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北部国境で、ここしばらくヒズボラとの危険きわまりない、せめぎ合いが続き、6月下旬からエスカレートして、再びレバノン戦争になる可能性が懸念されている。
レバノンのヒズボラは、イスラエルに向けてミサイルを15万発準備完了しているとみられており、もし戦争になった場合は、かなり大きな戦闘になる可能性もある。
ブルーラインをめぐるヒズボラとのせめぎ合い
イスラエルとレバノンは、2006年の第二次レバノン戦争の後、国連決議1701が定めた“ブルーライン”を維持することで、衝突をさける形になっている。
イスラエルはこのブルーラインに沿って、防衛目的の分離壁を設置したが、老朽化してきたことを受けて、2018年から新しいフェンスに設置工事が始まっていた。
しかし、工事が始まると、レバノンが、イスラエルがレバノン側にはみ出した工事を行っていると国連に苦情を出し、UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)が介入して、イスラエルの工事にブレーキをかけた。
また、ブルーラインのレバノン側には、ヒズボラが多数の拠点を設営したことから、イスラエル軍との小さな衝突も時々発生するようになり、工事はさらに遅れをとるようになった。2018年からこれまでに完成した防護壁は、130キロ予定中、15キロのみとのこと。
こうした中、6月後半、ブルーライン南部、イスラエル領内側に、ヒズボラが、2つのテントを設営するという暴挙に出た。場所は、イスラエルはドブ山と呼び、レバノンは、シェバ農場と呼ぶ地域で、かつて、イスラエルとレバノン、シリア三国が所有を主張して、戦闘が繰り返されてきた地域である。
イスラエルは、国連に、2つのテントを撤去させるよう、要請を出した。ヒズボラのナスララ党首は、UNIFILがその地域に駐留することを条件に1つは撤去したが、もう一つについては、イスラエルが、ブルーラインで、2つに分割されている村、ガジャールから撤退することを要求した。
ガジャールはかつてはシリア領であったが、その後の戦争でイスラエル領に入ることになった。しかし、ブルーラインはこの村を分割するような形で引かれる形とされた。
人口は約3000人で、多くはイスラエル国籍を持ち、イスラエル領内で働く人も少なくない。住民の本音は、イスラエルに撤退してほしくないと思っているようではあるが、自分はシリア人だとの認識でもあり、複雑なようである。
第二次レバノン戦争から17年を機に緊張エスカレート
ブルーラインをめぐって、イスラエルとヒズボラの関係が緊張する中、先週6日、レバノン側から、ガジャールにむけて、対戦車砲が15発撃ち込まれた。
爆発は国境フェンス近くであったことから負傷者はなかったが、イスラエル軍は、発射地点への反撃砲撃を実施した。レバノン政府によると、この砲撃でヒズボラのメンバー3人が負傷していた。
www.timesofisrael.com/idf-rocket-fired-from-lebanon-explodes-near-border-artillery-returning-fire/
また先週には、ヒズボラのメンバー30人ほどが、一時イスラエル側に侵入し、20分程度とどまったあと、レバノン側へ戻ったという事件もあった。イスラエルは、UNIFILに対し、これらに対応するよう、要請を出した。
これに対し、レバノンは、イスラエルは、国境を超えて、ドローンを飛ばしていると訴えている。レバノンは先月、イスラエルのドローンを撃墜していた。
www.timesofisrael.com/idf-says-drone-fell-over-lebanon-hezbollah-claims-it-shot-it-down/
最新のニュースでは、15日、レバノンが、国会議員を含むジャーナリストら18人をこの危険な地域を取材させた。グループは一時、イスラエル側80メートルまで侵入したため、イスラエル軍が暴徒対処をとって、追い出したとのこと。
עוד ביום בגבול ישראל – לבנון. כך זה נראה ממצלמת כתב הערוץ הלבנוני אל-ג'דיד t.co/CQV5pCgO0j pic.twitter.com/0YEKG9N4vR
— roi kais • روعي كايس • רועי קייס (@kaisos1987) July 15, 2023
イスラエルの忍耐はいつまでつづく?
こうした嫌がらせ的な行為が、今なぜ繰り返されているのかだが、イスラエルは、今、西岸地区、ガザ地区、北部レバノン国境を3方向から同時に攻撃される可能性に直面しているということである。それら全方向を支援しているのがイランである。
イスラエルは、西岸地区ジェニンの件で、パレスチナ人との対立に直面している今、北部ヒズボラとの戦闘にも同時にまきこまれかねない状況に立たされているということである。
イスラエルは、ヒズボラとの戦闘は避けたいと考えているため、今はまだ、国連を通して外交的に解決したいと努力している。
しかし、ジェニンと同様、今後、イスラエルがどこまで忍耐しつづけられるかどうかである。
いつか、ジェニンにように、ヒズボラにも大規模な攻撃を行い、イスラエルへの挑発はやめるよう、痛みでわからせようとするかもしれない。
相変わらず、イスラエルをとりかこむ緊張は、休む間もなしである。