人質男性3人の解放に見るハマスの悪意:パレスチナ人も非難 2025.2.16

Hostages L to R: Sagui Dekel-Chen, Yair Horn and Sasha Troufanov stand on stage next to Hamas and Islamic Jihad gunmen during their handover over to a Red Cross team in Khan Younis in the southern Gaza Strip on February 15, 2025. (Eyad Baba / AFP)

イスラエル人人質3人の解放に見るハマスの悪意

2月15日朝、イスラム聖戦とハマスは、予告していた人質男性3人をカンユニスから解放した。例の如くステージの前に連れ出して、何かを言わせている。3人は、先週解放された3人ほど衰弱はしていないようにみえた。

ステージには、エルサレムの神殿の丘の写真と「移住はエルサレム以外にはない」「おお、エルサレムよ。あなたの兵士たちが来る」などと書いている。

今回は人質に、解放証明書の他に、パレスチナの領有権を主張する地図を刺繍したようなものを持たされていた。

また、人質の一人は、まだガザにいる人質マタン・ザングルケルさんとその母親のエイナフさんの写真の横に「もう時間がない」と書かれた砂時計を持たされていた。エイナフさんは、人質解放運動の先鋒に立つ一人である。

なお、マタンさんは、まだ解放のリストにも上がっていない人質である。

www.israelnationalnews.com/news/403952

さらに、異様な土産物が渡されていた。人質のサギ・デケルさんの拘束者は、妻、アビタルさんが、サギさんが拉致された後に女の子を出産していたとサギさんに伝えるとともに、アビタルさんへのイヤリングを渡していた。

www.timesofisrael.com/released-hostages-dekel-chen-troufanov-and-horn-in-israel-after-498-days-in-captivity/

Feb. 15, 2025. (AP Photo/Abdel Kareem Hana)

また、今回注目されたのは、ハマスが顔をしっかり隠した状態で、10月7日に強奪したとみられるイスラエル軍の軍服(写真左)を着て、イスラエル軍の武器を持って立っていたことである。

明らかにイスラエルに、まっこうから挑戦する様相であった。

トランプ大統領は、この日は、3人ではなく、全員を解放させるべきでそうでないなら、イスラエルが戦闘を再会させるだろうと言っていた。そうはならなかったわけだが、その後、トランプ大統領は、「イスラエルは今後どうするのか考えなければならない」と述べた。

これに対し、ハマス報道官ハセム・カセムは、「もしアメリカが本当にイスラエルのことを思うなら、イスラエルに合意を遵守させ、第二段階にむけた交渉を開始させるべきだと述べた。

www.israelnationalnews.com/news/403967

パレスチナ人もハマスの排斥を望んでいる!?

この状況について、ファタハ(ハマスとは別のパレスチナ組織)活動家のサミール氏が、イスラエルのメディアI24に出演し、パレスチナ人として、ハマスを非難していた。

サミール氏は、「こんな(人質解放)ショーは本当にガザ市民が望んでいる事だろうか。ガザの人々はとにかく、インフラの整備など、生活の回復を望んでいる。パレスチナ人皆がこんなことを望んでいるのではない。

この取引はハマスのことだけだ。ハマスは結局ハマスのことだけを考えているのだ。だいたい、ハマスにはかつてリーダーがいたが、今はいない。今立っている、これらはだれなのか。パレスチナ人を代表するかのようなこの組織は一体何者だ。」と人質解放の映像を見ながら語っている。

サミール氏は、パレスチナ人として、ハマスをパレスチナ人の間から排除すべきだと語っている。ガザの今崩壊の責任はすべてハマスにあると断言している。

イスラエルを含め、皆が協力して、ガザにハマスが入り込まない体制を確立しなければならない。もしくは、ハマスに代わって、本当にパレスチナ人の生活を最優先する政府を立ち上げなければならない。

しかし、サミール氏は、今のパレスチナ自治政府のアッバス議長についても、西岸地区のパレスチナ人の90%が排除すべきだと考えていると述べた。パレスチナ人たちは、ハマスにもアッバス議長にも幻滅しており、第3の選択肢を望んでいると言っている。

その第3の組織が、イスラエルとアメリカ、また穏健派アラブ諸国、国際社会とも協力して、平和と繁栄と共存を実現するべきだと語る。興味深いことに、イランさえも敵視する意見を述べている。

今、ハマスが、非常に悪い行動をとっていることは、パレスチナ人を含め、誰の目にも明らかになった。ガザのおこったことの責任は、すべてハマスにある。ガザにいる200万人の生活も夢もコミュニティもすべて奪われた。パレスチナ人は以前、ハマスに投票したが、そのツケを今払っているのだ。

今、パレスチナ人はだれにその権力を委ねるのかを決める時だ。ハマスとアッバス議長を追放できるのは、選挙でしかない。今こそ、イスラエルとパレスチナ人が平和と繁栄のうちに共存することを目指すときだと述べた。

石のひとりごと

ハマスの行動には、非常に悪質なスピリットが感じられる。これにパレスチナ人全てが同意しているわけではない(もしかしてサミールさん一人であったとしても)と言っていることは、興味深いと思った。

トランプ大統領は200万人近いガザの人々を、どこかへ再定住させるといっているが、はたしてこれだけ多くのハマスはどうするのか、再定住に同意するのか。彼らを受け入れる国はあるのかと考えさせられていた。

最終的には、やはりハマスを排斥することなしには、イスラエルにとって、またパレスチナ人にとっても解決はないということなのだろう。

ではどうやってというところが課題なのであるが。。。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。