなどレバノン南部では、激しい破壊の跡が、ガザのようになっているところもある。

UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)との衝突で国際社会はイスラエル非難

南レバノン国境地帯には、UNIFILがいる。先週、イスラエル軍のヒズボラへの攻撃で、UNIFIL隊員2人が負傷。これまでに負傷者は5人となった。

UNIFILは、イスラエル軍が故意に攻撃したと非難した。また、イスラエル軍戦車がUNIFIL基地地域に入った(地域に戦闘を持ち込んだ)として、イスラエルを非難した。

すると、UNIFILに隊員を派遣している40カ国が、いっせいにイスラエルを非難している。

これについては、アメリカも、イスラエルがUNIFILを攻撃したとして、深い懸念を表明するとしている。

しかし、Ynetによると、UNIFILの駐屯地からわずか10メートルのところにもトンネルが発見されていた。また、UNIFIL基地内に入ったイスラエル軍の戦車は、そこで負傷したイスラエル兵2人を救出しに入ったとのことである。

また、この時、イスラエル軍の戦車から、UNIFILに直ちに電気を消すよう警告が出され、その約2時間後には、そこから100メートルの地点に砲撃があった。イスラエル軍は、UNIFILへの攻撃を防いだ可能性もある。しかし、これについても、UNIFILは、イスラエル軍を非難している。

要するに、UNIFIL地帯とはいえ、現場は、すでに戦場になっておいるのであり、UNIFILへの攻撃が、イスラエルかヒズボラかどちらの攻撃かわからないほどの事態になっているということである。

www.timesofisrael.com/netanyahu-un-must-withdraw-south-lebanon-peacekeepers-from-combat-zones/

イスラエルは、これまでからも、UNIFILにこの現状を伝えて、南レバノンから撤退するよう要請してきたが、UNIFILはこれに応じようとしていない。

イスラエルはUNIFIL近くにあるトンネルを公開

このため、ネタニヤフ首相は、13日(日)、国連の事務総長に対し、ヒズボラがUNIFILを人間の盾にしているとして、イスラエル軍が、現在戦っている南レバノンにいるUNIFIL部隊を一時的に撤退させるよう要請する声明を出した。

また、イスラエル軍は、南レバノン国境のUNIFIL地点の近くから、イスラエル領内に続くトンネルを国際メディアに公開した。

そのトンネルには、ヒズボラがイスラエルの空爆から逃れて、中で待機するためのさまざまな必需品や、水、インターネットシステムがあった。

イスラエルは、UNIFILにこれほど近いところで、ヒズボラがこれほどのシステムを設立しているのをなぜ気が付かなかったのかと逆に非難の声をあげている。

いろいろもめているが、ガラント防衛相は、13日、レバノン国境沿いを視察し、イスラエルはこの地域にヒズボラの存在を受け入れない。完全に排除するまで戦闘は継続すると述べた。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。