北部もガザも戦闘終わる気配なし:イスラエル軍また2人戦死 2024.7.1

IDF

北部情勢:イランが補給を促進か

ヒズボラとの全面戦争が懸念される中、7月30日、ゴラン高原のメロム山のイスラエル軍施設に、爆発物を搭載したドローンが着弾。イスラエル兵18人が負傷し、1人が重傷となった。イスラエルは反撃を行なっている。

Yネットは、イランがヒズボラへの補給を加速させていると報じている。

www.ynetnews.com/article/sjm27gjpc

ガザ情勢:北部シャザイヤでは激戦で3人戦死

イスラエル軍は、先週木曜27日から、ガザ市シャザイヤ地区での戦闘に力を入れている。ここは、ガザでの地上戦が開始された地域である。一旦ハマスを排除したとみられていたが、ここでまたハマスが再建を始めていることがわかったからである。

ここでも、以前には見落としていた地下トンネルやロケット弾関係を破壊しながら、新たな情報からさらに奥地の拠点を破壊している。各地に罠が仕掛けられている中、激しいハマス戦闘員との銃撃戦になっており、これまでにハマス戦闘員ら40人が死亡したとイスラエル軍はみている。

IDF

しかし、シャザイヤでは、28日、イスラエル兵2人が戦死した。死亡したのは、空挺部隊のヤイール・アヴィタン軍曹(20)と、ヤキール・シュムエル・タテルバウム第一軍曹(21)

タネンバウム軍曹は2週間前に、11年生の時の教師、エイロン・ウエイスさんが戦死した時、追悼のことばをFBにアップしていたところだった。

しかし、シャザイヤでの大規模な戦闘に備え、イスラエル軍は、戻っていた避難民6―8万人に移動を通告したことから、世界のメデは、またもや避難していく人々の様子を報じることとなった。

www.bbc.com/news/articles/c1wepdxzdy3o

またガザ保健省(ハマス)は、30日、十分な燃料が搬入されない限り、ガザの病院の多くが停電し、重症病棟の患者が死亡すると警告。イスラエルへの非難が高まりそうである。

ラファほぼ制圧か:ネタニヤフ首相は戦闘継続を表明

一方、ラファでは検問所を制覇し、エジプトとの間にあるフラデルフィ回廊をほぼ制覇し、その中にある地下トンネルや、ロケット弾発射施設を破壊する作業を行いながら、ハマスなど戦闘員との銃撃戦が続けられている。

IDF

破壊したトンネルはフィラデルフィ回廊だけで25本だという。30日にIDFが公開した情報によると、トンネルはUNRWA学校にほぼつながる形で、500メートルに及んでいた。

30日、ギャラント防衛相がラファを訪問。少なくともラファのハマスは、崩壊に近づいているとの判断を表明。このまま、完全にラファのハマスを完全に駆逐するまで戦闘は続けると述べた。

ネタニヤフ首相も、30日の閣僚会議において、政治圧力と軍事圧力、特に軍事圧力が、人質を取り戻す手段である。ハマスを排除するまで、戦いは続けると改めて、戦闘継続を主張した。

その後、本日、約7ヶ月ぶりに、カン・ユニス方面から15-20発のロケット弾が、イスラエル南部国境に向けて発射された。被害は出ていないが、これほどの破壊の中でも、まだハマスは終わりではない、戦えると言っているようである。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/in-largest-gaza-barrage-in-months-15-20-rockets-launched-at-border-communities/

石のひとりごと:今更ながら・・戦争の虚しさ

なんとも虚しいことである。イスラエルが戦争をやめら得ないことは理解できるのではあるが、多くの若い有能な人々を次々に失っている。家族だけでなく、社会全体にとっての喪失ははてしなく大きい。

先週ラファで戦死した、エイヤル・シャイネス軍曹(19)は、先週27日、携帯で、家に一時帰宅する時のことを、母親のメイラブさんと話している最中に、何か重大なことが起こった様子になったという。電話はその後すぐに切れた。

まさか死んだとは思っていなかったが、後で、エイヤルさんが、ハマスの銃撃を受けて死亡したという知らせを受け取った。エイヤルさんが、電話で話している時に後頭部に銃弾を受けて倒れるビデオも見たとのこと。

AFP

ガザの方でも、ガザの人々のことを考えると、家はなく、治安情勢は最悪で、イスラエル軍というよりは、ギャングからも身を守らなければならない。

食料や水、何よりもトイレがなく、シャワーもなく、遺体が溢れて、伝染病蔓延。また逃げなければならない。どれほどの苦悩かと思う。

なお、これはイスラエルが望んでいることではない。ギャラント防衛相は改めて、ガザの市民は標的ではないと強調している。要は、ハマスが早く白旗を上げて、人質と共に出てきさえすればよいのである。

しかし、それは文字通りハマスにとっては、大敗北の屈辱である。今となってはもう遅いのだろう。どんな結末になるのか。まだ全く想像もつかない。このまま、殺戮はまだ続いていくのだろう。

戦争は悪いとはわかっているのに、状況がそれを起こさせ、一旦始まれば、もはや止められなくなる。改めて、虚しいと実感させられる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。